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週刊READING LIFE vol.219

その指先の向こうにいるのは、人である《週刊READING LIFE Vol.219 ソーシャルメディアの使い方》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/6/12/公開
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
ソーシャルメディアが普及し始めたのが1990年代初頭、そこからわずか30年あまりしか経っていないにも関わらず、このインターネット経由の情報交流サービスは私たちの暮らしに大きく入り込み、そして生活そのものを変化させる力を持ってしまっている。
 
特にインターネットが手のひらサイズのスマートフォンに収まり、広く一般に普及するようになったのはここ10年くらいの話だ。その間にもSNSをはじめとした様々なソーシャルメディアを通じて、私たちは常に誰かが発する情報を目にし、否応無しに感情を揺さぶられている。
 
しかしソーシャルメディアの出始めの頃はそんなことはなかったはずだ。ネットは匿名が前提だったし、今のようにメディアの種類も豊富ではなかった。そこにブログサービスができ、SNSができ、次第に自分発信できる場が広がっていった。かくいう私も実は主なSNSはほとんどやっているが、一気にいろんなことを始めた訳ではない。
 
ソーシャルメディアに本格的に触れたのは2004年というのははっきり覚えている。なぜかというとこの年に家庭で初めてノートパソコンを導入したから。あの時家電売り場の人に言われるがままに買った、起動が遅く、凄まじく重いPCを前にして、私はいろいろなことを検索し、掲示板というものがあることを知った。今では5ちゃんねるという名前に変わった巨大掲示板ではなく、私が見つけたのは趣味別の掲示板だった。1980年代の洋楽が好きだった私は、同じような話で盛り上がっている人たちの会話を読むのが楽しかった。そういう話で盛り上がっている人たちが素直にいいなと思えた。
 
もうどのくらい、自分の趣味の話をしてなかっただろうか。当時の私は専業主婦で、小学生の子どもが2人いた。もう小学生だから子どもの手がそろそろ離れる頃でしょうと周りは言ったけど、実際に育てている側としてはまだまだ気にかかることだらけだった。そんなことを全部割り切って、フルタイムの仕事でも探せばよかったのかもしれないけど、そこまでの踏ん切りがつかないまま、毎日半径3メートルくらいのことにしか気がつかない日々を送っていた。
 
だからこそ、趣味の話で湧いている掲示板がとても眩しかった。そして私は時々、その掲示板に書き込むようになった。誰かが1986年のUSチャートの話をしていたところにおずおずと入っていったのがきっかけだったかもしれない。
「ロバート・パーマーも亡くなったよねえ……」
「そうでしたねー。大ファンだったんだけど……」
「”Addicted to Love” とか、ほんと好きで」
そんなたわいもない会話でも、自分が好きなことに共鳴できる人たちと話ができることがとても嬉しかった。そんな話をしたくても、時間や行動に制約があった当時の自分はどうやってそんな場所を探せばいいのかわからなかった。別に毎日やっている家のこととか、子どもの世話に不満がある訳じゃない、でもここだったら話が通じる人がいると思えただけでも、楽しみが増えた気がしていた。
 
そこから次第に、ネットとの繋がりが強くなっていったような気がしている。
当時時々読んでいたブログが面白くて、ついには自分でも同じプロバイダーでブログを開設した。自分でも身の回りのこと、作ったパンのこと、観た映画のことを誰かに読んでもらいたくて書いていた。そうやっていると同じことをしている仲間が集まってくる。
 
ブログを作った2005年は他に目立ったSNSもなく、ブログ文化が全盛期だった。長文でも短文でも、何を書いてもいいスペースとしてブログをお互いに読む文化があった。オフ会をすることもあり、そのころのブログを通じて知り合った人とは今でも多くのお付き合いが続いている。どうしてお付き合いが続いているのだろうとよく考えるけど、書く中身が文章のため、その人となりをじっくりと見極めることができているからではないだろうか。文章から伝わってくる、その人の思考というものがあって、私もよその人のブログを読みに行って共感して、そこから今に至るまでお友達になったケースはたくさんある。
 
ブログ文化が少しずつ変化してきたターニングポイントとして忘れられないのは、mixiが登場した時のことだ。招待制のSNSというのがすごくステイタスのように思えて、招待してくれる人を探した。
 
次に登場したのがTwitterだ。登録のきっかけになったのは「mixi内で参加していた映画のコミュニティを閉鎖してTwitterに移るのでよかったら登録しませんか?」とお知らせが来たからだ。こうしてTwitterに登録したのは2009年だったけど、ここでの他のアカウントとのお付き合いは、それまでのブログとは全く違っていた。1つのつぶやきが140字、その中できちんと自分の言いたいことを反映させるのは非常に難しい。
 
