老舗料亭3代目が伝える 50までに覚えておきたい味

第25章 人は幸せになるために生まれてきた〜健康に食べるということ《老舗料亭3代目が伝える50までに覚えておきたい味》


2022/09/05/公開
記事:ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
健康に、自信がおありですか?
 
ここ数年、新型コロナウィルスが猛威をふるい、多くの方が罹患、人によっては命を失うほどの体験となったり、また人によっては症状もでないぐらいに軽症だったり、さまざまな体験を作り出してきました。その影響の大きさは人それぞれですが、私たちは一様に、命の尊さや健康の大切さといったものに気付かされたのではないでしょうか。
 
健康になりたくない人はいない。「健康第一」とも言うように、ともかく元気な心と体がなければ、私たちは何もできません。仕事をバリバリとこなすのも、楽しくみんなで遊ぶのも、体が健康であるからこそできるもの。しかし私たちの多くは、自らの健康に自信がないことが多い。胸をはって「私は健康です」と言い切れる人が、一体どのぐらいいるでしょう?
 
睡眠と栄養、そして運動。この三つが健康な体をつくるために必要なものだと言われます。これは今日初めて耳にするようなことではないと思います。どこかで聞いたことが誰しもにあると思いますし、またなんなら、人によってはこの中のいくつかをしっかりとやってます、とおっしゃるかもしれない。しかしどうでしょう。どのぐらいの方が実際にこれらを実践し、自らの健康を作り出しているのでしょう?
 
数字から見ると、決して多くはないことがわかります。
例えば、さまざまな生活習慣病ですが、数が増えていくことはあるけれども、減ることはありません。またがんや糖尿病が原因で亡くなる方も、増加傾向にあります。
また病気とまではいかなくても、何らかのアレルギー疾患を持つ人の割合も、平成17年ごろには3人に1人の割合だったのが、そこから7年後には2人に1人になっています。平均寿命は伸びている、と言いますが、これは単純に元気な人が増えたのではなく、医学の進歩で事故や急性の病気で亡くなる人が減ったり、また延命治療で命を長らえさせることができるようになったからで、決して私たちの健康レベルが上がったことを指し示すデータではありません。
 
このように数値だけをみても、私たち日本人はぜんぜん健康でもなく、元気でもなく、寿命も伸びてはいないのです。
 
人生を50年も生きてきていたら、そろそろなんらかの病気にかかることもありますし、なんならがんなど命に関わる大病を経験されるすることもあるでしょう。
女性に至っては、成人女性の7割以上ががんに罹患する、というデータもありますから、本当に多くの成人が病気を体験し、またそれをある意味”当たり前のこと””病気になっても仕方ない”と考える傾向があります。
 
しかし、私たちは、病気になるために生まれてきたわけではありません。
 
日々健康な体を作り、それを維持しながら、毎日の仕事や暮らしを楽しむために生きているはずです。時には不快な症状を抱えることがあっても、それを何かの気づきとし、自らの習慣を見直し改善するきっかけと捉え、また軌道を修正しながら心身を整え、健康を作っていく。そんな生き方が本来は必要であるにもかかわらず、私たちの多くは自らの健康を作ることをあまりにもさぼっている、もしくは他人任せにしているのではないかと思います。
 
人生も50年をすぎてきたら、そろそろ自らの健康を自らが作り出せるような食、食習慣というものを、生き方の基本として押さえておきたいものです。
 
 

健康になるための食事を学んだことがある人はほぼいない


自らを健康にする食事を、学んだことがある人は少ないでしょう。これらは学校など一般的な教育システムのなかでは語られることがありません。ざっくりと栄養や栄養バランス、みたいなことについては家庭科などでも学ぶかもしれませんが、栄養バランスと個人の健康は、どうやら密接に結びつくものではありません。
 
栄養や食べ方に気をつけていても、若くしてがんにかかる人もいるし、タバコも吸ってお酒も飲んで、好き勝手食べているにもかかわらず、90歳、100歳まで元気に長生きする人もいる。そういう人たちをみてしまうと、食や栄養が実は健康には関係ないんじゃないか、もしくはそんなに影響があるものではないんじゃないか、と思われ、そこに重きが置かれなくなってしまうことがあります。
 
しかし、人の体は100%、自分が食べたものでできています。自分が選んで食べるもので、自分の体が作られていくのです。子どものころは自分の親が食べ物や食べ方を選び、与えてくれていましたが、10代にもなってくると、自分で食べものを選び、食べ方の習慣もできあがってきます。つまり私たちは、誰からもきちんと学ぶことがないまま、自己流で健康になるための食べ方を取り入れたりしているだけ、なのです。これでは本当に健康になれる人など、いなくて当然ということになります。
 
 

