週刊READING LIFE vol.174

苦しみを半分に、楽しみを倍に!《週刊READING LIFE Vol.174 大人の友情》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/06/20/公開
記事:山本三景(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
よく、人それぞれ物語をもっていると言われる。
私の物語は薄っぺらく、登場人物は少ない。
 
まわりの人からみると私は友達が多い人だと思われているらしい。
あるとき、生まれ変わったら私になりたいと言った珍しい人がいた。
「なんで?」
ときくと
「楽しそうだから」
と返ってきた。
 
おそらくそれは彼女が原因だろう。
登場人物が少ない私の物語に、まるでたくさんの友達がいるかのように、一人で何役もこなしている友達がいる。
 
「旅行にいった」
「フェスに行った」
「プロレスみた」
「面白い漫画みつけた」
「いい居酒屋みつけた」
「フレンチに行った」
 
色んなことを彼女と体験し、楽しさを共有している。
彼女は趣味が多いので、彼女の趣味の話も自然と私の中にインプットされる。
私の情報源はすべて彼女一人でまかなっているといっても過言ではない。
SNSから情報を取得する時代だが、私はSNSより彼女からの情報のほうが得ることが多い。
お互いの趣味、嗜好をわかっているので、彼女が薦めるものは、たいてい私は気に入る。
 
そんな彼女の物語に出てくる登場人物はかなり多い。
人に自分の話をするとき、私は登場人物の名前を言わずに説明する。
お互いに知っている人について話す場合は、固有名詞を出して話すが、そうじゃない場合は固有名詞を使うことは少ない。
 
「会社の上司が……」
「高校時代の友達が……」
「最近、知り合った人が……」
 
そういうふうに話をするのが当たり前だと思っていた。
出会った人が少ないからそれで事足りていたのかもしれない。
しかし、彼女は必ず固有名詞を出して話をする。
 
「〇〇さんがね」
「〇〇くんがね」
「〇〇先輩がね」
 
もちろん、関係性も説明したうえでだ。
話をきくたびに、なんて登場人物が多いのだろうと思う。
そして、彼女から語られる彼女のまわりの人たちの話は面白い。
これだけ仲のいい人が多いと、人に話すときは、「〇〇の人」という括りでは収まりきらないのもうなずける。
出会う人数であれば、もしかしたら人はそんなに差はないのかもしれない。
出会ってからの関係性の築き方で違いが出る。
彼女は「おもしろそうな人だな」と感じたら、その出会いをその場だけのものにせずに関係性を築いていくので、通り過ぎるだけの人が少ないのだ。
 
コミュニケーション能力が高い。
確かにそれもある。
話しやすそうなオーラが彼女から出ている。
まわりの人たちに仲良くなりたいと思わせる魅力が彼女にはある。
そんなことを言うと「どこが?」と彼女に言われるかもしれない。
 
彼女と私は同い年で偶然にも同じ誕生日だ。
血液型が違うだけでこんなにも違うのかと思うぐらい、第一印象は違う世界に住む人に思えた。
 
おしゃれで可愛い子だなぁ。
 
それが、私が彼女に持った第一印象だった。
センスがいいという言葉が当てはまる。
最初は会社の同期として知り合った。
彼女が在籍していたのは短い間だったが、その短い間に仲良くなり、今に至る。
知り合った当初はこんなに仲良くなるとは思ってもみなかった。
きっかけは、マイナーな映画の音楽だった気がする。
お互いのオタク要素に惹かれ、そこから仲良くなっていった。
 
彼女の話をするときは、「会社の同期」という言葉は使わない。
「同期」という言葉では片づけたくないので「友達」と言っている。
たぶん、「会社」という枕詞を捨てたいのかもしれない。
私が彼女のことを話すときは「東京の友達」「マラソン好きの友達」「私のことを好きすぎる友達」と言っている。
 
私は人と積極的に関わるのが苦手なのだが、彼女は私とは逆で、友達や知り合いが男女問わず多い。
彼女の人柄がそうさせるのだと思う。
そして、論理的に話すので説明がすごくわかりやすい。
「そうかぁ? 文系だよ」
と彼女は言う。
確かに文系でもある。
かなりの本好きだ。
 
