音楽を始めたい大人なあなたへ ~社会人でデビューした新人ボカロPからのお誘い状~《週刊READING LIFE Vol.230》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2023/9/4/公開
記事:村人F (READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「音楽を始めたい!」
多くの曲がサブスク、YouTubeなど様々なメディアで流れている今、このように思ったことのある大人の皆さまも多いのではないでしょうか。
ですが「何をすればいいかわからない」、「私にできるのか不安」と考えて足踏みしてしまっている方も非常に多いでしょう。
今回はこの一歩を社会人になってから乗り越えて、歌声合成ソフト『VOCALOID』を用いた曲作りを始めた方にインタビューさせていただきました。
デビューしてから約1年になる新人ボカロP(※1)の「monuke(もぬけ)」さんは、今まで動画投稿サイトに7曲リリースをしています。
これらを通じて感じた「やって良かったこと」をたくさん語っていただきました。
※1 ボカロP:『VOCALOID』を使用した楽曲を作り投稿している方
――社会人からボカロPデビューをされていますが、キッカケを教えていただけますか?
monuke:ボカロPになりたいという思いは、ボカロを聴き始めた中学生の時からずっとありました。ただ曲を作ることへの憧れというか、絶対にやりたいと思いすぎていたので「中途半端に始めて挫折をしたら人生の目標がなくなるんじゃないか」と考えてしまって、気軽に手を出せなかったんです。
でもコロナ禍により趣味でやっていた職場内のバンドが活動休止になり「さて、つまらないぞ」となって。このタイミングで「これは曲作りを始めるいい機会なのでは」と思い始めました。
――曲作りを始めた頃はどのような作業を行っていたのでしょうか?
monuke:好きな曲のコピーから始めました。大体5曲くらい作って、そこで遊びながらソフトの使い方を覚えました。
――オリジナル曲はどのように作られますか?
monuke:私の場合は、最初にどういう曲を作るのかを言葉に書き出してから始めますね。ここでテーマや曲の方向性をざっくり決めます。これは「AメロやBメロで何を言うか」といったプロットの形で作るんですが、この段階ではポエムみたいな感じになっていますね。
ただ、この最初の構想をどれだけ練るかで作りやすさが全然違います。作品の説得力にも影響があるのではないでしょうか。だから、ふわふわした状態で始めると結構しんどいと思います。
――ここで軸をしっかり固めるわけですね。この後はどのように進めるのでしょうか?
monuke:場合によりますね。歌詞を先に決めてからメロディーを合わせる場合もあれば、キーボードを弾いて遊んでいる時にいい雰囲気になった音を採用して、そこから作っていくこともあります。
多分「こういう順番でやらないといい曲を作れない」ということはないと思うので、遊びながら音を奏でていくところから始めてもいいと思います。
――自分がやりやすい順番で行うということですね。
monuke:はい。ただ、最初は小編成の単純な音楽からやってみるのがいいかなと思います。ギター、ベース、ドラムだけといったシンプルな構成で。
というのも普通のJ-POP曲ってメチャメチャ要素が多いので、 それを真似して作ろうとすると打ちのめされるかもしれないからです。
――1曲が完成するまでどのくらいの時間がかかるのでしょうか?
monuke:私は大体1ヶ月弱ですね。まず構想を2週間くらい立てます。この段階でメロディーと歌詞があるデモ音源に近い段階まで作ります。ここはいつも時間がかかっちゃいますね。その後に伴奏やボカロの調声といった音を詰める作業を2週間で行います。
最後は全体の音量バランスを整えるミックス作業を1週間くらいかけて完成させます。最初の構想で形になるまでは辛いんですが、それを超えるとやってみたいことがどんどん思いついて楽しくなるので加速しますね。
――曲作りの時間はどのように確保しているのでしょうか?
monuke:平日は週に2〜3日で、2〜3時間ずつ取っていますね。ただ気が向かなきゃやらない感じです。休日も予定がない日にやって、気がついたら半日経っていたことがあるくらいです。
ですが曲の投稿イベントなど締め切りが近づいてくると、毎日必ず作業をするようにしています。その意味では締め切りを意識的に設けることは大事かなと思っています。
――他に取り組まれていることはありますか?
monuke:例えばSNSで定期的に開かれている「2時間で曲を仕上げなさい」というイベントにトレーニング感覚で参加しています。短時間なのでクオリティは低くなるのですが、作品として1つ形にしてみる経験を積めるので、ここでは結構鍛えてもらいました。だから本当に感謝しています。
――ボカロPをやっていて辛かったことは何でしょうか?
