NiziUの素晴らしさを発信するときに、少しだけ知っておいてほしい大切なこと。《週刊 READING LIFE Vol,94 コミュニケーションの秘訣は〇〇》
記事:タカシクワハタ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
僕は久しぶりに怒っている。本当に怒り狂っている。
こんなに他人の文章を読んで憤慨するのはいつ以来だろうか。
読み終わった後に、心拍数が上がり、
呼吸が荒くなり、微かにめまいがしてきたくらいだ。
いったい何に対してそんなに怒っているのか?
ある記事に対してである。
その記事が、もうなんと言うかデタラメだらけで、
何にもわかっていなくって、しかも若干それを信じてしまう人がいそうで
それが本当にいたたまれなくて、悔しくてたまらなかったのだ。
その記事は、NiziU(にじゅー)というKーPOPガールズユニットが
日本のエンタメ界を圧巻している、という記事であった。
NiziUとは、韓国人プロデューサーのJ Y.Park氏によってプロデュース
された、日本人ガールズユニットである。
このガールズユニットのオーディションは、
朝のワイドショーの1コーナー「Nijiプロジェクト」として放送され、
大変な好評を博していた。そして1万人以上から選抜された9人が、
このたび「NiziU」としてデビューしたのであった。
NiziUはあっという間に、女子中高生を中心とした若い女性の中で人気と
なったばかりか、ワイドショーの視聴者でもある主婦層にも
人気を博するようになっていた。どれほどの影響力かというと、
これまで全くアイドルに興味がなかった私の嫁が
「Nijiプロって面白いねー」とハマってしまうほどであった。
「NiziUが日本のエンタメ会を圧巻している」
そのこと自体は事実であり、僕も異論は全くない。
問題はその本文の内容である。
「NiziUやTWICEなどのKーP0P勢と日本のアイドル界が
明暗を分けてしまっている」
まあ、確かにその通りである。
日本の女性アイドルグループはインディーズを含め1000組程度とも
言われている。そのうち、大手の芸能事務所に所属しているアイドルを
除くと現在のコロナ禍で多くのアイドルが存亡の危機に立たされている。
ここもそれほど大きな異論はない。
問題は次だ。
「日本のファンはアイドルに高いパフォーマンスを求めていなく、
未成熟さや一生懸命さを求めている」
ん?なんだと?
「日本のアイドルでは完璧なルックスと高いパフォーマンス力は
邪魔になる」
「握手会や投票権などで儲け主義に走ったことでファンの高齢化を
引き起こし、『歌とダンスで楽しませる』という
本来のアイドルグループの在り方を見失った結果、
若者に見限られてしまった」
ちょっと待て。
いったいあなたは日本のアイドルの何をわかっているのか。
本当にちゃんと見ているのか?
批判するからには、きちんとその対象を見なければいけないはずだ。
そもそも、何かを持ち上げる時に何かを貶すのは非常に悲しいことだ。
しかもその対象をよく知らないで貶しているのなら
それは誹謗中傷と同じである。
日本のアイドルとファンが誹謗中傷されている。
これはアイドルファンの一人として見過ごすことはできない。
もっと日本のアイドルのことを知ってもらわなければならない。
日本にも高いパフォーマンス能力を持ったアイドルが存在すると
いうことを。
そこで、年間50公演以上10年間アイドルのライブを見てきた私が、
パフォーマンスが圧倒的なアイドル3組を選んでみたので紹介したい。
1組目は「フィロソフィーのダンス」である。
「フィロソフィーのダンス」、
通称「フィロのス」は四人組のアイドルユニットだ。
彼女たちの武器は、なんと言ってもその歌唱力だ。
特に日向ハルのボーカルは絶品だ。
試しに目を閉じて、彼女の声だけ聞いて欲しい。
ハスキーで、パワフルで、音圧が鼓膜を激しく揺らすような
声に驚くだろう。
そして目を開けてみると、その声の主はとても小さくて
もっと驚くことだろう。
僕が初めて彼女たちのパフォーマンスを見た時、
あまりにかっこいい楽曲と、彼女たちのボーカルに
呆気にとられてしまい、一瞬時が止まったような気がした。
そう、彼女たちの歌声に一瞬気絶させられていたのだ。
「歌で気絶するなんて、そんなわけないじゃん」
そう思ったあなた。
ぜひ、フィロのスを生で見て欲しい。
今まで信じられなかった感覚をあなたも体験できるかもしれない。
2組目は「私立恵比寿中学」だ。
「私立恵比寿中学」、エビ中である。
こちらは名前くらい耳にしたことがあるという人も多いかもしれない。
「ももいろクローバーZ」の妹分、という触れ込みで活躍してきた彼女たちも
もうデビュー11年目だ。しかし、この11年で「元気と一生懸命さ」を
前面に出したももクロとは似ても似付かないほどテクニカルな
グループになったのはご存知だろうか。
彼女たちの曲は、いわゆる王道的なアイドルソングから、
ロック調のものあり、EDM調のものありととにかくバラエティに富んでいる。
このバラエティに富んだ楽曲を一つのグループが歌うというのは
非常に難しい。
そのグループのカラーが強すぎると、せっかくの多彩な楽曲が
全て同じような曲に聞こえてしまう。それはその楽曲を作った
クリエイターの思いを全て壊してしまうことと同じ意味である。
かといって、クリエイター側に合わせ過ぎてしまうのも問題で
今度は自分たちの個性がなくなってしまう。
