「横浜中華街の中の人」がこっそり通う、とっておきの店めぐり!

【第3回「横浜中華街の中の人」がこっそり通う、とっておきの店めぐり!】 お客様と共に歩む店が生み出す「ふるさとの味、懐かしい味」~同發(どうはつ)~《天狼院書店 湘南ローカル企画》


2022/08/01/公開
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 

「今回同發さんを推薦した理由のひとつは、昔ながらのしっかりとした美味しい料理を出してくださるからです。中華街の料理屋さんでもそれぞれのお店の特徴があって、同發さんはあったかく和気あいあい、アットホームな雰囲気です。
 
実は僕の結婚式は同發さんで挙げました。
中華街の人たちの結婚式は大きなお店ですることが多いです。みんなおいでってどんどん呼ぶから当日卓が足りなくて慌てて出したり、お開きが22時だったり、とにかくおおらかにわいわい祝います。あと同發さんは料理が美味しいから、「〇〇さんの結婚式は同發だよ」って聞くと子どもながらにすごく嬉しかったし得した気分でしたね。僕の結婚式のときにもオリジナルメニューを組んでいただきましたが、その料理の1つ1つに意味がある。そんな心遣いをしてもらえます。
 
中華街の料理屋さんは地域や世代のつながりを得られる場所ですね。華僑の同郷会にとって、世代を超えたハートフルな交流の場があることはとても重要なんです」

— 「横浜中華街の中の人」・順強さん推薦文

 
 

知る人ぞ知る、絶品すぎる広東料理のメニュー!


これは五目入り巻揚げ(まきあげ)といいます。広東の伝統的な料理です。
 

撮影:山中菜摘

 
海老、タケノコ、チャーシュー、しいたけなどを、豚の網脂(あみあぶら:内蔵の周りについている、網状の脂)で巻いて揚げたものです。表面がカリっとしていてボリュームがあって、おつまみにぴったりですね。焼き塩をつけて召し上がってください。
 

撮影:山中菜摘

 
作るのに手間がかかるので、今は巻揚げを出すお店はずいぶん少なくなったように思います。地元の人が頼むような料理なんですね。海苔巻きと同じで「端っこが一番おいしいね」なんていう人もいらっしゃいます。今は巻揚げがどんな料理かを知っている人じゃないと、注文することはないのかもしれません。
 
香港あたりでは当たり前にある、店頭にチャーシューや、丸ごと一羽の家鴨(あひる)を吊るして販売しているお店が少なくなっていますが、同發では創業より続けてきております。
 
結婚式の話がありましたが、会席ではお客様と料理の打ち合わせをしてメニューを決めることもあります。料理人の方でオリジナルを考えることもありますが、急遽その日にある材料で作ることもあります。
 
 

商売繁盛の秘訣は「ふるさとの味、おふくろの味」


創業は明治時代です。
父方の曾祖父が食品雑貨を営んだのが始まりで、そこからレストランになりました。2005年に母が亡くなってからは自分が社長をしています。
 
父は大陸にもおりましたが、そこから戻って、それまでの本館に加えて新館・別館(取材時休業中)と徐々に事業を広げていきました。
 
本館で出している料理については特に創業時からのものが多いですね。新館はイートインと売店になります。今は大人数での会食がなかなかできないので別館だけ休業中ですが、本来ですと点心や季節の料理が充実しています。
 

撮影:山中菜摘

 
創業時の料理人は、その当時横浜にいた人と、香港から呼び寄せた人とで構成されていました。父が滞在していた関係で、香港から来た料理人が多かったかもしれません。
 
創業のころからの基本的な料理は広東料理がベースで、今でもメニューに残っています。
数年前に僕の祖先の出身地の広東省順徳県(現在の中華人民共和国広東省順徳区)に行きまして、そこで宴会があったんですが、いただいた料理がとても懐かしい味がしました。ふるさとの味でしょうかね。そんな感覚が引き継がれているような気がします。
 
元々順徳県は水が良く、料理が美味しいと言われていた場所なんです。
南の方に位置しているので温暖で、海も山もあって食材も豊富。素材の味、食材を生かす料理です。今は中国のいろいろな地方からの料理が日本に入ってきていますけど、広東料理は日本人には親しみやすい。なじみのある味だと思いますよ。
 
料理は時代によって新しいものは取り入れますが、基本的なことは変えずに、ブレないようにしています。新しい食材や料理法などは取り入れていますが、基本の軸さえちゃんとあれば、そこから応用して枝葉が広がりますからね。
 
本来はお店に食べに来ていただきたいのですが、テイクアウトもできます。料理については日持ちがしないものですから、お買い上げになったその日に召し上がるのが一番美味しいのかなと思います。オンラインでの購入もとても増えていますので、インターネットを活用した外販にも力を入れています。
 
 

中華街に映画館があった!