以前、私が書いた映画の記事と、会社の先輩の話をきいて『ドライブ・マイ・カー』を観に行ってきたと彼女が話してくれたことがあった。
 
「チェーホフを読みたい気持ちにはなるけど、チェーホフは現代語訳や新訳じゃないと挫折するかな」
 
そんなことを言いながら、その後酒を飲んだらしい。
 
彼女は小説も漫画もなんでもいけるオールラウンドプレイヤーだ。
最近の漫画から手塚治虫まで幅広い。
お互いに面白い本をみつけると、LINEで
 
「これ、面白かった!」
 
と、紹介しあう。
少し前までは『ダンス・ダンス・ダンスール』という、男子がバレエに魅了される漫画にはまっていた。
その影響か、実際のバレエのYoutubeのリンクが私のもとへと送られてきた。
ガイドブックの草分け的存在の『地球の歩き方』と超常現象などの雑誌『ムー』がコラボした『異世界の歩き方』が出版されたときは、
 
「絶対好きだよね!」
 
と、本をプレゼントしてくれた。
お互いの好みがわかっている。
この本は天狼院の読書会なるもので紹介させてもらった。
 
そして最近の彼女は「痩せる!」と言って筋トレに励んでいる。
本格的な筋トレだ。
最近はあまり走っていないみたいだが、マラソンも好きなので、以前は結構走っていた。今はどうだろうか。
私はどちらもやらない。
こればかりは「やってみようかな」という気になるのはまだ先のことになりそうだ。
私は不摂生な生活をしているので、運動をしたほうがいいとは言われているのだが、散歩するにとどまっている。
筋トレをする人の意志の強さがうらやましい。
 
しかし、ストイックに運動をしているかと思いきや
 
「コンビニのカヌレに生クリームが入ったものがうまい!」
 
とLINEが入ってきた。
色んな誘惑に負けている報告も逐一受ける。
適度に運動して、適度に食べたいものを食べるのが、ストレスなく暮らせる秘訣ではないだろうか。
たまに誘惑に負けるのは仕方ない。
あまり無理はしてほしくない。
 
マラソン、筋トレ、お酒、美容、スイーツ、本、映画、音楽……どのジャンルでも、彼女は誰とでも楽しく話せると思う。
彼女の言葉はストンと心に入ってくる。
優しくもあり、少々の毒もスパイスとなって人間味が絶妙なマリアージュなのだ。
なんだか、通販番組のように彼女を紹介してしまった。
 
不思議なのが、なぜか彼女は私のことが大好きなのである。
私は趣味があるわけではなく、性格がいいわけでもない。
「一緒にいるとホッとする」
とは程遠い性格である。
でも、きっと彼女は私を大好きだ。
しかし、溺愛されているわけではない。
かなり叱られる。
色々と落ち込んで迷走しているときに彼女に話をすると
 
「最初の目的はなんだったの?」
 
とぴしゃりと言われてハッとなるときがあった。
いつも味方でいてくれるが、自分があらぬ方向へ行こうとしているときはピシャリと言ってくれる。
私にとっては大変ありがたい存在なのだが、彼女にとっての私は結構面倒ではないだろうかと思う。
 
彼女は、まわりにも私のことを話しているようで、いつの間にか、彼女のまわりの人たちも私のことを友達のように思っている。
 
「最近、あの子はどう?」
なんてきかれることもあるらしい。
 
友達の友達は友達ではない。
 
そう思っていたのだが、彼女を通して『私』という人物を知ってくれる。
友達の友達もまた友達なのかもしれない……なんて最近思うようになった。
 
私は彼女にたくさん背中を押してもらっている。
ある意味、自分の苦しみを一緒に背負わせてしまっているのかもしれない。
同じように彼女が苦しいときは支えてあげたい。
彼女がダメダメな私に頼るかはわからない。
もし、苦しくなったら、せめて話すだけでもいい、何かサインを出してほしい。
私も彼女の苦しみを半分にしたいから。
 
どれだけ、彼女の言葉が私を救ってくれているか。
安っぽい歌詞のようになってしまうが、彼女がいなかったら、一番苦しいときを乗り越えられていなかったと思う。
彼女のような友達がいる私って、捨てたもんじゃないのでは? と思ったりする。
 
苦しみのない人生なんてないのだから、できるだけ、お互いの痛みを忘れられるような存在でありたい。
できれば苦しみから楽しみにフォーカスしたい。
苦しみを半分にするより、楽しみを倍にしよう。
 
今年の夏、東京にいる彼女のもとへ遊びに行こうと思う。
楽しみを倍にしに。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
山本三景(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

2021年12月ライティング・ゼミに参加。2022年4月にREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部に参加。
1000冊の漫画を持つ漫画好きな会社員。

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2022-06-20 | Posted in 週刊READING LIFE vol.174

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