週刊READING LIFE vol.206

雑学人たちがおもしろい!《週刊READING LIFE Vol.206 面白い雑学》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/2/27/公開
記事:たかむろシゲユキ(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)
 
 
雑学かぁ……雑学といえば、私にとって神的ポジションにいるのが「みうらじゅん」だ。
彼の雑学ぶりには、いつも脱帽ものだ。ウルトラマンやゴジラなどのテレビの黎明期の知識はオタクそのもの。それに某雑誌の「グラビアン魂」のコメントも深い。週刊文春の「みんなエロエロ」も私にとってはかなりの好きな読み物だ。あまりに私の青春時代をモヤモヤな思いを惹起するからだ。
どうしてみうらじゅん氏を意識するのか。
実は同世代、いやいや、バッチリ、同い年だから、だ。
 
彼は、私にとっての「雑学の神」といっていい人なのかもしれない。
神だから相手にしてはいけないのに、どうしても男は「張り合う」という習性が脊髄反射のように埋め込まれているので、ついついライバル視する自分が、ほぼ40年間、心のなかに居座っていた。
そのスタートはあの東映本社ゴジラ失踪事件だ。ゴジラが東映本社から深夜に忽然といなくなったのだ。当時のどの新聞も報じた。東スポはたしか一番派手だったような。そして数日後、それを盗んだ張本人が彼だったとスポーツ紙が報道した時に「やられた!」と思う自分が、いまも忘れられない。
「マイ・ブーム」や「ゆるキャラ(ゆるい+キャラクター)」、「とんまつり(とんま+祭り)」、これらの仕掛け人(言い出しっぺ)はいずれもみうら氏なのだ。この時、「この人は自分の雑学・熱愛を社会現象にするまでの力を持っているのか」と落ち込むほどに、圧倒的に私のなかでの存在感は「神」に近づいた
 
それはそれとして、「雑学の神」はけっこうな数、世間様にはいるものだ。私にとって雑学もおもしろいけど、雑学にやたらくわしい「神たち」の人となりがずっとおもしろい。みなさんはどうだろう
 
まずは「雑学の神(以下、雑学神)」をどうやって見分けるかって?
いろいろと彼らはわかりやすいアイコンを私たちに発信してくれている。
 
まずは、その「存在感」だ。
見てくれでエネルギッシュな印象さんはまずいなくて「飄々」としている。虫ならアメンボかトンボかな。ユラユラと風にまかせて飛びながら、自由気ままに飛んでいる彼ら。居場所のよさそうなところに降りたち羽を休めたら、そよ風にのってフワッといなくなく。それと似ている。
 
アメンボやトンボだから、体形は細身でガリガリ。身長は180センチはほしいものだ。かつてのみうら雑学神もそうだった。
ところが近頃は太めの肥満系の雑学神も多い。というより、ガリガリ系だったのに、部屋にこもっていて、すっかり太ってしまったという彼ら。だから虫にたとえるならテントウ虫かゲンゴロウか。たいていリュックを背負っているから、なんとなくカブトムシかな。よく目にするのは秋葉原駅や中野駅北口のブロードウェイ、お台場のコミケマーケットなんかで会えるおなじみの姿をみなさんにも浮かでいるだろう。
 
髪型を考えてみた。……長髪は必須アイテムだ。できれば30日間は洗ってないふうがベストだ。汗っぽいのを超えて砂漠のような乾燥系がいい。鳥の巣のようなバサバサ感があれば、より神秘性が高まる。
ただし腰まで伸びると神秘性より「ヤバッ性」の波長がグッと跳ね上がるので注意したい。
 
メガネはもちろん、かけているほうが、インパクトがある。
フレームは四角でぶ厚めですかね。でも丸目も多くないか。色はやっぱり黒かな……色よりもブランドだよな。けっしてレイバン(イケオジ風をめざすオヤジ、半グレ感の長袖Tシャツ風30代とかが多い。雑誌表紙だとLEON)なんかじゃない。となると、メガネの街・福井県鯖江市が誇る「金子眼鏡」だろう。でもフレームに3~5万円を出費するか?ここは、敬意を持って「する」にしておこう。
 
話し方……つまり、話す声の速さや音質だ。
まずひたむきに話す。余計な質問を許さないようなひたむきさ。乗ってくればマシンガントークが始まる。目はあまり合わない。意識はひたすら自らの脳に向かっている。格納してある「雑学」を見事に話し言葉で解説してくれる。楽しく話す人もいれば斜め45度にうつむき加減に話す二通りがいるかと。声質はいろいろかな。
 
大切なのは、彼らが話している時のリアクションだ。基本的に「楽しい」気分に包まれている。なにしろ本人が好きで収集した雑学知識。
「俺は○○まで知っているんだ。すごいだろう」というオーラを出されるとちょっとシラケるけど、そんな中途半端はいない。そんな奴はせいぜいゲーム王レベルだ。それでは雑学神には程遠い。
むしろ、私のなかの雑学神はこうだ。
「〇〇ってのがあって、それがわかったら、次に○○ということがわからなくて、それを調べたら……」という語りをやたら楽しそうに熱く続けるのが「真の雑学神」だ。なぜそれができるか。異様なまでの知識欲と集中力だけではない。雑学神には周囲の評価はなんら関係ないから。周囲との比較や格差はまったく意味をなさないから。彼らにとっての主軸はつねに「自分」だから。「自分にとっておもしろいか、探求する価値はあるか」が評価軸だから。本人のこだわりオンリーだから、私にとって、彼らが実にほほえましく思える。
 
