週刊READING LIFE vol.150

一度、自信を置きなさい。さすれば、もっと大きい自信を得られる《週刊READING LIFE Vol.150 知られざる雑学》

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2021/12/06/公開
記事:後藤 修(READINGLIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
(え! そんなこと言う……)
 
日常生活を送っていれば、こんな風に誰かから意外なことを投げかけられて
傷つくことは誰しもあるだろう。
自信満々の行動に対してハチのように刺されると
なかなか立ち直れない時がある。
その時、心の中は決まってこんな言葉が渦巻いている。
 
 
なんで……。
そんなこというか?
ちょっと……。
言い直してよ……!
 
僕もこんな風に思うことは日常多々ある。
もう、アラフィフになる人なのに。感受性が強いのか、大人になり切れていないのか……。
 
 
けれど、心にとげが刺さってくれてよかったと思えることが僕にはある。
それが日常を軽やかに明るいものにしてくれた。
僕にとって、そのとげが日常を楽しませるヒントをくれたのだ。

 

 

 

今から1年半前、僕はコーチングの資格を取った。
コーチングは話し手である人とその人が目指したいものや解決したい
テーマについて対話し続けて、実現できるロードを二人で考え出していく作業だ。
将来的に独立をもくろんでいる僕は、資格を取った後も研鑽を積むために
コーチングを取得した仲間に練習を頼んだ。
 
しかし、ある仲間のコーチングをした時に僕はグサッときた。
それは話し手になってくれた仲間に対話の感想を聞いた時だ。
彼女はこう言った。
 
「あなたが話し終わる時は、声のトーンがさがるから、ワクワクして話したい! 気持ちが なくなっちゃう」
 
え? 初めてだよ。
そんなこと言われたの……。
それ、ひどくない!?
 
心の中で僕を苦しめる言葉が駆けめぐり続けた。
 
僕がこんな葛藤を起こしたのは理由がある。
 
僕は自分の声に自信があった。
 
僕は小学生、中学生の頃は合唱部だった。
部に所属した経緯は自ら参加したのではなくスカウトされた。
(臨時的に雇われた身ではあったが)
つまり、僕の声をかってくれて部に所属した。
それから声にはある程度の自負を持ち始めた。
特に、それを証明するように、カラオケの時は僕の晴れ舞台だと思った時があった。
歌っている時はプロ歌手みたいな気分で歌い切っていた。
 
歌い終わると、会社の飲み会や仲間内からは結構な称賛をされたのである。
 
さらに、僕に自信を植え付けさせることもあった。
それは2年前に芸能学校のオーディションを受けた時だ。
審査員が見る中で、歌声を披露したら
 
「あなたの声、素敵ですね」
と言われオーディションを通過したのだ。
 
だから、僕は声について鼻高々だったのだ。
 
でも、このコーチングの仲間に言われてからは意気消沈した。
 
(ああ、ただでさえ取り柄が少ないのに……声のトーンが低いって……)
 
しばらく気分が沈みながら過ごしていた。
そう過ごしていたが、ある時思った。
 
僕は普段仕事でお客さんに電話で話すけど、電話を切る前の挨拶をした時に
なんとなく相手がきもちよくなさそうにしている気がする。
それは声が原因なのかもな……。
それならば、彼女の言う通りかもしれない。
謙虚に考えた方がいいな……。
 
と自分自身を素直に受け止めたのだ。
 
そして、‘声のトーンが低い’と評されたことを
‘どのようにしたら、声トーンを上げ続けて話ができるか’という課題に置き換えたのだ。
こんな風に思い始めた僕は思いもよらない情報を得ることになった。

 

 

 

それは会社から帰る途中の通勤電車の中での事だった。
僕はFacebookを起動させて、情報を見ていると次の文が目に入ってきた。
 
‘NHKのオンライン講座 話し方講座 募集中’
 
僕は目が留まった。僕は目を大きく見開くように見た。
その文が猛烈に僕を引っ張るように、僕は画面に釘付けになった。
 
(これを受けたら課題は解消されるかもしれない)
 
そう思い、僕は申し込みボタンを押したのだ。

 

 

 

その1か月後に、受講日の初日が来た。
講師は女性だった。
彼女は明るい声で自己紹介をした。
その後に僕らに声を掛けた。
 
「では、みなさん、これを読んでください」
出てきたのは次の文章だった。
 
‘どこまでも広がる青い空’
 
