週刊READING LIFE vol.211

治せると思っていた《週刊READING LIFE Vol.211 お気に入り〇〇ベスト3》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/4/4/公開
記事:大塚久(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
今まで生きてきた人生の中で成功した経験も数多くあると思うが、それ以上に失敗した経験も数え切れないくらいあると思う。
僕の場合も、小学校の帰りにトイレに間に合わなくて大きい方を漏らしたり、中学校の帰りに買い食いがバレて職員室の掃除をしたり、初恋の人に告白して振られたり、大学受験に失敗したり、職場で人間関係がうまくいかずに移動になったり、生活費がカツカツでカードローンまで利用してしまい、支払いが滞りそうにあったりと挙げ出したらキリがないくらい失敗をしている。そんな僕の40年の人生の中でも特に大きかった失敗3つを選んで紹介する。もしよければ反面教師にして欲しい。
 
第3位 別れてすぐに誰かと付き合う
失恋の経験は人によって変わると思うが、僕の場合は割と多いんじゃないかと思う。僕の場合は背丈が平均より低く、顔もいわゆるイケメンの部類には属さない。ラグビーをやっていたので体は割とガッチリしていて、体毛もそこそこ濃いめで爽やかとは程遠い。もちろんそういう男性に好意を持ってくれる人もいるであろうが世間一般的には恋愛においては不利な方だと自覚している。そんな自分なだけに一度お付き合いしていただいた方は大事にしようとしている方だと思う(もちろん思い違いということもあると思うが、そこは今回は大目に見てください)。
 
それでも恋愛は自分が思った通りにうまくいくものではないので、お別れするときはある。お別れ自体は仕方がないのだが、そのあとは相手のために使っていた時間がなくなるので大きな空白ができる。それも時間が経てば埋まっていくのだが、失恋したてはその空白があることが寂しさを誘発し、物事が手につかなくなってくる。だからその空白を埋めたくて新たな恋愛対象を見つけようとするのだが、その時のマインドは”素敵な人と出会いたい”ではなく、”空白を埋めたい”なのだ。言い方は悪いが、要は空白さえ埋めてくれる人であれば誰でも良いわけである。
 
そんなマインドでいるので、空白補正で恋愛対象となる幅は自然と広くなるし、相手を実際よりも良く解釈してみてしまう。その状態で恋愛が始まると、最初のうちは空白を埋めてくれるのでいいのだが、次第に空白が埋まって満足すると、空白補正でよく見えていた相手が本来の姿に見えてきて、「最初と変わったよね」となってうまくいかなくなってしまう。これは相手に問題があるのではなく、そもそも空白を埋めたいと考えていた自分が悪いし、空白補正をかけて相手を見ていた自分が悪い。僕の場合はそれで相手に「別れたい」と伝えたところ、相当な修羅場になり、彼女の友人からも「あなたを絶対に許しません」とメールをいただくことになった。ただただ自分のために相手を振り回すことになるので失恋直後に誰かと付き会うのはやめた方がいい。
 
第2位 マルチ商法
しばらく連絡をとっていなかった大学や高校時代の友人から突然連絡が来たことはあるだろうか? 多くは同窓会などの連絡だったりするのだが、そのうちの何割かは「今の生活に満足できてる?」と言ったマルチ商法の誘いの場合がある。
僕の場合は最初に勧誘があったのが中学の同級生からだった。その時も突然連絡が来てファミレスで会うことになり、そこで「22歳で2,000万円の借金を作ったが2年で完済できた」という謎の先輩が同席し、宗教の勧誘と数十万円の仏像の購入を勧められた。そのときは久しぶりに会うのが気まずく、親しい友人を誘って行ったため、冷静に考えることができ、その場で断って帰ってくることができた。「久しぶりに会いたい」と言われたら必ず一人ではなく、誰かと一緒に行くことをお勧めする。それだけでもマルチ商法に対する予防になる。
 