撮影:河瀬佳代子

 
同發新館は、昭和39年までは新光映画劇場という映画館でした。
昭和30年代当時は映画産業が盛んで、『鞍馬天狗』とか日活映画などの日本映画が上映されていたようです。中華街の長老たちが座布団を持って、こっそり映画館に忍び込んで観ていたという話を聞いたことがあります。
 

撮影:河瀬佳代子

 
新館ホールの、天井が高く柱が無い造りは、映画をスクリーンへ映写していたからなんですよね。
こういう雰囲気の建物って今はもう見かけないですね。
 
 

「自分たちの街」から「世界の中華街」へ


横浜中華街は以前は普通に人が暮らす街でしたが、今は発展して全国区になりました。
世界的にも有名になって、世界中から人が来ていましたが、今はコロナ禍なのでちょっと小休止といったところでしょうか。
 
例えば今は市場通りで中華料理屋になっているところでも、昔は肉屋をやっていて「コマ切れ買ってきて」なんて言われておつかいにいったものです。パン屋さん・八百屋さん・お肉屋さん・魚屋さんも普通にあったし、映画館や釣り堀までありました。それが料理屋さんばかりになってしまったのは、1980年代くらいからでしょうか。昔は生活の街だったんですよね。
 
時代と共にここは「自分たちの街」ではなくなって「横浜の街」「みなさんの街」になりました。れっきとした観光地になりましたし、この街に住む人数自体が減っています。
 
そして、今ここに住んでいる人たち自身も感覚が変わってきているのではないかという気がします。高層マンションなどもできましたからね。その意味で街自体の新陳代謝はあると思っています。
 
 

お客様と共に歩み続けて


うちの包装紙にはいろいろな模様が入っています。当時新館にいたスタッフと先代がいろいろ試行錯誤しながら、候補として出てきたものを取り入れてこのデザインになりました。
 

撮影:河瀬佳代子

 
「同發」の店名の由来ですが、「お客様と共にあり、共に発展していきたい」になります。
http://www.douhatsu.co.jp/yurai.html
 
同發のロゴの意味は「山水至福を願う」です。
野山も人々も栄えてほしい、みんなが幸福感を味わってほしいという願いとともに、今後も店を続けていきたいと思っています。
 

撮影:山中菜摘

 
 
温かなおもてなしが接客や料理からも感じられる。それが同發の最大の魅力です。
しっかりとした味を守り続けて、それがお客さまからも支持されているのが、1つ1つの料理からきちんと伝わってきました。
「いつでも変わらずお客様をお迎えしたい」、おおらかな雰囲気の中で食事を楽しみ、満足できる時間を同發は約束してくれることでしょう。
 
 
 
 
お話:周 慶錦 氏(中華菜館 同發 代表取締役社長)
取材・文:河瀬佳代子、撮影:山中菜摘・河瀬佳代子

中華菜館 同發本館
〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町148番地
TEL:045-681-7273
FAX:045-681-1056
営業時間[平日]:11:00~21:30(L.O. 20:30) ※15:00~17:00 休憩
[土日]:11:00~21:30(L.O. 20:30)
定休日:無休
※営業時間及び定休日は、状況により急遽変更することがあります。http://www.douhatsu.co.jp/

「中華街の中の人」・順強さんのプロフィール
1964年横浜生まれ。華僑4世。
曽祖父母が広東省より来日(来日年は不明)。 祖母 1902年生まれ。両親ともに華僑。
幼稚園~小学校を橫濱中華學院に通う。早稲田大学卒業後就職ののち華僑3世と結婚、横浜に暮らす。
酒を愛し、知己を愛し、横浜を愛する気持ちは誰にも負けてない! ホスピタリティ溢れる熱い男である。

□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

東京都豊島区出身。天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて「魂の生産者に訊く!」http://tenro-in.com/manufacturer_soul
、「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」 https://tenro-in.com/category/yokohana-chuka/ 連載中。他に企業HP、シンポジウム等実績。

□カメラマンプロフィール
山中菜摘(やまなか なつみ)
神奈川県横浜市生まれ。フリーカメラマン。天狼院書店スタッフとして様々なカメラマンに師事。現在は天狼院フォト部マネージャーとして活動しつつ、フリーカメラマンとしても活躍中。


この記事は、人生を変える天狼院「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」をご受講の方が書きました。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


関連記事