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週刊READING LIFE vol.15

青いサインペンは仕事の女神《週刊READING LIFE vol.15「文具FANATIC!」》


記事:なつき(READING LIFE編集部 ライターズ倶楽部)
 

 
会社の先輩から教えてもらって魅力的で手放せなくなった文具がある。「ぺんてる」の青いサインペンだ。もう何度もリピートしている。青いボディの水性サインペン。一見普通の青いサインペン。これのどこに魅力が? 手放せないってどうして? と思ったことだろう。
 
仕事をする時にどんな筆記用具を使うだろうか。会社から支給されたシャープペンシルにボールペンの黒、赤、青それに蛍光ペンを数種類。これだけあれば大抵のことはできるだろう。私もそう思っていた。先輩から教えてもらった仕事内容をシャープペンシルやボールペンで書き留める。時に蛍光ペンで大事な部分に線を引く。しばらくはそれで事足りていた。
 
会社に置かれている文具の中に大中小様々な大きさの付箋があった。色は4色。ピンク、水色、黄緑、黄色だ。次第にこの付箋を使っての仕事が多くなっていった。ちょっと聞いたことのメモ。電話を受けたときのメモと伝達。書類をまとめる時の名札代わり。物事の順番の整理など。紙に書くよりもコンパクトだし、裏に糊がついているのでどこにでもペタペタ貼れる。色がついている付箋なのでとても目立つ。忘れ物防止にも一役買ってくれる。
 
そんな付箋だったが、一つ困った点があった。会社から支給されている色付きの付箋は線の細いボールペンだと文字が埋没するのだ。たくさん書きたいときや、伝言などのメモにはボールペンでもいい。ところが、目立たせたい時にはボールペンでは大きく書いても文字が読み取りにくいのだ。そういえば会社から支給されている文具がもう一つあった。「ぺんてる」の赤いサインペンだ。このサインペンで文字を書いてみる。適度に太く書けて付箋の色にも負けない。これはいい。そこでサインペンが通常使い筆記具の色の上位に躍り出た。このサインペンは仕事のチェックなどにもいい。適度に目立つのでチェックしたことがわかりやすい。
 
同僚の中に、同じボールペンを使っているのに付箋に負けない文字を書いている男性がいた。その男性の文字は常に力強く常にはっきりしていた。同じ付箋に同じボールペン。ではなぜ私の文字は読み取りにくく埋もれた感じになるのだろう。その男性が文字を書くときに見て気づいたこと。とても筆圧が強いのだ。なるほど、力強く見える文字はそのためだったのか。そういえば、3枚くらいある複写式の用紙に文字を書く時、私の文字は3枚目になるとかなり薄い。ひどい時には読み取れないことさえある。それに比べてその男性は1枚目と同じくらいのしっかりした文字が読み取れる。
 
思い当たる節があった。私は小さいころから筆圧が弱かった。小学生で使用していた鉛筆は2B。2Bはそんなに力を込めて書かなくても黒くはっきりした文字になる。むしろ筆圧強く書くと濃くなりすぎて、書いた傍から手に鉛筆の粉がついて真っ黒になる。小学6年まで私は2Bの鉛筆を愛用していた。筆圧強く書かない癖がついたのだろう。中学に入り、HBのシャープペンシルが主流になった時文字が薄すぎてとても困った記憶がある。そこで筆圧強く書く練習をするのではなく、シャープペンシルの芯の方を2Bに変えてしまったのだ。このまま社会人になり会社勤めを始めた。会社でも2Bのシャープペンシルの芯があったので事なきを得ていた。
 
会社勤めを始めて数年経った。今更になって付箋の問題で筆圧の弱さに向き合うことになるとは。筆圧強くするべく練習した。ところが、手首が痛くなり続かなかった。手首を強化するべく手首のストレッチもした。それでも大人になってから筆圧を上げることは中々できなかった。
 
