週刊READING LIFE vol.205

【家を売る】ということは【夢を売る】ということ《週刊READING LIFE Vol.205 私だけのカリスマ》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2023/2/20/公開
記事:陣(Jin)(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
今回インタビューしたのは親戚のおじさんだ。不動産系の仕事をしており、いつもは多くは語らないが、人に聞くとかなりやり手だったらしいと聞いたので、今回取材を申し込んだ。
 
 
私ーなんの仕事をされていますか?
 
親戚ー今は不動産系の仕事で週2日間くらい出勤しています。以前は別の不動産で働いていたりして、転職は何度かしています。
 
私ー様々な仕事をされたということですが、一番頑張った仕事はどれでしょう?
 
親戚ー新入社員で入った不動産会社ですね。230ヶ月いましたが、230戸売りました。
 
私ー1ヶ月に1軒ですか! すごいですね!
 
親戚ーすごいかどうかはわかりません……。他の人と比べるにしても、同じ時に働いていた人とも年齢や歴が違い、条件が一緒だったわけではないですし、当時は家がどんどん建つ時代だったので、今それだけ売れるかと言われれば多分売れないでしょうから……。
 
私ーなるほど……。では主観で良いので、一番頑張った時に、自分はどのくらいの位置にいたと思いますか?
 
親戚ーんー。中の上でしょうか?
 
私ーありがとうございます。ですが家を売るとなると、1軒当りなかなかの金額がすると思うのですが、どのように買ってもらっていたのでしょうか?
 
親戚ー新入社員の頃は近所の団地に行き、一軒一軒回って営業していました。4000室ほどあったと思いますが、すべて回りました。
 
今のようにコロナが流行っていたり、人を信用出来ないという時代ではなかったので、皆さん家に入れてくださり、「大変ね~」と声をかけてくださる方が多かったです。話を聞いてくれる方も多かったのですが、結局この団地で家を購入した方は誰一人としていませんでした。
 
しかし、そこで話した内容は今後の営業の糧になりましたし、この営業方法では家は売れないと気づくことができました。
 
私ーなるほど、試行錯誤の賜なのですね。それでは、これ以降の営業はどのようにされていたのでしょうか?
 
親戚ー実はこれ以降、あまり営業をかけておらず……。というのも、一度ウチで購入された方が、「この人も家を建てたいらしい」と言って家を建てたいという人を紹介してくれるようになったのです。
 
私ーへぇ! そうなんですね! ですが、一生に一度買うかどうかという商品を任せてもらえるということはかなりの信頼感が大事かと思います。
信頼してもらえるために気を付けていたことなどはありますか?

 
親戚ーそうですね……【心】を大事にしていました。
 
私ー【心】とは、具体的にどんな心でしょうか?
 
親戚ーうーん……。常に謙虚な心でお客様と接するようにしていましたね。ですが、もっと意識していたのは、お客様と常に対等であるという風に思っていました。
 
私ー上でも下でもなく、対等なのですね。
 
親戚ーそういう心構えじゃないと、相手に信頼してもらえないですから。そして、それくらい信頼してもらわないと家なんか売れませんから。
 
私ーなるほど。なんとなく接客というと、お客様は神様という概念が強くあり、実際私もそうだと思っていたので、接客する側はお客さまよりも下という感覚でした。目から鱗です。
 
それだけ信用できる相手だからこそ、お客様も自分の知り合いを連れてきてくれたのでしょうね。
 
お客様の中にはいろいろな方がいると思うのですが、その中でも面白いなぁと思った方はいらっしゃいますか?

 
親戚ーそうですね……。県外のお客様で、新しく家を建てるとのことでお客様の家に打ち合わせをしに行ったのですが、住所を教えてくれなかったんです。
 
そのお客様が言うには、「空港で〇〇地区の私の名前までって言ってもらえれば着きますから」と言われたんです。
 
不思議に思いながらも空港でタクシーを捕まえてその通りに運転手の方に伝えると、なんと目的地まで連れて行ってくれたんです!
 
