メディアグランプリ

肉から人へマインドシフト


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:溝口直己(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「バーベキューとは文化である!」
バーベキュー協会の会長である下城民夫は、初級バーベキュー検定の講座が始まると、最初に口にした。
「文化とはお箸の持ち方であり、お辞儀の仕方である。それは親から自分へ、そして自分から子どもへ伝えていくものである。その親から子どもへ伝えていくことにバーベキューも含まれるのだ」さらに続けて言った。
 
私は食べることが好きすぎて、ついに食べることを仕事にしたいと考えた。
自然の中へ行くことも大好きで、かけ合わせるとバーベキューにたどり着いた。
「バーベキューを本格的に学びたい!」と思いインターネットで調べてみると、日本バーベキュー協会という団体を見つけた。
ちょうどいいタイミングで初級のバーベキュー検定が京都の福知山で行われるということで参加した。
そこで今までのバーベキューの概念と、本来のバーベキューの概念の違いに度肝を抜かれるとは想像もしていなかった。
 
「そして文化とは言葉と型、その2つで伝えられるものである」
下城は力を入れて言った。
文化とは人によって捉え方や表し方は様々だが、これほどすっと心に入ってくる表現は初めてだった。
私もお箸の持ち方は両親に習った。
記憶も定かではない幼少期の頃に教えてもらったと思うが、今こうしてしっかりとした形でお箸を使ってご飯を食べている。
それは両親が何ヶ月も何ヶ月もかけてお箸を持ち方を言葉で伝えてくれたのと、お箸を持つ型を教えてくれたのだと思う。
 
その親から子どもに伝えていくバーベキューが、日本はアメリカやオーストラリア、ドイツなどの欧米に比べて大きく遅れているそうだ。
このことは私にとって興味深いものであり、また本来のバーベキューを学ぶべきだと強く思わせた。
 
下城は日本のバーベキューを「Just meal(単なる食事)」、海外のバーベキューを「Just play(遊び)、Just party(本来のパーティー)」という表現をした。
 
「現在の日本のバーベキューは目の前にグリルを置いて焼いているのをみんなで囲み、焼けたらその場ですぐに食べるというスタイルだ。それでは単なる外での食事になり、焼いている途中に遊びに行ったり会話を楽しむことが難しくなる。結果ゆったりとした時間が取れずに、心の余裕がないバーベキューになってしまっている。」
 
私は今までのバーベキューを思い出していた。
「確かにそうだ。私たちはバーベキューをしているときに肉がいつ焼けるかが頭の中心にあって、会話を深く楽しんだりしていなかった。」
下城は続ける。
 
「海外の本来のバーベキューは、様々な食材を使ってゆったりとした時間の中で作る奥深い料理であり、また人と人を繋げるコニュニケーションの一種になっている。その人を繋げるバーベキューこそが日本と海外の大きな違いになっているのである。そのためには……」
 
息を飲んで次の言葉を待つ。
 
「肉中心のマインドから人中心のマインドへ変えていく」
その言葉を聞いた時、私は感動し心の中が震えた。
 
どれだけ肉から人の目を離すことができるかが鍵なんだと直感的に思った。
自然の中で、バーベキューをする。それだけで人は解放的になる。
一種のアーティストになったかのように心が解放されている中で、お肉だけに気持ちが行っているのはとてももったいないことだと思った。
 
欧米では公園やアパートのお庭、大学の敷地内などあらゆるところにバーベキューができるガスグリルが備え付けられている。
そして食事をするテーブルと外に調理や洗い物ができるキッチンまである。
それは「調理する場所と食べる場所は別である」ということを意味している。
 
お肉や野菜をグリルで焼くとその場で食べずに外にあるキッチンに持っていき、みんなでシェアできるように包丁で切り分ける。
そしてテーブルへと持って行きみんなで一緒に座って会話を楽しみながら食べていく。
そこに日本との決定的な違いがあり、人と人の本当の意味での繋がりに差が出てしまっているように思う。
 
質問が一つ飛んでくる。
「みなさんはバーベキューで炭に火を付けている時に前菜を食べたことがあるだろうか?」
私は人生で一度もなかったし、バーベキューで前菜など考えもしなかった。
 
バーベキュー検定で目の前に、イチジクの乗ったディップとマリネが出て来た時は驚き、これから始まるバーベキューに心躍らせた。
それはとにかく来てくれた人たちを楽しませようという、最大のおもてなしであった。
ステーキを焼き際に火を調整する必要があるのだが、それをかわいい水鉄砲でやったりとおもてなしはバーベキューのいろんな場面で出て来てた。
 
全ては人とのコミュニケーションを楽しむため。それをバーベキューの細部にまで張り巡らせてあった。
 
バーベキューの最後には、残り少なくなった炭で小さな火を作りマシュマロを焼きながら今日の思い出を語る。
「人は大きな火の見ると離れていき、小さな火を見ると近づきたくなる習性がある。」
その特性を生かし人を集めバーベキューの最後のコミュニケーションの場を作る。
ここまで考えられたアクティビティに私は出会ったことがない。
私は自分の子どもに本来のバーベキューを伝え、孫の孫まで受け継いで欲しいと思った。
 
そして同時にその心が文化になるのだなあと感じた。
みなさんも人と人を繋げるバーベキューを学まない手はないだろう。
 
 
 
 
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2019-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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