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週刊READING LIFE vol.56

2020年、これからの「我が家のカレー」とは?《週刊READING LIFE Vol.56 「2020年に来る! 注目コンテンツ」》


記事:大杉祐輔(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

2020年に来る注目コンテンツは、カレーである。それもただのカレーではなく、市販のルーではないスパイスを使ったカレー、通称「スパイスカレー」だ。スパイスカレーが本格的かつ美味しく、しかも家庭で簡単にできることが、近年のブームで明らかになってきた。我が家のカレーに革命をもたらすスパイスカレーの魅力について、とくと語ってみようじゃないか。
 
私がスパイスカレーに出会ったのは、今年の春だった。近所に住んでいた友人のダウニーさん(日本人)が、イベントでカレーを出品するというのでご馳走になったのだ。そのカレーをひとくち食べて、衝撃を受けた。口の中に広がる豊潤なスパイスの香り、むせぶような辛み、吹き出る汗。細かくほろほろした牛ひき肉に、深みのある辛さがマッチング。複雑でクセが強いが、スプーンを口に運ぶ手が止まらない。ダウニーさんは大工仕事を学んでいるダンサーで、決して料理のプロではない。それなのに、ここまで本格的な味わいが出せるのか……! この瞬間、私はスパイスカレーの魅力に完全にノックアウトされた。気が付けば市街地へ走り、スパイスを買い物かごに入れていた。
 
そもそもカレーは、人間の嗜好性に強く語りかける食べ物だといえる。今日のお昼ごはんは何にしようか? あ、カレーがいいな、と思った時点で最後。ランチのお店を探すなか、カレー屋さんが見つかるまであなたは引き返せないだろう。一度カレーのイメージが頭をよぎると、なかなか他の料理に鞍替えはできない。それくらい、カレーは本能に語りかけるものだ。
 
そしてスパイスカレーは、スパイスを駆使することで強烈な香りと爽やかな後味を作り出す。素材の味を引き立て、奥深い味わいを生む。だから、一度食べたらやみつきになる。インド人は毎日三食カレーを食べるのが当たり前だそうだが、この理屈にも納得がいく。それくらいの中毒性がある料理だと思うし。私はこの1か月ほど毎日夕飯はカレーを作っている。それでも全く飽きないから恐ろしい。誰か止めてくれ。
 
ルーを使わずスパイスで作るなんて想像できない、そんなの難しいに決まってる! そう思っていた時期が、私にもありました。スパイスカレーは家庭でも簡単にできる。そうでなければ、インド人のお母さんたちが毎日作ることなんてできないじゃないか。スパイスカレーが意外と簡単にできることは、私の周囲の地域のお母さん方が証明している。ちょっとコツを伝授しただけで、皆さん簡単にカレー作りの一歩を踏み出している。基本構造はシンプル、しかも基本のスパイスは3~4種類でいい。しかも材料はだいたいダイソーの食材コーナーで揃う。以下にその内容を説明したい。
 
まず、スパイスカレーの構造について。基本的には、「カレーのもと」を作り、それを「水分」でのばしてお好みの具材を加え、数分煮詰めればよい。
 
「カレーのもと」とは、玉ねぎを油できつね色になるまで炒め、そこに塩とスパイスを加えて加熱したもの。これにトマトを入れて煮詰めるのが一般的だが、なくても全く構わない。「水分」は、その名の通りで、コンソメスープや赤ワイン、ココナッツミルク、だし汁などなんでもよい。カレーはご存じの通りどんな食材も受け入れてくれる懐の深い料理なので、具材もお好みでなんでもよい。これらを混ぜて、水分が飛んでトロっとするまで煮詰めれば完成だ。
 
え、これだけ? と思うかもしれない。安心してほしい、これだけだ。
こんなに簡単に、本格的な味わいのあなただけのカレーが完成するのだ。やってみないと損だ。
 
基本のスパイスについても触れておこう。結論から言うと、クミン、コリアンダー、ターメリックだけ揃えておけばいい。あとは辛さを調節するためのカイエンペッパー(唐辛子)。これだけあれば、文句なしに本格的なカレーができることを約束する。
 
スパイスの基本的な役割は、香りづけ、色付け、辛み付けだ。クミンはカレーっぽい香りの中寸となるスパイスで、コリアンダーは全体の調子を整える。ターメリックはカレーの骨格の風味と色付けの中心となり、カイエンペッパーは辛みを加える。辛いのが好みでなければ、カイエンペッパーはなくても構わない。これらを玉ねぎを炒めたあとに加えて熱することで、豊潤なスパイスの風味が生まれる。そしてこれらの材料は、だいたいダイソーに行けばある。夢のような時代である。カレーの門戸は、誰にでも明るく開かれているのだ。
 
基本の作り方はこんな感じなのだが、カレーの面白いところは無限のバラエティが楽しめることだ。水分をココナッツミルクにすればそれだけでアジアンテイストなカレーにできるし、ガラムマサラを使えば北インドっぽい深みのある爽やかな味わい、ナンプラーを入れればタイカレー感が出てくる。スパイスを入れる順番を変えるだけで味の構造が変わってくるし、材料とスパイスの組み合わせで味わいがぐーんと引き立つこともしばしば。あなただけのカレーのイメージを描き、それを鍋の上に表現していく。これが楽しくないわけがないのだ。
 
また、スパイスカレーを作り始めて感じたのは、明らかに野菜を食べる量が増えて健康的になったことだ。男の一人暮らしだと、普段の食事は野菜が少なくインスタント麺ばかり食べてしまうこともしばしば。しかし、スパイスカレーはただでさえ多くの玉ねぎを使ううえ、野菜の甘味をスパイスが引き立てるために野菜を多く入れたくなる。結果的に、カレーばかり作っていると野菜の摂取量が増える。肉がなくても十分な満足感が得られる。しかもスパイスは脳の働きも活発化させるようで、仕事に対する集中力も上がっている気がする。なんというか、身体の活力が違うのだ。インド人の驚異的な数学的思考力やバイタリティも、カレーが一役買っているような気がする。
 
カレーはインドの中だけでも地域的によって様々な特徴があるが、東京や大阪では南インドやスリランカのカレーがひそかなブームだそうだ。上記地域のカレーは「ミールス」というライス+カレーに様々なおかず類(ヨーグルトと野菜の和え物、ピクルス、こしょうのスープなど)がセットになったメニューが人気のようで、だいたいワンプレートに様々な料理がふんだんに盛られている。これらを混ぜながら食べることで、新たな味のバリエーションを楽しめるそうだ。こればかりは家では作れずお店に行くしかないのだが、機会があればぜひ味わってみたい……!
 
北海道のスープカレーや、濃厚な金沢カレーなど、カレーは時代を超えて様々な形で愛されてきた。最近は私の周りにもスパイスカレーを趣味とする人が増えてきて、カレー談議ができるようになってきた。一人一人のこだわりやスタイルの違いがわかって面白いし、増えてきたらカレーパーティーを開くのも楽しいだろう。2020年には、スパイスを使った本格的な味があなたの食卓に。家カレーの新たなムーブメントを、ぜひ五感で味わってみてほしい。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
大杉祐輔(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

1994年生まれ、岩手県出身。2016年に東京農業大学 国際農業開発学科を卒業後、栃木県の農業研修施設で有機農業・平飼い養鶏を学ぶ。2018年4月から、学生時代に10回以上訪問してほれ込んだ、鹿児島県 南大隅町に移住。「地域に学びとワクワクの種をまく」をモットーに、自然養鶏・塾講師・ライターを複業中。

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2019-11-04 | Posted in 週刊READING LIFE vol.56

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