何だ……。
簡単じゃない……。
これを読むなんてそんな難しいことじゃないな……。
 
僕は内心、ほっとしながら読む番を待った。
そして、僕の番が来た。
 
「どこまでも 広がる 青い空」
 
少し間を置きながら声に出した。
 
すると、彼女はこんな言葉を僕に投げた。
 
「あ、あなたの言い方は語尾が下がっているから暗い感じがしちゃいますよ」
 
あ……。
このことだったのか……。
 
僕はハッとした。
この時、コーチングの仲間から‘声のトーンが低い’と言われたことを急に思い出した。
 
僕が過去を回想している間に、彼女はこう続けた。
 
「声が低いトーンになるのは、イメージが足りないんですよ。
実際、‘青い空’をイメージして言ってみてください」
僕の頭に電球が灯った気がした。
 
そうか……。
イメージか……。
知らなかった……。
 
僕は思い切りイメージして、目の前に青い空が広がっている澄んだ情景を想像して
読んだ。
彼女は言った。
「いいですよ!! その感じ、忘れないでくださいね」
 
僕の心は読んだ文章のように澄んだ。
 
そうか……。
こんなふうに言えば明るく伝わるのか……。
初めて知った……。
とっても、とっても僕に自信を取り戻させてくれた出来事だった。。

 

 

 

それから、講座で受講した学びを日常生活で大いに活用した。
仕事上、電話をする時はこれを意識した。
特にお客さんと電話で話をする時はより実践した。
最後にはこの言葉を必ずつけて大きな声を出した。
もちろん、目の前には空が広がるようなことを思い浮かべながら。
 
「本日はお時間いただきましてありがとうございました!失礼します」
 
テンションを高めながら、語尾を上げていく僕の新しい声の出し方が確立された瞬間だった。
 
これを行い始めて、お客さんは
 
「ありがとう!!」とか「はーい‼」のような、本当にここ
初めて話す間柄なのに陽気すぎない?と思うような声を出して電話を切ってくれるように
なったのだ。
 
僕は電話を終えるととても清々しくなんか
(気持ちよく電話を終えてよかった……)
満足感に満たされて
心が晴れ晴れするようになったのだ。
 
ほんのちょっとの心掛けがここまで変化をもたらすのか……。
改めて、声の出し方が人の心に大きい影響が出るものだと認識をすることができた。
 
これに気づいた僕はさらに試みた。
 
それは、声を使う講座を雪崩のように受けまくったのだ。
ナレーション講座、朗読講座を空いている時間を利用して
声を鍛錬していった。
 
そして、今、職場で同僚からこんなふうに言われるようになった。
 
「普段からあなたは楽しそうにやっているね!」
 
いや、本人はそこまで思っていませんけど……。
でも、昔よりは本当に楽しくやっているな。
こう思えるのだ。
 
そして、受講して1年経つ話し方講座で以前、僕を変えてくれた文章が再登場した。
 
「どこまでも広がる青い空」
 
以前と同じように、講師の人に「読んでください」と促された。
 
僕は胸を張って声を出した。
 
「どこまでも 広がる 青い空! 」
 
講師は「とっても晴れやかに広がる感じですね!」と言ってくれた。
 
以前の僕とは違い声に奥行きを持たせて、響く声を手に入れた。
そして、日常生活の多くも明るく過ごすことができている。

 

 

 

このように僕は声を‘技術革新’させることが出来た。
さらに、僕が目標としている芸能の仕事を得るために受けているレッスンでも
‘声いいね! ’と評価があがり、芸能の仕事を獲れる領域に近づいていることを実感できている。

 

 

 

さて、今の声を手に入れた僕になれたターニングポイントはどこか? と思うと、
コーチングの仲間が僕の声を酷評したことが始まりだった。
 
酷評されることはかなり僕にとってはきつかった。
 
でも、もし酷評されなかったとしたらどうだったか?
おそらく、相変わらず声に対して変な自信を持っていただろう。
また、その声についてもし誰かに指摘されたとしてもなんら耳を貸さずに
声の技術を磨くことを怠っただろう。
 
酷評があったからこそ、僕は自分を見直した。その後、話し方講座を受けて
講師から‘最高の金言’を聴くことは出来なかった。
間違いなく、その金言は僕が知ることがなかった、知ることが出来なかった
‘雑学’になっていただろう。

 

 

 

もし、これを読んでいるあなたが自分の持ち味を失い悩んでいるとしたら
僕はこう言いたい。
 
‘今の自分を受けとめてみたらいかがだろうか? ’と。
 
その素直な心があなたの悩みを切り開いてくれて
明るい光が入り込んでくれるかもしれない。
誰かがあなたを後押しする言葉をかけてくれかもしれない。
そうなれば、あなたは気づくだろう。
 
‘謙虚な心が自分の道を照らしてくれるのだ’と。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
後藤 修(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

愛知県出身。会社員として23年間勤務。2年前に今までの人生を振り返って
自分らしさを持ちながら生きることを決意し、コーチングを取得。
来たるべき時期に会社を退社して、コーチングを使い本来の自分を取り戻し、‘ありたい自分’で生きていきたい人を支援する活動する計画を着々と進めている。

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2021-12-01 | Posted in 週刊READING LIFE vol.150

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