要するに、知識の振れ幅が極端に幅広く、かつ深いのだ。深海2000mくらい?ってツッコミを入れたくなるほどに、「よくそんなことまで知ってまんなぁ」という深さが尋常でない。
そこに本人の「独自の視点」が入っているから実におもしろい。いや、むしろ含蓄がある。だから「雑」ではない。説明は無茶無茶丁寧だし、論理的だったりする。要は探求心が旺盛なのだ。
聞いてくれる=受けとめてくれるなので、実にうれしそうだ。
 
しかしだ、雑学の神といっしょにいるとおもしろいけど、ちょっと面倒くさかったりするのはなぜか、を考えてみた。それは、ちょっとばかし「空気を読まない」からじゃないか、と私はいつも思う。
一点集中するとまっしぐら。それは小学校からの幼なじみのMがそうだ。家が真向かい同士だったから、とにかく日が暮れるまで遊ぶ相手だった。
奴はとにかくあることに限ってはよく知っている。小学校3年の頃、国の名前と首都を当てるのが流行った。Mはオレたちの中でも群を抜いて、これが得意だった。当時は木造教室。端っこゲームのように始まると、ほかのちょっと地理に詳しい奴がいても、追随を許さない。首都だけではない。人口や主たる生産物、それに話している言語までいっきに説明する。まあ、よくぞ知っていると思う。
しかし……だ。
やがてみんなはしらける。あまりに詳しいからだ。
程々にすればいいのに、懸命に回答する。周囲がちとシラケていることにも関心が向かないだよな。とはいえ、気にならないのも才能のひとつだと、この年齢になって思う。
空気感を読まずにグイグイとくる説明してくれるあのパワーがすごい。だから、やはり国公立大学に受験してなんなく合格した。
「アタマはいい」という評価は高かったし、ね。
雑学クンはこういう点で周囲にとってはおもしろくないオーラを発する時がある、と。でも、それがオイラにはおもしろいんだけどね。
 
そうなんだよ、雑学クンたちは、地アタマはいいんだ、と周囲に思わせる「何か」がある。なんだろうなぁ。あなたはどう思います?
 
多分、吸収が速いんだろうな。一度読むだけで記憶に残るんだろう。速読得意のひとはページ全体で覚えるって言いますもんね。あれに近いんでしょう。
 
そして、雑学の神たちの魅力にある「ユルさ(自由さ)」にも言及しなければいけないだろう。
それが、みうらじゅん氏の上をいく赤瀬川源平だ(その上のウエは南方熊楠か)。著書に「老人力」という赤本があった。この方、美学校という不思議なゲージツ学校で講師もされていた。あのクマさんが愛称の鉄のゲージツ家もこの学校の出だった。
この赤瀬川氏が「トマソン」という写真集を出したのにはたまげた。無用の長物のモノクロ写真が延々と続くだけの写真集。博識のはずの著者が何だこりゃと思わせるような脱力系。路上観察学会なるものを南伸坊氏たちと立ち上げることになり、ちまたの「これって何?」という意味不明の建築物を探し出し論じるのだ。
このレベルになると雑学の神というより、むしろ建築学の人も交えての論説集もあり、語りが実に哲学的なので「雑学の哲人」が似合っている。
 
その雑学を市井の雑学大好き人間たちが日々盛り上げてきたメディアがあった。私もずいぶんと楽しませてもらった。それが、投稿誌「VOW」だ。あの宝島社から刊行されていた。その後、複数の雑誌を引越ししながら5年前よりファッション雑誌『sweet』の投稿コーナーで細々と生き抜いているらしい。
この雑誌、音楽雑誌「Voice Of Wonderland」の頭文字から命名したらしい。宝島社から刊行されて以来、なんと50年が経過するという。街中のおもしろ看板や新聞、広告のナイスなコピー文句や誤植を「斜め目線・皮肉目線」で読者が投稿するのがコンセプトの雑誌。好きなんですよねェ、このゆるさと無責任さが。この雑誌は雑学のオンパレード。みなさんもテレビ番組で「おもしろ看板特集」なんてのをご覧になったかと思いますが、それです。サブカルのトップを走る雑誌だった。
残念ながら月刊誌はすでに廃刊し、たまに別冊で発行されているようだ。しかし、ネットサイトも開設され、なかなか地味に繁盛ぶりのようなのだ。あったあった、写真も。元喫茶店をリフォームした「午後の整骨院」、青森で開店間近の「おいしいラ~メン、チョコッと・ドウ」の看板など、究極に笑える。作者さんたちはどのような意図で作ったかさっぱりわからないけど、独特の熱量で感動させてくれる作品群だ。
 
取り上げられる雑学はいずれもしょうもなく、世間様からは笑われる代物ばかりだが、このしょうもなさに情熱を片向けて投稿する下々の雑学人たちは「人生を楽しむ達人」ではないかと。
実学は時代とともに古くなる。
しかし、雑学は永遠に雑学であり、雑学は複雑に進化する。雑学こそ人々の「知恵の宝庫」ではないか。
 
雑学はおもしろい。私は雑学に熱中する「雑学人」がおもしろい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
たかむろしげゆき(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)

京都市生まれ 劇団に通算5年間在籍、劇作家・映画監督に師事し脚本・シナリオ修行を積む。現在はコンサルタントとして業界雑誌・紙、サイトに寄稿&講師

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2023-02-22 | Posted in 週刊READING LIFE vol.206

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