週刊READING LIFE vol.174

人生とは、選択決断の結果である《週刊READING LIFE Vol.174 大人の友情》


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2022/06/20/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「いや、それはもう、放っておいた方がいいと思うよ」
 
娘が所属しているあるサークルで、そのメンバーの一人が先生とのやり取りや練習の態度などを指摘され、居心地が悪くなったようで、そのサークルへの参加が減ってきているというのだ。
 
私は、そのお嬢さんを知ってはいるものの、どんな方かは詳しくは知らない。
ただ、他のメンバーが先生とそのお嬢さんとの間に入って、なんとかサークルへの参加が出来ないものかと世話をしているという。
一見、そのメンバーの方の行動は、親切な良い行動のようにもとれる。
ただ、私がその話を聞いて思ったことは、
 
「放っておいた方がいい」ということ。
 
今、揉めている渦中のお嬢さんは、大学を卒業して社会人となって働いているという。
もう、立派な大人だ。
例え、先生とのやりとりや、これまでの態度で先生との間で何か問題が起こったとしても、それを解決するのは本人なのだ。
助けを求められた訳でもなく、ただ、同じサークルのメンバーとして何かしてあげないといけないという衝動に駆られたのだとしたら、それは誰のためになるんだろう。
その場は取り繕うことは出来るかもしれないが、そのお嬢さん自身が変わらない限り、また同じようなことは起こるはずだ。
つまり、その助けてあげたいと思ったメンバーを、本当に助けたことにはならないどころか、さらに気づくタイミングを先送りさせるだけなのだ。
そう、本人が気づいて、本当にまたそのサークル活動に参加したいのならば、先生に謝り、気持ちを伝え、戻ってくるしかないのだ。
それを見守ることが、周りのメンバーのそのお嬢さんへの真の友情だと私は思う。
 
娘の関係するサークル活動の話を聞いていて、私はふと自分自身の過去の友だち関係のことを思い出した。
今では、そんな意見を持つようになったが、私自身、実は子どもの頃から友人関係が上手く築けなかったのだ。
小、中、高時代というのは、自分に自信がなく、友だち関係を築くことさえ諦めていた。
例えば、声をかけてきてくれて、楽しそうに話をしてくれる友だちがいたとしても、
 
「こんな頭の良い子が私のことを気に入ってくれるはずがない」
 
「こんなに運動神経の良い子が、運動音痴の私と気が合うわけがない」
 
と、自分から友人としての関係を築こうとしなかったのだ。
だから、いつも孤独、一人で過ごしていたのだが、気を遣いながら付き合うよりもずっとマシだと思っていたような子どもだった。
だから、自分の考えていることや、ましてや悩み事など、友だちに打ち明けたことなど全くなかったのだ。
自己肯定感が低すぎると、楽しい話ならば付き合ってもらえそうだけれど、こんな私の悩み事に付き合ってくれる友だちなんているわけなんてないだろうと、最初から諦めていたのだ。
 
ところが、私が社会人になって、付き合っていた彼とのことに悩んでいた時期のことだ。
初めての恋愛での悩み事。
もう、どうしていいのかわからず、意を決すると短大時代の友人に相談したのだ。
すると、その短大時代の友人は、まるで自分のことのように一生懸命考え、色んな考え方やアドバイスをくれたのだ。
最後には、私が楽しいと思う選択をした方がいい、とも言ってくれた。
その友人は、大阪の中心部にある会社に勤めていたが、自宅はかなりの地方にあった。
なので、電車でもゆうに2時間近くかかる。
そんな友人が、終電間際まで本当に親身に相談に乗ってくれたことは、30年以上経った今でも、私はとても有難く、嬉しい記憶として鮮明に残っている。
 
その経験から、私はその後、相談を受けると彼女と同じように親身になって、何だったら私が解決の糸口を見つけてあげなくては、というくらいに思うようにまでなっていったのだ。
当時、私が相談事を受けた時のことを思い返すと、
「絶対、〇〇の方がいいと思うよ」
「△△って、全然よくないよね」
 