そしてそれから約10年。僕は見事にマルチの勧誘にひっかかり、契約してしまった。その当時はそれまで勤めていた整形外科のクリニックを辞め、自分で開業して2年ほど経ったときだった。自分でもやっていけると思って開業したが、その考えは甘く、かかってくる気配のない、予約の電話と、うざいくらいかかってくるWEB広告の電話と、減り続ける口座のお金に、「なんとしてもお金を作らなければ」とありとあらゆるお金の稼ぎ方を探しては試してを繰り返していた。
そこである大富豪のYouTube講座(その時点でかなり怪しいが)で「さらに稼ぎ方を知りたければ連絡してください」とあり、すぐに連絡して会いに行った、もちろん一人で。
 
大富豪の豪邸に招待され、ここまで来たという行動を褒めちぎられる。そして「お金を稼ぐには行動できるかしかない。多くの人はやればできるのにやらないから稼げない。その点ここまできた大塚さんは稼げるはずだ。今お金がないのはやり方が間違っているだけだ。もしこれからまだ時間があれば、紹介したいビジネスがあるから来てほしい」と言われ、高級車に乗せられてそのビジネスを展開している会社の本社ビルに向かった。ここまですんなり相手を信じてついていってしまったのはそれまでの動画講座で「チャンスはその場で掴まなければ次はない!」と刷り込まれていたからだ。本当によくできている。
 
本社ビルではその会社が扱っている商品が並べられ、奥にセミナールームがあり、すでに40人くらいの人が座って講座が始まるのを待っていた。その会社は主に生活消耗品であるシャンプーやコンディショナーなどを扱う会社で、講座ではその品質の良さと、動物実験などをしない環境に配慮したもの、そしてMLM(マルチレベルマーケティング)なる独自の販売戦略(いわゆるマルチだが)で販路を拡大しているという説明をされた。そしてその講座が終わり、勧誘があるのかと思ったらそこでは行わず、さらにそのままみんなで食事に誘われた。ここで勧誘が行われるのである。以前、宗教の勧誘にあったときは相手2名、こちらも2名だったので断れたが、今回は相手が数十名、こちらは1人だけ、そしてみんなで僕の行動を賞賛してくる。もうそこで勧誘を断る術は無く、見事にスタンダードコースという25万円のコースを契約し、まずは25万円分の商品が自宅に届きそれを自分で使い切ることから始まり、さらに同じように勧誘をするのがミッションとなった。
このマルチの勧誘を受けてやることになってしまったのだが、僕は一人も勧誘できずに終わることになる。なのでマルチで友達を無くすとか、人付き合いが無くなるということは無かった。失ったのは最初の25万円くらいで、それもマルチ専門の買取業者で3分の1くらいは戻ってきた。
 
ではなぜマルチが失敗だったかというと、「マルチに勧誘に乗ったやつ」というレッテルが貼られてしまったことだ。純粋に勧誘だけしている人もいるが、中にはマルチの勧誘に乗る奴は騙されやすい状況のやつということをわかって詐欺を仕掛けてくる奴がいる。僕の場合も同じで「初期費用の25万円を一年で取り返しましょう」という口説き文句で、あるものをローンで買ってそれをレンタルするだけで月々2万円プラスになるビジネスを持ちかけられた。それにもハマって240万円のローンを組んだ。最初のうちはきちんとプラスが出ていたのだが、だんだんと入金がと滞るようになり、最終的には連絡がつかなくなった。残ったのは残り6年200万円のローンである。
 
マルチ自体は認められているビジネスであり、きちんと説明すれば違法ではない。ただマルチをやっているやつというのは「騙されやすいやつ」ということがマルチ界隈で認知されてしまう。マルチで一番の失敗はこのレッテルだ。だから必ずマルチの勧誘は信頼できる友人などと2人で行くようにし、間違いなく儲かるといった確実に怪しい話は一人で決めずに相談して決めることをお勧めする。それだけで200万円の借金は背負わなくて済む。
 
第1位 離婚
僕は24歳の時にそれまでお付き合いしていた人と結婚し、25歳の時に離婚している。決して相手の人が悪かったわけではなく、僕が結婚前に抱いていた幻想と現実のギャップに耐えられなくなり、次第に家に帰るのが苦痛になり、関係性が悪化して離婚に至った。全て僕自身が悪い。
 