一人一人の体質と体調の違いに気づこう


その反面、巷には健康な食の情報が溢れています。
一度テレビをつけると、健康番組が目白おし。テレビで「◯◯が体にいい!」とされると、その翌日にはスーパーからその食材が消えてなくなるということがしょっちゅう起こります。
またいわゆる健康食品やサプリメントの需要は伸びており、健康を意識している人たちが増加していることがわかります。
しかし、それで本気で健康になっている人を、あまり見かけたことがありません。
そういう人に限ってすぐに風邪をひいたり、体調不良を起こして寝込んだりします。年に何回も風邪と称して熱を出したり、菌やウィルスに罹患して、さまざまな症状を発症する人があとを立たないのです。
 
みんな、それぞれ、健康に気をつけている、つもりです。
しかし実際にそれで健康な人は増えていない。その理由は簡単で、なぜなら私たちはそれぞれに、持って生まれた体質があるからです。
またそれぞれの生活の中で培われた体調が異なるからです。
 
体質も体調も違う、年齢も性別も住む地域も違う私たちが、一様に同じ健康法を実践したとしても、当然ながらその効果には違いが生じます。そのことを知らずに自己判断だけで、自分に都合のよい健康法だけを取り入れても、それで本当に健康になれる人などいなくて当然です。もしそれで健康が手に入るのだとしたら、それはもしかして宝くじに当たるぐらいの確率なのかもしれません。
 
 

善きエネルギーの流れを作ろう


しかし、だからといって、諦めてしまっていいものでしょうか。
 
どうせ健康にはなれないのだから、適当に食べていい、適当に生きていいと、性悪説を選択することもできます。しかしそのような食べ方をしているのでは、間違いなく健康だけでなく、人生そのものが悪い方向に動いていってしまいます。体にいいことをしよう、気持ちよく生きるために努力をしよう、と性善説を選択し、ポジティブな気持ちで生きていこうとするからこそ、そこには気持ちのよい気の循環が起こり、その結果自分の健康と幸せだけでなく、自分と関わる人たち、周りの人たちにも善い影響が及びます。健康になる方法など誰も教えてくれないからどうでもいい、のではなく、自分にとって「正解」の情報はどこかに必ずあるものですから、それに出会う努力はしたいし、またそれで本当の健康を手に入れたい。そう考えて行動しつづけるからこそ、自分の本当に欲しいものは手に入るのです。
 
本当に大切なものは、すぐに、手軽には手に入りません。
努力したり、学んだり、代償を支払らったりするからこそ、本当の地肉となって学び取ることができる。
 
食は毎日のことで、誰もが生きるために必要な行為ですが、それによって本当の健康を手に入れるためには、とにかくしっかりと学び、自らで感じ、そして実践し続ける必要があります。
 
ローマは1日にしてならず、健康も1日にしてならず。
健康は自らの習慣の結果ですから、その習慣を変えて、かつ継続しない限り、望む結果は得られません。
付け焼き刃の、その場しのぎの健康法ではなんの効果も得られない理由が、ここにあります。
 
 

自らの体質を知ること


では一体、何を学び実践していけばいいのでしょう。
第一に知るべきことは、自分の持って生まれた体質です。痩せやすいのか太りやすいのか、内臓はどれが丈夫で、どれが弱いのか、どんな傾向があるのか、昨今ではお医者さんでアレルギー検査や遺伝子検査などをしてもらうこともできます。また自分で自分を観察し、その特徴を把握していくこともできます。
どちらにせよ、とにかく、私たちは自分の体がどう感じているのか、に、もっと気を配る必要があります。自らの体が感じ、経験していることに耳を傾け、精神を集中させ、体の声を聞きましょう。そうしていくと、自分の体の状態がどうなっているのか、また何を心地よいと感じ、また何を心地悪いと感じるのか、自らで感じ、わかるようになります。
 
私たちは病院に行って健康をチェックすることが多いです。
これが意味がない、とはいいませんが、あくまで健康診断は健康診断、私たちの体感を表しているものではなく、そこに頼り切ってしまうと自分の感覚が磨かれません。
大事なことは結局、自分自身がどう感じているか、です。
 
元気という体感があるのか、または具合悪いな、という感覚なのか。
自らで自らの体質を把握しておくこと、これをまずは意識して行っておきたい。
 
 

今の体調を把握すること〜健康になるための3つのステップ


持って生まれた体質について、なんらかの把握ができるようになったら、その上で今、自分の状態がどうなのか、を、自らが把握できるようになりましょう。
 
元気がいい、体調がいい、調子がいい、というのはどのような体感なのでしょう。
体は何を感じ、どんな状態で、その上でどんな心でいるのか。
それらを自分が判断できるようになりましょう。
 
本来人は、元気がある状態が「当たり前」な状態です。
その状態を基準とするからこそ、その基準に常に立ち返ろうとすることができます。その「健康」な状態を知らないのに、その状態を目指せるはずはありません。見たことも聞いたこともないものは、手に入ってもわかりません。ですからまずは、一度本気を振り絞り、少しストイックな食事制限や運動などをしてでも、本当に健康な状態というものを体験してみていただきたい。
 