と、いった具合に思いっきり自分の意見を押し付けていた。
今思うと、何の根拠もないのに、なぜ、こんなにも強く言い切り、他人の人生に土足でズカズカと踏み込むことが出来ていたんだろう。
思い出しただけでもゾッとするし、恥ずかしくて顔が赤くなってきそうだ。
 
また、ある時こんな場面にも遭遇した。
あるショッピングモールのフードコートでのことだ。
エスニック料理のカウンターでオーダーするために並んでいると、後ろに並んだ女性2人の声が聞こえてきた。
「Aランチは、〇〇、Bランチは△△、あんた、Aにしとき」
 
私には、そのもう一人の女性の声が全く聞こえず、一人の女性がずっとしゃべり続け、挙句の果てには友だちのオーダーまでも決めていたのだ。
この女性たちの関係性は、このシーンだけで判断できるものでもないと思うが、少なくともこのフードコートでのやり取りから、普段の関係性も垣間見て取れそうなものだった。
いつもメニューを決められない友人のために、いつもメニューを決めてあげている女性。
そんな二人の関係を俯瞰してみても、ちょっと考えさせられそうだった。
 
人が迷う選択決断の場でも、意見を伝え、その決断を手伝ってあげること。
それこそが、友情。
それこそが、親切なこと。
 
フードコートの女性たちのことは言えないくらい、私もそうだと思うようにまでなったのだ。
 
ところが、その後の人生で大きな学びに出会ったとき、そこで言われた言葉がまるで雷を浴びたかのように全身を走ったのだ。
 
人生とは、選択決断の結果である。
 
この言葉を聞いたとき、ドキッとして心臓が音を立てたかのような衝撃が走ったことをとてもよく覚えている。
 
そうか、人生は決めた通りになっていっているよな。
そうだ、自分の人生を切り拓くのは、その人の選択決断なのだ。
そうだとしたら、友人が悩んでいるときに、あれこれとアドバイスすることはどうなんだろうか。
もちろん、それが参考の一つになる程度ならばいいだろう。
しかし、完全に委ねられて、頼られて、依存されたとしたら、その相手の人生までも変えてしまうような決断を他人である私が出してもいいのだろうか。
 
悩み事は所詮、その人自身の人生の一部でもある。
悩み事や困り事のない人生なんてないはずだ。
それらを人生から排除しようと思うこともそもそも違うだろう。
そして、その悩み事の解決法によっては、その後の人生の歩む方向だって変わってしまうのだ。
私たちの人生は、その時その時、決断したことの結果となっているのだから。
 
だから、「人生は選択決断の結果である」という言葉に出会ってからは、友だちの相談事に耳は傾けるが、「こうした方がいいと思う」というようなアドバイスを一切しなくなった。
それは、その人にとっては冷たいと感じられるかもしれないが、そう思われるならばそれでもいい。
最後に決断を下すのは本人でしかできないし、それを左右するようなアドバイスをすることはかえって本人の決断を惑わすことになる。
 
子どもの頃、私が羨ましいと思う友人たちの関係とは、いつでもべったりとくっついて、何でも一緒にやることだと思っていた。
それは見ていても楽しそうだし、仲が良い証拠だとも思って、見ている側としてもとても羨ましかった。
 
大人になった今、私が思う友人関係は、時には近づき、時には距離を取って、友人が考え、決断をする時間を持つことを尊重するというものだ。
そんな距離感を持てる相手こそ、これからの人生の時間を共有したいと思う友人だ。
そんな友情を築ける相手との関係は、これから先も大切にしてゆきたい。
 
ところで、例の、娘が関係しているサークル活動での騒動。
肝心の娘はそのお嬢さんに対して、どんな対応をしてきたのかと尋ねてみた。
 
「私? 何の連絡もこっちから一切していないよ」
 
おお、あなたはすでに大人の対応でしたか。
そうよね、あのお嬢さんがどんな行動をするのかを見守り、また戻って来た時に笑顔で迎えてあげること。
それこそが、大人の友情なのかもしれないね。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。

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2022-06-20 | Posted in 週刊READING LIFE vol.174

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