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週刊READING LIFE vol.135

愛するとは意志なのか、感情なのか《週刊READING LIFE vol.135「愛したい? 愛されたい?」》


2021/07/19/公開
記事:九條心華(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「僕に唯一、欠点があるとすれば、人を愛することができないことだ」
 
彼がベッドの上で言った。
衝撃的な言葉だった。
 
それって、私を愛していないということ?
……私が人なら、そういうことになる。
 
でも、そんな人と結婚してしまった。
なぜだろう。
もちろん、愛されたいのに。
傲慢にも、私と一緒にいれば変わってくれるかなと思ったのだろう。
 
「人はなんのために生きていると思う?」
え、そんな質問を友だちにするの? と聞いたら、
「しない。君に聞いてみたくなった」と。
壮大すぎて、いろんな考えが頭をめぐった。
何のために生きているかを考えるためとか、
自分を知るためとか、
でも、結局は、
「生かされているから」かな、と思った。
 
が、こたえなかった。
思いを巡らせているあいだに、こたえるタイミングを逸していた。
 
「僕の奥さんになる?」
「はい」勝手に口から返事していた。考える前に。
「こどもは何人ほしい?」
全然考えていなかった。
この人と、結婚すら考えていなかった。
なのに、口が勝手に「はい」と即答した。
この人と、私は結婚したいの?
わからない。
好意を抱いているから逢っているけれど、愛しているのかさえ、わからない。

 

 

 

人を好きってどんな感じ?
友達によく聞いた。
好きになる感覚がつかめなかった。
なんとなく好きとかは、もちろんある。
でも、愛しているって、どんな感じだろうか。

 

 

 

昔見ていたドラマで、「君といた夏」というのがあった。
登場人物の三角関係が、もどかしかった。
筒井道隆さん演じる入江が憧れる憬子さんは、婚約していた。
瀬戸朝香さんが演じる快活な朝美が、入江を好きになり、
入江は朝美を受けいれるが、憬子さんが婚約破棄した。
 
朝美は、入江のことが好きだからこそ、入江の憬子さんへの思いが感じられてつらい。
でも、入江は朝美にこう言った。
「俺は朝美を愛するって決めたんだよ」
 
このシーンが、とても印象深く残っている。
愛するって、意志なんだと思った。
好きなのは、憬子さんだけれど、それを抑えてでも、自分が決めた女性と一緒にいる。
それって、素直じゃない。
抑えている入江も、憬子さんが好きな入江と一緒にいる朝美も、お互いにつらい。
みんなが幸せになれる道はないのかと思った。

 

 

 

私は、人を好きになるってどんな感じかがつかめず、好意をもってくれる男性と、逢っているうちに好きになるかなと思って逢ったりしても、好きになれなかったりもした。

 

 

 

私に愛しているといってくれる人に、
「そんなに簡単に人を愛することができるものなのでしょうか」
と尋ねた。
すると、こんなふうに返ってきた。
 
愛することは呪文のようなものだ。
繰り返し唱えているうちに、新しい魅力が見えてくる。
愛することは、新しい発見につながり、新たなエネルギーを生み出す。
何事にも懐疑的な人はいるが、得てしてそういう人は幸せにはなれない。
なぜならば、エネルギーを自ら放出しないからだ。
愛することの反対語は憎むこと、嫌うことではない。
愛さなくなること、なんとも思わなくなることだ。
愛するプラスのエネルギーは、瞬時に憎む、嫌うといったマイナスのエネルギーに換わる。
逆もまた真なり。
愛さなければ、すべては始まらない。

 

 

 

愛するって、決めて、繰り返し唱えていれば、愛せるってこと?
愛しているという、湧き起こってくる感情ではなくて、自分の意志で決めることなのか。
 
自分の意志で決めるとするなら、愛するに値する存在なのかを見極めようとする。
この私が愛する価値がある存在なのかどうか。
それは、自分が大切だからだ。
この大切な自分の愛のエネルギーを注ぐに値する存在でないと、自分のエネルギーが活かされない。
その愛するに値する存在に、愛されたいと思う。

 

 

 

夏目漱石の「こころ」に出てくる先生は、主人公の「私」にこう言った。
「あなたは本当に真面目なんですか」
「私は死ぬ前にたった一人で好いから、他(ひと)を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたは腹の底から真面目ですか」
 
信用したいけれど、信用するに値する人物かどうかを確認したかったのだ。
人を愛するということも、これと似ているのかもしれないと思った。
私は、人を愛したいと思っていて、愛する人となってくれる人を探している。
 
人を好きになるとはどういうことか、愛するとはどういうことか、考えてもわからない。

 

 

 

なんのために生きていると思うのかを私に尋ねた彼とは、そういうことについて、一緒に考えてくれると思った。
なんのために生きているのか?
私が人に尋ねても、考えても意味がないと言われたり、ナンセンスだと言われたりで、真剣に考えてくれる人はなかなかいない。
この人は、一緒に考えて、人生をともに歩んでくれると思った。
その質問の1か月後だっただろうか、私たちは結婚した。

 

 

 

私の両親は、お見合い結婚だった。
父はたくさんお見合いをしていたらしい。
母は初めてのお見合いだった。
母には言えないが、父があるとき、母のいないところで、結婚は妥協だと言った。
ショックだった。
それは、母との結婚が妥協だということだと思ったからだ。
 
そんな父が末期癌になって緩和ケア病棟に入るときに、アンケートがあった。
父は寝返りをうつ力さえない状態だったので、私が読み上げて父に尋ねた。
「あなたにとって、心の支えは誰ですか?」
私は、長男である兄なのかなと思った。
予想は外れた。
「やっぱり、お母さんかな」
父はいつも母を怒鳴って怒っていたけれど、父にとって、母が、心の支えだったことを知った。
嬉しかった。
きっと恥ずかしく感じているであろう父の前で、私はなんでもない素振りを意識したが、実はとてつもない感動をおぼえていた。
 
結婚とは、愛する意志の最大の行動だろう。
 
愛されても、愛することができない相手もいるし、愛していても、愛されない相手もいる。
愛すると決めた人から、愛されることが理想だ。
 
愛し愛される、素敵な人と出逢えるように、いつも自分を輝かせていたい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
九條心華(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

同志社大学卒。陰陽五行や易経、老荘思想への探求を深めながら、この世の真理を知りたいという思いで、日々好奇心を満たすために過ごす。READING LIFE 編集部ライターズ俱楽部で、心の花を咲かせるために日々のおもいを文章に綴っている。

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2021-07-15 | Posted in 週刊READING LIFE vol.135

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