今では結婚した夫婦の3組に1組は離婚するらしいが、できれば離婚は経験しない方がいいと思う。何より別れるための準備は精神的に苦痛なことが多い。財産の分与や家のこと、名義変更や職場などへの事務連絡など別れるのを決めた相手と話し合わなければいけないのはかなり体力を使う。結婚届が茶色で、離婚届は緑色なのは少しでも自然の色で気持ちを楽にしてくれようとしているのかもしれない。
ただ最初はお互いの名前を書いてハンコを押すと幸せな未来が想像できた茶色の紙とほぼ同じ形式なの同じように名前を書いてハンコを押すだけでため息とそれまでの生活が全て否定されたように気持ちになるこの緑の紙の威力は相当なものだった。
原子力の世界でもくっついたものを引き離す時にとんでもない量のエネルギーが放出される。それは多くの原子がくっついてできている人間でも同じようで、離れるときはとんでもない量のエネルギーが必要が出ていってしまうのだ。
 
そのダメージは相当なもので、親しい友人にさえ数年は離婚したことを話せなかった。今こうして記事を書いているのは当時から考えると奇跡に近い。
 
もし結婚を考えているならまずは恋愛の時に感じている甘い考えは考え直した方がいい。生活費は2倍になり、自分のための時間はほぼ無くなる。許容できない部分も数多く出てくる。恋愛はいいところを見て好きなるだけでいいが、結婚は悪いところを見て受け入れられるかどうかが大切だ。
 
僕のこれまでの人生での大きな失敗ベスト3はこんなものだろうか。失敗というとベストではなくワーストじゃないか? と思うかもしれない。体験した時点では失敗だからワーストなのかもしれないが、今考えるとベストなのだ。最初は僕の失敗談を反面教師にして失敗しないようにと思っていたが、誰かの失敗談を聞いたぐらいでその失敗を回避できるのであれば、今頃恋愛で失敗する人もいないだろうし、マルチの勧誘はとうになくなり、離婚するカップルなんて数えるほどになっているはずである。でも恋愛での失敗談なんていくらでもあるし、マルチの勧誘はなくならない、離婚するカップルも減らない。でもみんなその失敗の先で生きている。つまり人は失敗する生き物でその失敗を糧に前に進めるのだ。
 
僕もマルチからの詐欺にあったことでそれをネタとしてこうして記事を書くことができているし、離婚したおかげで今の奥さんと出会うことができた。しかも今の奥さんと出会ったのは離婚した直後に付き合っている。結婚して10年になるがいまだに空白補正がかかったままで解ける気配はない。
 
失敗はしないに越したことはないが、正直命に関わるような失敗と法を犯すことがなければどんなことが起きても大抵のことはなんとかなる。僕自身がこうして生きていることが何よりの証拠だ。 ここ数年は大きな失敗をしていない。周期的にはそろそろ何かしらの失敗が来るような気がしている。できれば失敗はしたくないが、大きな失敗の後に人生が変化していることも確かなので、ベスト3を揺るがす失敗をするんじゃないかとドキドキしながら今日も1日を生きていく。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
大塚久(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

神奈川県藤沢市出身。理学療法士。2002年に理学療法士免許を取得後、一般病院に3年、整形外科クリニックに7年勤務する。その傍ら、介護保険施設、デイサービス、訪問看護ステーションなどのリハビリに従事。下は3歳から上は107歳まで、のべ40,000人のリハビリを担当する。その後2015年に起業し、整体、パーソナルトレーニング、ワークショップ、ウォーキングレッスンを提供。1日平均10,000歩以上歩くことを継続し、リハビリで得た知識と、実際に自分が歩いて得た実践を融合して、「100歳まで歩けるカラダ習慣」をコンセプトに「歩くことで人生が変わるクリエイティブウォーキング」を提供している。

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2023-03-29 | Posted in 週刊READING LIFE vol.211

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