つまりそのグループの存在価値が否定されてしまうのだ。
エビ中の凄さは、この2つのバランスの取り方が絶妙なところだ。
それを可能にしているのが6人の個性的なボーカルだ。
声量のある柏木ひなたと真山りか、音程を外さない安本彩花、
独特の高音を持つ星名美玲、柔らかい歌声の小林歌穂、
運動量とボーカルを両立できる中山莉子と、
それぞれ異なった特徴があるため、
その組み合わせ次第で多彩な楽曲に対応できるのだ。
もし、機会があれば彼女たちの歌をカラオケで歌ってみるといいだろう。
彼女たちの歌は非常に難しい。特に最近の曲になればなるほど難しい。
こんな曲を平然とこなしてしまうのがエビ中の凄さなのだ。
そして最後に紹介するのは「モーニング娘。‘20」だ。
「モー娘」そのものは誰もが知っているはずだ。
そして、メンバーが次々と変わりながら、
「モーニング娘。‘20」として
今でも続いていることもご存知ではないかと思う。
件の本文中にもモー娘。については少し触れられていた。
「モーニング娘。が実力をつけ始めると、ファンが離れて行った」と。
確かにそうかもしれない。
初期のモーニング娘。は間違いなく国民的アイドルであった。
その時期に比べると、現在のファンは少ないのかもしれない。
ただ、先ほどの文章には大きな間違いがある。
なぜなら、モーニング娘。’20は
「日本一女性ファン率が高い女性アイドル」
であるし、
「日本一パフォーマンスにうるさいファンを持つアイドル」だからだ。
コンサート会場に行くとまず驚くのは、女性率の高さだ。
歓声が他のアイドルの会場よりも「黄色い声」なのだ。
おそらく半々、いや女性の方が多く入っているのではないだろうか。
数多くのアイドルのライブを見た僕も、
このような会場はほとんど記憶にない。
それでは、なぜ女性に支持されるのだろうか?
それはおそらく彼女たちのパフォーマンスを見ればわかるだろう。
見とれてしまうくらい美しい。とにかく美しいのだ。
もし、よければ「愛の軍団」という曲のミュージックビデオを
見てもらいたい。
この曲での彼女たちのダンス、驚かないだろうか。
各々が動きをミリ単位で合わせている。
そしてその極限まで研ぎ澄まされた彼女たちの動きがシンクロして
何か一つの生命体として命を吹き込まれたかのように見える。
これは一種の芸術作品だ。
そして、それを構成している彼女たち一人一人も
完璧に美しい。その姿に多くの女性が心を打たれているのでは
ないだろうか。
全ての曲で、モーニング娘。’20はステージの上に
「モーニング娘。」という生命体を作り出している。
それは、パフォーマンスにこだわりのあるファンとスタッフに囲まれ、
日々のレッスンによって脈々と積み重ねた努力の賜物だ。
モーニング娘。’20はパフォーマンスにこだわっている。
モーニング娘。’20だけじゃない。
フィロのスも、エビ中も、いや、全てのアイドルもパフォーマンスにこだわ
っている。
見にきてくれるファンの人がいる限り、
最高のパフォーマンスを見せようと、
彼女たちは日々生きているのだ。
「日本のアイドルは、パフォーマンスなんて二の次だ」などという言説は、
彼女たちの人生も否定している。
そのことを何よりもわかってほしいのだ。
最後にNiziUのことにも少し触れておきたい。
僕も改めて、彼女たちのミュージックビデオを見てみた。
素直に上手いな、と思った。
どの子もスタイルが良くて、とても動きが華やかだ。
そして歌声も、ダンスも完璧なまでに鍛えられている。
これはパフォーマンスにうるさい日本のアイドルファンだって納得だ。
さらに、衣装やメイクが非常に可愛らしい。
「私もこうなりたい!」
若い中高生女子がそう思うのも無理がない。
完全に彼女たちの憧れになっているのだろうと思った。
ただ、それよりも感心したことがある。
それは彼女たちの互いをリスペクトする心だ。
彼女たちは、お互いライバルでありながらも
お互いを称え合い、励まし合い、共に進もうとしている。
そしてプロデューサーのPark氏も
ただ厳しい言葉を投げかけるだけでなく
彼女たちに寄り添いながら共に進んでいく。
とても優しくて、魅力的な人物だった。
そうだ。相手を一人の人間として尊敬し、
互いに寄り添いながら、高めながら進んでいく。
彼女たちはすでにそう示していたじゃないか。
NiziUを持ち上げるために日本のアイドルを貶す人たちは
そもそもNiziUのことも見ていなかったのではないだろうか。
彼女たちの姿をしっかりと見ていれば、
そんなことはするはずはないのである。
互いをリスペクトするために
互いを知り、お互いを称えながら切磋琢磨していく。
それが、批評の際、
いや、コミュニケーションの全てにおいて必要なのだろう。
そして僕も、彼女たちをリスペクトするために
今後も彼女たちのパフォーマンスに注目していきたい。
NiziUも、日本のアイドルも
きっと互いを高めながら、新しいエンタメの姿を見せてくれるはずだから。
□ライターズプロフィール
タカシクワハタ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
1975年東京都生まれ。
大学院の研究でA D H Dに出会い、自分がA D H Dであることに気づく。
特技はフェンシング。趣味はアイドルライブ鑑賞と野球・競馬観戦。
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