どうやらこの辺りでも有名な家なんだそうです。
 
ついてみてびっくりしましたね!
あれほど面白い経験はなかったですね。
 
私ー商業施設やランドマーク的な存在なのでしょうか……。ものすごいレベルのお家ですね。
 
親戚ー私もびっくりしました(笑)
 
私ーですがそれほどのレベルのお家となるとかなり資産がある方ではないかと思うのですが、そういった方はどうやって見つけられるのですか?
 
親戚ー自分で探したことがないんです。お客様が呼んでくださるので……。なぜかいつも紹介してもらうのは資産のある方が多かったですね。
 
私ー信頼関係の賜物なのでしょうか? 対等で接してくれるからこそ、居心地が良かったのかもしれませんね。
 
親戚ーんー。どうでしょうね?
 
私ー資産がある方が多いとのことでしたが、その中でも一番高額だった物件はおいくらくらいだったのでしょうか?
 
親戚ー当時家を建てられる方は土地を持っていらっしゃる方が多かったので、上、つまり建物のみの方がほとんどだったのですが、1軒建てるのに3,000〜4,000万円くらいかかっていました。私が売った中で一番高いお家は7,000万円くらいだったと思います。
 
ですが、今はその倍くらいの価値になっているようです。家一軒建てるのに今は6,000万くらいかかっているので、価値としては今で言うと1億4,000万の家を建てたことになりますね。
 
私ーそんな金額になるのですね……すごいです。なかなかそんな金額出せる人は少ないのではないかなと思います。
 
親戚ーなので、売れる方にしか売りません。そもそも家を契約するときは、金銭面など、家を買える状態の人にしか売りません。
 
私ーなるほど。では売れるかどうかはどこで判断されるのでしょうか?
 
親戚ーはじめに予算をお伺いします。大体一坪いくらくらいかというので計算していきますが、それを決めてからどんな家にしていこうかと話し合います。
 
私ーそんな家の中でも、これはいいなぁとか、これはすごいなと言うお家はありましたか?
 
親戚ーそうですね……。吹き抜けの中庭を作ったり、暖炉を作るお家もありましたね。あと、お風呂用の庭を作って、その庭が見えるように、お風呂場をガラス張りにしたお家なんかもありました。お風呂場は室内になるので、露天風呂風を味わえるということで、結構当時は流行ってましたよ。
 
私ーそれはいいですね! ですが中庭やガラス張りのお風呂場ですと、全面窓やガラスになったり、暖炉の場合薪を運んだりするのが大変そうですね。
 
親戚ーあ、そういったお家の方はお手伝いさんがいらっしゃるので、その方に頼まれているんですよ。
 
私ーわぉ……。
 
ちなみにもし自分で家を建てるとしたらどんな家にしたいですか?

 
親戚ー住みやすい家ですかね? 収納が多くて、楽な格好をしていても暮らせる家がいいですね。あ、でも暖炉はかっこいいなぁと思います。自分で管理できないので結局作らないとは思いますが。
 
私ー暖炉は憧れの存在なのですね。
でもそれだけ売れるようになるまでには大変な時期もあったのではないでしょうか?

 
親戚ー新入社員で入社してから数年はずっと忙しかったですね。やっと板についてきたのは10年後くらいでした。1日17、8時間働いていましたし、実際に住んでみないとわからないと言うことで、建売住宅に営業の人数人と暮らしていました。新人の育成もそこで行っていて、大体22時くらいから勉強会をしていましたね。当時営業職に就いていたのは男性だけでした。
 
建売住宅というのは、すでに家が建っている状態で販売する家のことです。私がしていたのは注文住宅で、お客様の要望に合わせて間取りを決めたりしていました。
 
私ー17、8時間ですか……。今じゃ考えられませんね。建売住宅の販売もされているとのことでしたが、230軒の中には何軒か入っているのでしょうか?
 
