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週刊READING LIFE vol,114

懐メロしか聞かない昭和生まれの私が好きになった23歳のアーティスト《週刊READING LIFE vol.114「この記事を読むと、あなたは〇〇を好きになる!」》


2021/02/08/公開
記事:武田かおる(READING LIFE 編集部 公認ライター)
 
 
「チェッカーズの藤井フミヤさんの息子さん?」
 
これが、昨年夏に藤井風(かぜ)さんを知ったときの私の一言だった。たまたま見たその動画の画像のサムネイルの写真のアングルに、藤井フミヤさんの面影があったこともあり、名字が同じだったので私はそう思い込んでしまったのだ。それに、最近、芸能人の二世の方で音楽活動をされている方もよく聞く。そういった芸術的才能は遺伝するようにも思えるし、私の予想が当たっていても不思議ではないと思った。
 
若い方でチェッカーズを知らない方もいるかもしれない。藤井フミヤさんはチェッカーズというバンドのボーカルで、チェッカーズは私の中学時代に若い世代皆が聞いていた国民的バンドだった。私は女だが、チェッカーズの髪型から服装まで真似をしたこともある。それぐらい影響力のあったバンドだ。
 
気になった私は、その動画のサムネイルをクリックした。そして、すぐその方が藤井フミヤさんの子供さんではないことに気がついたのと同時に、すごいアーティストを見つけてしまったという思いがこみ上げてきて嬉しくなった。

 

 

 

私は、10年ほど前から海外に住んでいる。移住して以来、子育てに追われていたこともあり、J―POPとか邦楽を聞く機会がしばらくなかった。車での移動が多いので、聞くのはラジオで流れている洋楽の最新ヒットチャートか、洋楽でも80年代から90年代の懐かしの音楽を流している局だった。日本の曲といえば、子供が小さかったときは、日本の童謡やアンパンマンの歌をCDで流していたくらいだった。
 
そんな私も、下の子供も10歳になり、子育てに一段落してきて、日本の歌を聞きたいなと思うようになった。だが、最近の日本の歌を知らないので、聞くとしたらどうしても自分の青春時代の80年から90年代の懐メロになってしまう。ユーミンだったり、松田聖子だったり、レベッカだったり、ドリカムだったり……。それぞれのメロディと歌詞が、その時代と思い出を蘇らせれてくれる。懐メロを聴いていると、何かをしながらでも昔の写真を見ているのと同じような感じで、閉まってあった忘れていた記憶にアクセスすることができる。
それは、ある意味私にとっていい現実逃避にもなった。
 
また、自分が幼かった頃に、親が演歌や懐メロを聞いていて、どこがいいのかなあと思っていた自分だが、自分が若い時に聞いていた歌がすっかり今では懐メロになっているのが不思議であり、その時の親の気持ちがわかるような気がしてきた。
 
今の新しい曲を聞いてみようとしても、自分には響いてこなかった。「あ、この人の歌もっと聞いてみたいな」と思うアーティストには出会わなかった。音楽の感性なんてないただの主婦だし、自分はもう年だから、若い人の歌に響かないのかなと考えたりした。
 
そんなときに知ったのが藤井風さんだった。

 

 

 

藤井風さんはのどかな田園風景が広がる岡山県浅口郡出身で、現在23歳。小さい頃からピアノを弾いていて、中学になる頃からお父様とお兄さんが、藤井さんの演奏の様子を動画に取ってYOUTUBEにアップしていたそうだ。
 
演奏する曲は、クラッシックから洋楽、懐かしの邦楽をカバーしているのだが、その範囲の広さには驚かされる。藤井風さんのYOUTUBEチャンネルを見ると、中学時代からの藤井さんの演奏の様子を見ることができる。「木綿のハンカチーフ」の弾き語りの動画もあった。椎名林檎もカバーしているから若い世代の方も知っている曲だが、オリジナルは1975年の太田裕美さんの曲だ。あと、ピンクレディの「UFO」の演奏もある。同じ曲でもピアノで力強く弾くとこんな曲になるのかと圧巻させられた。後、洋楽ではビリー・ジョエルやマイケル・ジャクソンなど、洋楽懐メロもカバーしている。最近の洋楽ではジャスティン・ビーバーやテイラー・スイフトのカバーもしている。
 
藤井さんは英語も得意で、4月にコロナがパンデミックとなり、世界の多くの国がステイホームをしていたときに、インスタグラムで英語でメッセージを送っていた。洋楽の弾き語りも難なくこなしてしまう風さんだが、ただカバーするだけじゃなくジャズ風にアレンジして弾き語りすることもできるのだから、非常に守備範囲が広い。私は思わずデフェンスの選手なのに数多く得点を残した守備範囲の広い、サッカーの日本代表にもなった中澤佑二選手を思い出してしまった。
 
