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週刊READING LIFE vol.134

苦しみや悲しみを味わうのは覚醒への通過点《週刊READING LIFE vol.134「2021年上半期ベスト本」》


2021/07/12/公開
記事:後藤 修(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「本を読むのは苦手だなあ」
 
これは僕が本を読むことに対して抱く思いだ。学生の頃、僕に活字嫌いが発症した。
それ以来、活字に触れることが僕にとって、苦行そのものであったのだ。
その期間は今まで続いている。
 
以前よりは僕は何か、例えば新聞とかを読むことはまあ日常的になってきた。最近ならば、東京に本社がある本屋さん、天狼院書店が2000字の文章が読まれるような力をつけることをテーマに開講されている‘ライティング ゼミ’に出会った。これは、2000字の文章を毎週期限までに提出しなければならないため、否が応でも活字に触れることになる。この効果で、少しずつ‘活字こわい’からは脱出してきている。でも、まだまだ‘活字好き’に転じてはいない。
 
そんな僕が今年、2月ある本にであった。
それは高樹のぶ子さんが執筆した「伊勢物語 在原業平 恋と誠」
この本を目にした時、なぜかこの本に見入ってしまった。
(なんかこれにひかれるなあ……)なんとなく本に呼ばれているように
僕は通販で迷いなく購入した。それぐらい気になる本だった。

 

 

 

僕はこれを読む前、在原業平と言えば……プレーボーイだったというぐらいの印象しかなかった。
この情報も古典を熱心に勉強していた母親から聞いていた程度。
この本を読む前に、母親に本を買ったことを伝えると、母から新たな情報を聞くことが出来た。
 
「在原業平は六歌仙だよ」
 
六歌仙? 僕は頭の中に疑問符が打たれた。すぐにこれを調べてみた。
これは「平安時代初期の和歌の代表的な歌人」だということが分かった。
その中には、百人一首で有名な僧正遍照が含まれていた。
こんなことを知ることが出来るとは。なんだか賢くなった気分だ。
基礎的なことを調べるぐらい、古典の知識に乏しい僕だったが、
この本を読み終わった後、在原業平の像を知ることが出来た。
この人は間違いなく、プレイ―ボーイだったが、それだけではないということだ。

 

 

 

在原業平とはどのような出自だったのかをまず説明したい。
この人は、第51代天皇の平城天皇の子供である阿保親王と奈良から京都の平安京へ都を移した桓武天皇の娘と結婚して出来た子供だった。本来ならば、天皇になる血筋であるはずなのに祖父である平成天皇が愛人と奈良へ都を再び移すことを企てるが発覚。それが、もとで失脚し、業平の家系は天皇継承の血筋から外れてしまうことに。そして、父である阿保親王の時に天皇の臣下になり、業平の代で在原姓を名乗ったという経緯を持つ人だった。だから、業平は本来持てたはずの天皇という身分を持てずに生きた、自分ではどうにもできないやるせなさを幼いころから持ってこの世を生きた人だったということだ。
 
そのような宿命をもちながら、持ち前の聡明さを平安女性と関わり合いながら、
(これがプレーボーイであるけど)、和歌を作る力を上げたこと、時にはその和歌で
務めていた宮廷における様々な人間関係をとりなしていた人間力を持つ高い人物に変化していくことになるのである。
 
高樹のぶ子さんは業平が和歌の名人になるきっかけとなったと見る女性がいた。
それは藤原高子と呼ばれる女性。この方は当時、政治的に実権を握っていた藤原氏の血筋を持つ方で、天皇の后になる人だった。
業平と藤原高子が出会ったのは、清水寺。
その時、業平は高子を優雅で艶やかな人、気の強い人と感じ好意を持った。
それから、業平が和歌で自分を伝えながらアプローチをして、二人は愛し合うことになる。けど、元々、2人は身分が違うため、一緒になれない事実を理解し合っていた。
そして、二人は都を脱出して、駆け落ちを図ったが、高子の兄たちに捕らえられてしまう。
結果、2人は別れることになってしまう。
この時、2人は現実に相当苦しみ、悲しみを感じて心を引き裂かれる思いだっただろう。
 