monuke:やはりインターネットに投稿するので、反応の有無については辛さを感じることがあります。というのも、他のボカロPをチェックしていると本当にみんな天才に見えてくるんですね。それなのに「全然評価がされない人がたくさんいるんだ」ということが辛くなります。
その一方でタイアップなどをバンバンされる方もいて、アマチュアなのにとんでもない凄い曲を作っている人もいるわけで。そういう方々と比べると自分がちっちゃいちっちゃい、本当に米粒みたいな存在に思えてしまうことがメチャメチャあります。
――逆にボカロPをやっていて嬉しかったことを教えていただけますか?
monuke:まず曲が完成することがメチャメチャ嬉しいです。自分が表現したい「物」が思い描いていた曲になって、1つの作品としてできると本当に嬉しくて。だから自分で作った曲もよく聴きますね。
あと先程は現実が数字で見えちゃって辛くなるという話をしたんですけど、それだけじゃなくインターネットに載せると、意外といい反応って来るんですよ。
例えば投稿した全曲をチェックしてくれる人がいるわけで。しかもSNSで拾ってくれて「この曲メッチャいい!」と言ってもらえたり、動画のコメント欄に感想を書いてもらえることもあるんです。
そういう風に自分の曲をどこかの誰かが聴いて反応してくれて、時にはSNSで広めようとしてくれるって、メチャメチャ嬉しいことです。
しかも最初は100人も聴いてくれないどころか、自分だけが聴くんだろうなと思っていたんですよ。それが1000回以上も再生してもらえているので、振り返ってみると思い描いていたより色々な繋がりができて、たくさんの人が聴いてくれたということは凄いことだなって思います。
――インターネット以外でも何か反応はありましたか?
monuke:現実世界でも起こっていますね。この前ボカロPが集まるイベントに参加したんですけれど、そこで私の作った曲が「めっちゃ良かったです」と声掛けをしてくれた人がいて、とても感動しましたね。
自分が声を掛けたい人はいたんですけど、まさか自分に声を掛けてくれる人がいるとは思っていなかったのでメチャメチャ嬉しかったです。
――今後はどのような方向性を考えていますか?
monuke:色々なジャンルについて勉強しながら曲を作っていきたいですね。ボカロPは同じ系統の曲を専門的に作る方が多いんですけど。今のところは色々と手を出してやってみたいなと思っています。
そうして曲をどんどん作っていって、聴いてくれる人を増やしたいという思いがあるので。その先に見えることがあったら素敵だなと考えています。
――具体的に目指している姿はありますでしょうか?
monuke:やはりボカロを聴き始めた中学時代に私が出会ったような、一部の人が「こいつメッチャいいんだよ!」って言ってくれるボカロPになりたいです。そして、そういう人の生活に寄り添えるような曲を作れたら、もうそれ以上のことはないかもしれません。
――最後に音楽を始めたいけれど、足踏みをしている方へ一言お願いします!
monuke:私はギターも弾けないんですけど、作ってみようと手を動かしてみたら形になりました。とりあえずやってみるところから入って、そこから自分に足りない物を勉強していけば良いんじゃないかと思います。今は初心者向けツールも豊富ですし、教えたい人も一緒にサポートしてくれる人もたくさんいます。
多分、後になればなるほどもったいないですし、私も「もっと早く始めておけば良かった」と心から感じているので。だから、思った時が始めどきです。本当に曲を作ることは楽しいので、ぜひ皆さん一緒にやりましょう!
インターネットが発達した現在は、入門するための環境も豊富にあるようです。
ですので最初の一歩を踏み出しさえすれば、後はたくさんの周りのサポートと一緒に走っていける素敵な状況なのだと感じました。
そして作成したオリジナル曲についてmonukeさんはとても楽しそうに語ってくれました。
この世界の中に、みなさんも入ってみませんか?
□ライターズプロフィール
村人F(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
名乗る名前などありません。私などしょせん村人のF番目でございます。
秋田出身だが、茨城、立川と数年ごとに居住地が変わり、現在は名古屋在住。
読売巨人軍とSound Horizonをこよなく愛する。
IT企業に勤務。応用情報技術者試験、合格。
2022年1月から、天狼院書店ライターズ倶楽部所属。
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