そして仕事の関係で、あまりやりたくなかったFacebookをとうとう作ることになった。実名登録が必須というのがものすごく抵抗があったからだ。全世界に自分の名前を晒すのなんて嫌だと、最初は登録を頑なに拒んでいたけど、知り合い同士で実名で信頼があるからできる交流もあるかもしれないと思って登録してみた。その頃はmixiやブログから離れていく人もかなりいて「Facebookに移行します」という話もよく聞いていたから、この人は信頼できると思った人とは改めてFacebookで友達継続をした人も多い。
 
なんとなく続けていたFacebookの使い方が一変したのは今から4年前のことだ。
mixi→Facebookと繋がっていた友達が、とある書店を紹介していた。そこでは書店なのにどういうわけか文章のゼミを行っているという。その一風変わった天狼院書店というところに実際に足を運んで、自己流の文章から脱却したくてゼミを受け始めてから、確実に風向きが変わっている。Facebookの使い方がゼミの受講用だけではなく、そこから派生してライターとしての仕事をいただけるようになったからだ。まさかまさかの展開に驚いているのは自分だけど、実際にソーシャルメディアから仕事になっていく現実がそこにはあった。さらには天狼院書店で写真のゼミも受け始め、写真撮影を通じての自己表現の場としてFacebookに加えてInstagramも活用している。
 
こうしてソーシャルメディア18年間の自分史を振り返ってみるとずいぶんと変化があった。最初は孤独を紛らわしたい、どこかのコミュニティに属したいという社会的欲求を満たすためだったけど、次第に実生活とは別に自分のことを話したい、知ってもらいたいという承認欲求に変化していく。さらには仕事とも関連して、作品発表もする、自己実現の場になっていた。そうしたいと思ってSNSを使ったわけではないけど、結果を見ると広がりを見せている。
 
不特定多数のネットの海の中に自分の情報を発信することは、最初とても勇気がいることだったけど、年月が経つにつれ、使い方が変わるにつれてそのことが平気になってきた。むしろ多くの人に文章や写真といった自分の作品を広めたいという思いが強くなっているから本当に不思議だ。
 
もしも18年前にソーシャルメディアに出会わなかったら、私は今頃どうなっていたのだろう。自分はあのまま、専業主婦という名の孤独の中にいたままだったのかもしれない。
こんなに長きにわたっていろいろなSNSを使って来ることができたのは、ひとえにそこで知り合った人たちが面白い、いい人たちだったからだ。自分とは違う世界観を持っているけど根底ではお互いに承認し合っているからSNSで繋がることができていて、非常にラッキーとしか言いようがない。
 
もっとも18年間何も問題がなかったわけではない。意見が合わないと離れていった人ももちろんいたし、言葉の使い方から行き違いが起きてネット上でのケンカになったこともある。思うことは、オンラインでもオフラインでも人との関係は「縁」であるということだ。その相手と縁があるかないか、縁があっても濃いか薄いかなんて正直わからないが、ネットの海であっても出会うということは多生の縁があるからそうなる。そこをうまく常識的に取り持って切り抜けていけるかそうでないかが、人との関係を保つ分かれ目のように思っている。嫌な思いをしないように言葉には注意を払うこと、そしてネガティブな感情ばかり起きて来るような事態に巻き込まれないこと、ネガティブな人やサイトからはできるだけ離れるのも、自分のメンタルを保つ方法と学んだ。
 
人が最もストレスを感じるのは、自分は孤独だとか、社会から関心を払われていないと感じることと言われている。自己肯定感の低さを晴らすためにネットに夢中になって自分の殻に閉じこもったり、邪な目的でネットを利用したりする人も残念ながら一定数存在するが、ソーシャルメディアは使い方によっては確実に世界を広げてくれるものだ。
 
だから今、目の前にあるスマートフォンやPCは単なる機械でも便利屋でもなく、その向こうには必ず人がいることを忘れてはならないのだろう。何かを発信するときは、指先の向こう側にも誰かが必ずいる。言葉遣いはこれでいいのだろうか、相手が例え自分よりも年下であってもリスペクトは忘れてはいないだろうか。自分の承認欲求だけが満たされればそれでいいと思ってはいないだろうか。
 
実名でSNSを登録し、動画配信などで自分が顔を出して出演し表現する時代になってきているからこそ、人への影響を意識しながら注意を払って配信する必要がある。時代や流行が移り変わっても、ネットの向こう側にいる人の心はそう簡単に変わるわけではない。人は皆、尊重されたがっていること、指先で何かを生み出すときは一瞬考えてみることを忘れずに、これからもソーシャルメディアとの付き合いを続けていければと思っている。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)

2019年8月天狼院書店ライティング・ゼミに参加、2020年3月同ライターズ倶楽部参加。同年9月天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて、湘南地域を中心に神奈川県内の生産者を取材した「魂の生産者に訊く!」http://tenro-in.com/manufacturer_soul 、「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」 https://tenro-in.com/category/yokohana-chuka/  連載中。

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2023-06-07 | Posted in 週刊READING LIFE vol.219

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