そのためには一体どうしたらいいのでしょう。
 
健康法、食事法と言われるものは巷に多くありますが、もっともシンプルな基本をまずは押さえておきたい。それには3つのステップがあります。
 
ステップの1つめ、まずは、要らないものを入れない、です。
 
私たちの体は必要のないものが入ってくると、それを消化、吸収、代謝、排泄しなければならず、そこに膨大なエネルギーを使ってしまいます。そのため、体に必要ではないものは、一切体に入れないようにしてみる、という期間を、最低2週間はとりたいものです。
 
体にとって必要のないものの筆頭に、添加物や農薬などの化学物質があります。これらは目に見えませんから、案外たくさん摂っていても気づかないことが多い。添加物については平均的な日本人なら1ヶ月に4キロ〜13キロを食べているというデータがあり、また農薬について日本はその使用量が世界第2位、というデータもあります。つまり私たちは気づかないうちに、国際的に見ても多すぎるぐらいの化学物質を体内に日々取り込んでいるということになります。
 
これでは他にいくら「体にいいもの」を取り入れても、これだけ不要なものを日々取り込んでいるのですから、健康になどなれるはずがありません。
何を食べるか、の前に、何を食べないか、を意識することから、まずは初めてみてはいかがでしょう。
 
もちろん、食べないほうがいいものは他にもたくさんあります。日々知らずに食べているものが、少しずつ私たちの体を蝕んでいます。そのことにまずは気づき、体に必要でないものは入れない、を意識していきましょう。
 
 

出せる体を作る


それでも日々体には、いろいろなものが入ってきます。それらを避ける努力は必要ですが、現代社会で生きていく上で、完全にゼロにすることはほぼ、不可能です。
 
どんなにオーガニックの野菜を買っても、自然食品を取り入れても、1回外食したら終わり、給食を食べたら終わり、加工品を食べたら終わり、です。完全無欠のピュアな食材など、汚染のない無人島にでも行かない限り、手に入るものではありませんから、今の先進国、日本で生きていく限り、そのような食材を毎日手に入れることなど不可能なのです。
 
だからこそ、食べてもすぐに排出できるよう、排出を助けてくれる食べ物、食べ方を取り入れていきたい。そのために必要なのは野菜などの繊維質、及び腸内環境をよくしてくれる発酵食品の存在です。
 
排泄を助けるための野菜ですから、ここは思い切って農薬や化学肥料不使用の自然栽培、有機栽培の野菜にしたいところです。
また日本は実は発酵王国。味噌や醤油、麹、お酢など、豊かな発酵文化が生み出す天然の調味料がたくさんあります。これらを日常に取り入れることにより、毎日しっかり排出できる体の基礎を作りましょう。
 
しっかり出せる体ができたら、少々体に要らないものが入ってきても、それらを即座に出すことができるようになります。
そういう体のサイクルや仕組みができあがると、体のなかに善き循環が生まれますから、それが結果として病気になりにくい体、健康をキープできる体になります。
 
 

体にとって必要なのものを入れる


最後のステップでようやく、いわゆる「体にいいもの」を取り入れていきましょう。これは一般的にいう健康補助食材でななく、食べものとして、また生物として、生命力があるものを取り入れる、という意味になります。
 
どういうことかというと、確かにサプリメントなどの補助食材は、栄養素が効率的、効果的に配合されているかもしれません。しかしそれらは、生命力がありません。つまり、食材として、命としての力がまったくないのです。
 
私たちは生きていて、命をもっていますから、それを元気にするためには、命があるものを大切にいただくことが必要です。食べること、というのは、自然の命、自然のもつエネルギーを体に取り入れることです。ですから、いくら栄養バランスが考えられているとしても、サプリメントを取るだけでは本当の健康は手に入りません。
 
元気になりたければ、元気なものを食べましょう。
綺麗になりたければ、綺麗なものを食べましょう。
 
人は、食べたもののようになります。
食べ方は在り方だ、と、普段からもお伝えしていますが、健康になることも同じ。
 
健康になりたければ、健康な食材を食べましょう。
命を謳歌したければ、命溢れる食べ物を食べましょう。
 
健康になることは、実はとってもシンプルです。
しかしそれを難しくしてしまっているのは、ほかでもない、私たち自身です。
 
人の持つ可能性を信じて、そろそろ本気で、自分の健康は自分で作れるようになりましょう。
食べ物は、元気になるために食べるのであって、決して病気になるために食べるわけではありません。
 
刻一刻と残り少なくなっていく命、歳を取ることはあっても、若返ることはありません。いただいた命を全うするためにも、命の入れ物である体を大切にすること、そういう尊い食べ方を知っていることは、大人としての嗜みの一つなんじゃないかと思います。
 
 
《第26章につづく》
 
 

□ライターズプロフィール
ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)

READING LIFE編集部公認ライター、経営軍師、食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。一般社団法人食べるトレーニングキッズアカデミー協会の創始者。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。

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