これを機に、業平は権力に抗うことはできないことを悟り、和歌という文芸に生涯投じていくことを決め、和歌の名人への道を本格的に歩み始めることになる。
また、藤原高子は天皇の后となり、皇子を産み日本の天皇家の権力者へと歩み始めることになっていくと高樹さんは記している。
 
このくだりを通じて、僕は自分が経験したことと引き比べて考えてみた。

 

 

 

僕は業平のような燃える恋をしたことはないし、駆け落ちをしたことがない。
だから、業平の行動を全て共感できるわけではない。
けれど、共感できるところがあった。
それは、藤原高子との恋が身分の違いという、自分ではどうにもならないことが理由で恋が成就できず、心が沈むぐらい悲しく、辛かったところだ。そして、それをバネに和歌の名人へ覚醒していくところだ。

 

 

 

僕は、18年前の冬に、体が固まる症状に襲われた。
そこから数年間は、治療に明け暮れる日々を送った。
会社へ出社して、働くと体が次第に重く感じ始める。それで、仕事にもなかなか
集中できないこともあった。
そして、仕事をしていても、ミスが続いたりした時期もあった。
その結果、希望しない部署へ異動となる。
僕はその時に、数日間涙を流し続けた……。
 
そして、異動した部署に所属してから、1年後にまた異動。
その後、その部署で仕事でのコミュニケーションが不全となったことをきっかけに悪循環が始まる。
仕事ではミスが発生し、挙句の果てに担当している仕事もなくなり、単純作業のみを行なう
毎日を数年間、送り続けた。
僕の自業自得の面はあるものの、どうにもならない境遇、努力しても何もかなわない時間を
長く送り続けた。僕はその時感じた辛さや悲しみを今も忘れることはないのだ。
 
その時、感じた感情をいつか、いつかエネルギーに変えてやる、きっと変えてやると心に誓っていた。
 
今、そこの部署から離れて8年が経つ。僕は今、自分の適性にあうと思う部署で
働くことが出来ている。そして、僕は目標を持って行動できない人や何かを課題を解決してサポートしていくコーチングを生業にするという夢を抱いて行動をしている。そして、芸能事務所に所属して2年間、芸事を行なえる力を身に付けて、朗読家、ナレーションやCMタレントとして活動できる日を迎えられるように励んでいる。
 
今、このように精力的に活動できているのは、僕が体、仕事、人間関係で苦しんで悲しんで
それを乗り越えられたからこそだと思う。それが爆発的に行動する力を促したのだ。
それが今にも至っている。
 
話を戻すが、業平と藤原高子が味わったものと比較すると、2人のように僕自身はそこまで覚醒したわけではない。しかし、少なくとも相当な苦しみや悲しみ、やるせなさは人に相当なエネルギーを与えるようなものであることを改めて感じる。

 

 

 

思い通りにいかせようと日々、誰でも頑張る。だけど、どうしようもない壁に当たり、もがき苦しむことはどなたでもあるだろう。けど、それはあなたに新しい力を宿す機会が訪れたのかもしれないのだ。苦しみ、悲しむことはあるだろう。けど、必ずそれが報われること
を失わないでほしい。報われる気持ちを心の小さい片隅に残してほしい。あなたの行動、努力が積み重ねられて行けば、それが結実し、あなたが信じられない世界を味わえる。希望を失わず行こう。あなたは覚醒できるはずだから。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
後藤 修(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

愛知県出身。会社員として23年間勤務。2年前に今までの人生を振り返って
自分らしさを持ちながら生きることを決意し、コーチングを取得。
来たるべき時期に会社を退社して、コーチングを使い本来の自分を取り戻し、‘ありたい自分’で生きていきたい人を支援する活動する計画を着々と進めている。

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2021-07-12 | Posted in 週刊READING LIFE vol.134

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