そのルックスも、なんとなく中澤選手を彷彿させる。181センチメートルの長身に真っ黒の髪に荒いウエーブのかかったのヘアスタイルが共通点だからだ。藤井さんの少し長めの前髪から見える顔は堀が深く、英語を流暢に操るところや写真の写りから、もしかしてハーフなのかと思わせられた。
 
だが、先にも書いたように、藤井さんは岡山出身でハーフではないようだ。普段のインタビューでもバリバリの岡山弁で話している。自分のことを「わし」と言い、オリジナルの楽曲でも岡山弁の歌詞があったりと、全くカッコつけている感じがなく自然体なのだ。
 
デビューのきっかけは、YOUTUBEチャンネルに上がっている「アダルトちびまる子さん」というちびまる子ちゃんのテーマ曲をジャズ風にアレンジした曲の視聴数が、一気に伸び始め、それからデビューの話しが決まったということだ。
 
藤井さんのオリジナル楽曲も、守備範囲が広く楽しめる。言葉遊びも面白いし、それでいて深い。自分は動いていないけど、様々な世界に連れて行ってくれるような気がする。歌がエンターテイメントだったんだなと改めて感じさせられる。聞いていて楽しめるのだ。どの曲もいいが、特に私が好きなのは、アルバム『HELP NEVER HURT NEVER』の中の『さよならべいべ』だ。このメロディはもう昭和そのものだ。それでもデジタルっぽい音がするので懐かしいのに新しい感じがする。
 
同じアルバムに入っている『死ぬのがいいわ』と言う曲も、タイトルから目を引く。あえて強いワードを使っているが、歌の中では英語と日本語と混じり合った言葉遊びが入って、そんなに重々しい気持ちにならないし、若い時失恋したときに確かにこんな気持になったなあと共感してしまう。
 
また、同アルバムに収録されている『帰ろう』は死がテーマの曲だ。近年、私自身も父を亡くしたり、自分自身が老いを感じたりして死についていろいろ考え始めた。すべてを手放して死の世界へ還るという考え方は、病気や老いで死を目の前にした人にとっては心が楽になる曲では無いだろうか。
 
インタビューでの様子やインスタグラムの藤井さんの様子を見ていると、見かけは若いが、きっと魂の年齢は私よりも上なんじゃないかと思うような人間性の深みが見え隠れする。
 
そんな藤井さんだが、昨年秋には、感染予防対策をした上で武道館でのライブを果たした。また、2020年、MNET アジアンミュージックアワードでBest New Asian Artist Japanを受賞した。この賞の男性グループで受賞したのはあの『ダイナマイト』を歌うBTSなので、アジアでの音楽業界では名声のある賞だということがわかる。
 
最近では、テレビ朝日系ドラマ『にじいろカルテ』の主題歌の楽曲を提供したりと、活動の幅がますます広がっている。
 
私の中では藤井さんはディズニー映画アニメだ。ディズニーアニメは、子供向けに作られているように見えて、大人も喜べる要素を組み入れている。例えば『ズートピア』は子供向けだが、『ゴッドファーザー』のパロデイを入れたりして大人も楽しめる映画になっている。また、ディズニー映画にはテーマがあり、観た後いろいろ考えさせられる。藤井さんも新しい曲でありながら、懐かしいメロディを聞くことができたり、惚れた腫れただけの歌詞じゃなく、若い人だけでなく年配の人も共感できるテーマの歌詞だったりと、幅広い年齢層に支持される音楽を提供してくれるからだ。
 
私は数年のうちには、藤井さんが紅白歌合戦に出るのではないかと予想している。
 
最近、懐メロしか聞いてない方も、是非藤井さんの曲を聞いてほしい。絶対懐かしさと新しさと新しい世界観を体験できて、藤井さんを好きになるはずだ。
 
23歳という若さで、すでに世界で活躍できる英語と、守備範囲の広さを持ち合わせた藤井さんのこれからのますますの活躍を、まるで遠い親戚のおばさんのような気持ちで見守る私である。
 
 
 
 
参考動画
Youtube Artist on the Rise 藤井風(Fujii Kaze)

(2021年1月25日閲覧)

□ライターズプロフィール
武田かおる Web READING LIFE 編集部 公認ライター

アメリカ在住。
日本を離れてから、母国語である日本語の表現の美しさや面白さを再認識する。その母国語をキープするために2019年8月から天狼院書店のライティング・ゼミに参加。同年12月より引き続きライターズ倶楽部にて書くことを学んでいる。
『ただ生きるという愛情表現』、『夢を語り続ける時、その先にあるもの』、2作品で天狼院メディアグランプリ1位を獲得。

WEB READING LIFEにて、「国際結婚ギャップ解消サバイバル」連載中。
http://tenro-in.com/international-marriage-gap/153851

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2021-02-08 | Posted in 週刊READING LIFE vol,114

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