親戚ー私はほとんど売れませんでした。苦手だったんでしょうね。夢がないですから。
 
私ー夢がないとはどういうことなのでしょうか?
 
親戚ー建売住宅ですと中身が決まったものの販売になってしまうのですが、注文の場合はどんな家にしたいとか、将来子どもが何人くらいいて、とか、未来の話をすることができるんです。そんな話ができる方が夢があっていいじゃないですか。
 
私ーなるほど。家を売るということは夢を売るということなのですね。
 
ですが、確か以前住まれていたお家はご自身で設計なさったと聞いていますが、10分ほどで完成させたと……。
 
親戚ーはい。上司からネチネチ言われてヤケクソで建てました(笑)間取りは自分で図面を引いて作ったのですが、10分で考えました。
 
私ー営業とのことでしたがご自身でも図面を引かれるのですね。
 
親戚ーはっきり仕事が分かれてるわけではなかったですね。なんでもできたほうが売れますしね。
 
私ーお客様も疑問に思ったことにすぐ答えてもらえたら信頼できますよね。その辺りも信用される一つの要因なのかもしれませんね。そういえば以前住まれていた家には、こだわりの照明があると聞きましたが、あれも10分の中に入っているのでしょうか?
 
親戚ーいえ、家の中の照明類は全て現場の方が勝手に取り付けました。
 
私ーそんなことがあったのですね……。身内だからこそできることなのでしょうね。
ですがそういうことができるくらい、社員の方とも信頼関係があったのかもしれませんね。

 
親戚ーどうでしょうね(笑)
 
私ー仕事はかなりお忙しかったとお伺いしていますが、どうやってモチベーションを上げていたのでしょうか?
 
親戚ー自分の中で目標を決めていました。1ヶ月に1回は県外に家を建てようと思っていて、そういう人がいれば声をかけてもらえるよう皆に伝えていました。一番遠いところだと東京や沖縄に行ったこともあります。それを目標に契約をとっていました。出張という名の旅行に月一行こうと決めて、それをモチベーションに働いていました。
 
私ー仕事とプライベートを両立させていたのですね。ですが、毎月そんなに出張させてくれるなんて、良い会社ですね。
 
親戚ー普通は出してくれないのですが、「こいつなら絶対契約をとってくる」と思われていたので、毎月行かせてくれました。
 
私ーこれまでの実績が会社への信頼に繋がっていったのですね。
約20年ほど続けられた仕事ですが、長く続けていく秘訣などはありますか?

 
親戚ー売れたから残りました。
売れなかったらやめていたと思います。売れたので20年近く働いちゃってましたね。
 
私ー売れるための努力もかなりされていますもんね。ところで、もし今自分が家を売ろうとした場合、どれくらい売れると思いますか?
 
親戚ー売れないと思います。時代が違いますし、私のやり方は当時は合っていたのかもしれませんが、今は全然違いますからね。時代ごとに、その時代に合った売り方があるでしょうから。
 
私ーなるほど。時代に合わせて売り方を変えていくことが大切ですね。最後にこれだけは言っておきたいことはあるでしょうか?
 
親戚ー薪の暖炉はやっぱり憧れます。
 
私ーですね! 今日はありがとうございました!
 
 

まとめ

・お客様と対等になれるまで関わる
・自分の仕事だけではなく、いろいろな仕事をする
・仕事を利用して楽しむ

 
 
 
 

□ライターズプロフィール
陣(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

福岡県生まれ。名探偵コナン歴は25年になる。コナン検定1級保持者
現在はYoutubeのコナンのゆっくり解説の台本を執筆している。
名探偵コナンで出てくるセリフで何度も命をつないでいる。
ライターとして活動する傍ら子どもと関わる仕事を10年以上している

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2023-02-15 | Posted in 週刊READING LIFE vol.205

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