そんな中での赤いサインペン。筆圧が弱くても文字がはっきり見えるサインペンは救世主だった。そんな大げさなと思うかも知れない。私も実はサインペンを侮っていた。サインペンは普通の紙に書くとにじんだりもする。小さいスペースには線がつぶれてしまって書きづらいし読めない。ところが、付箋とはとても相性がいいのだ。文字を滑らかに書いてもはっきり見える、適度に太字なので付箋の色と相まって目立つ表示ができる。
 
ん? ちょっと待って。あなた、冒頭で青いサインペンって言ってなかった? それを赤いサインペンで救世主とまで言っちゃっていいの? と思われたのではないだろうか。赤いサインペンに黄色い付箋、黄緑の付箋、水色の付箋はとても目立っていい。でもピンクの付箋にはちょっと弱くなる。私はピンク色の付箋が好きなので愛用していた。書類にピンクの付箋、文章チェックにもピンクの付箋、相手に物事を伝えたいときもピンクの付箋。そこらじゅうがピンクの付箋だらけだ。このサインペンには黒もある。黒も愛用していたが、ピンクの付箋に何となく色が重くて敬遠していた。
 
そんな時にたまたま目にした、青いサインペンの色。真っ青ではなく紺に近い青色だった。先輩からのメモにその色が使われていた。これだ!! 私はすぐに先輩に聞きに行った。「このサインペンはどこの物ですか?」「これ」見せてくれたペンに震えが起きた。「ぺんてる」のサインペンだった。こんな近いところにあなたはいたのね! 赤と黒があることは知っていたけど青があるのを知らなかった。青があると思ってもみなかった。そういえば文房具屋に行って探すこともしていなかった。会社で使うものは会社支給のものから使えばいいと思っていたのかもしれない。でも先輩は自分で文具屋に行き、使いやすいものを見つけて使っていた。自分で仕事に合ったものを見つけていた。
 
帰り道、文具屋を覗く。青いサインペンが売っていた。試し書き用の紙に書いてみる。藍色の線が滑らかに伸びる。次の日会社で早速ピンクの付箋に文字を書く。うっとりするほどベストな組み合わせだ。続けて黄色、黄緑、水色の付箋に文字を書いてみる。似た色の水色の付箋にも負けない色だった。これが真っ青だったら水色の付箋に負けていたかもしれない。藍色だったことでどの付箋にも負けない文字が書けた。そして、青が加わったことで色分けのバラエティーも増え、作業を仕分けるのにも役立っている。
 
これをきっかけに、会社で使うものも自分が嬉しくなる文具にしたいという思いが芽生えた。青いサインペン一本でこんなにも作業が楽しくなるとは思ってもみなかった。そこでシャープペンシルも使いやすいものに変えてみた。文字がとても滑らかに書ける。文字を書くことが楽しくなるシャープペンシルだ。今まで気づかなかったが同僚も数人このシャープペンシルを使っていた。会社の昼休みに近くの文具屋で見つけた、書類たて。会社でも同じ型が使われていたが色は黒オンリー。そのお店ではカラフルなラインナップ。うわ、これほしいと思う色があった。今までの私だったら高いし、怒られても嫌だし、と何もしない傍から無理だよねと諦めていた。会社に私物は不可だ。書類たては私物に入るだろうしと諦めていた。でも、仕事に使える文具。お飾りでなく実用すればいいのでは、と肯定的に見られるようになった。
 
青いサインペン一本を使うようになったおかげで仕事が楽しくなった。赤いサインペンが救世主なら、青いサインペンは女神である。青いサインペンは更に手放せないものになった。

 
 

ライタープロフィール
なつき(READING LIFE編集部 ライターズ倶楽部)
東京都在住。2月から天狼院のライティング・ゼミに通い始める。更にプロフェッショナル・ゼミを経てライターズ倶楽部参加。書いた記事への「元気になった」「興味を持った」という声が嬉しくて書き続けている。

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2019-01-15 | Posted in 週刊READING LIFE vol.15

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