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ショパンの世界に近付ける、究極の贅沢を是非!


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記事:春野そら(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「どんなに上手なピアニストでも、ショパンが奏でた〝当時の〟音楽を再現するのは、なかなか難しい。不可能と言ってもいいかもしれない」
とある音楽大学での講演会、講師であるピアニストのぶっちゃけ発言に、私は驚いた。
理由は、現代のピアノと当時のピアノが、全く違うからだという。
そりゃそうかも知れないけど……。新旧二台のピアノを目の前にして、私は首を傾げた。
「確かに、古いピアノのほうが小さめだけど、外観はほぼ同じ。そんなに違うものなの?」
音色を聴くまで、私は信じられなかった。
 
この、当時のピアノのことを、〝ピリオドピアノ〟という。
ピリオドとは英語で〝当時の〟の意味。つまり、ショパンの曲を、ショパンが弾いていた当時のピアノを使って、演奏しようというわけだ。
日本では、歴史的ピアノと訳されることもある。
 
「あれっ? ショパンって、いつ頃の人だっけ?」と確認したくなる。
ショパンは1810年、ポーランド生まれ。ワルシャワ音楽院に学び、その後、フランスのパリに居住。1849年に亡くなっている。
日本で言うなら、江戸時代後期。イギリス船が度々、浦賀にやってきて、交易を迫ってきた頃だ。
でもまぁ、江戸時代の楽器なら、なんとか音も鳴りそうな気がする。
 
実際に、音色を聞き比べてみた。
ピリオドピアノはまず、音が小さい。それから、音色が均一でないというか、ちょっと不安定というか……。ピリオドピアノと現代のモダンピアノの違いは、レコードとCDの違いに似ている気がする。
なーんて、素人の感想ではとても伝わらない気がするので、講師の説明を引用しよう。
「モダンピアノは、音が鳴り出すのに時間がかかり、なかなか消えない。〝歌うような音楽〟と表現されます。一方のピリオドピアノは、音がすぐに鳴り出して、すぐに消える。〝喋っているような音楽〟と表現されます」
そう説明されて、改めて聞き比べてみると、なんとなくそうかな、と思えてくる。
と、私がいくら能書きを並べたところで、「聴いてみないことには、わからないよ」と不満が聞こえてきそうだ。
 
実は、ネット上で、ピリオドピアノの演奏を視聴できるので、ぜひ紹介したい。
 
だがその前に、ショパン国際ピアノコンクールをご存知だろうか?
五年に一度、ポーランドのワルシャワで開催されるコンクールで、中村紘子さんや小山実雅恵さんなど、日本人ピアニストも多数、入賞している。
このコンクールを主催している国立ショパン研究所が、昨年初めて、ピリオドピアノによるコンクールを開催した。
その記念すべき第一回『ショパン国際ピリオド楽器コンクール』の、第二位に輝いたのは、なんと日本人。岩手県盛岡市出身の30歳、川口成彦さんだ。
 
『Chopin Institute YouTube』でググると、ショパンコンクールでの演奏の映像が、多数アップされている。ピリオド楽器コンクール最終審査で、川口さんが協奏曲を弾いた映像もある。
タイトルは『Naruhiko Kawaguchi - Concerto in F minor, Op.21(final)』
是非、聴いてみて欲しい。
 
そうして、このコンクールのすごいところは、映像を観ればわかるのだが、オーケストラの楽器も全て〝ピリオド〟なのだ。
言うまでもないと思うが、ピリオド楽器はかなり貴重だ。
まず、現存する台数が少ない。復元しようにも、消耗部品の確保が難しい。オリジナルの状態を損なわないように、復元できる技術者も少ない。調律師も少ない。
そんなピリオド楽器だけのオーケストラなんて、まったく、贅沢にも程がある。
 
映像中の、ピリオドピアノの内部を見て欲しい。金属フレームが入っておらず、弦もまっすぐに張られている様子がわかるだろうか?
モダンピアノは、内部に金属フレームが入っていて、弦が斜めに張られている。これは、なるべく大きな音を出すためだ。
ショパンの頃は、サロンと呼ばれる、貴族たちの屋敷の広間で演奏していたので、それほど大きな音を出す必要がなかった。
ところが、大ホールで演奏されるようになると、大きな音が出せるように、ピアノも改造されていったという。
ピアノの改造に伴い、演奏法も変わってきた。ピリオドピアノは手の重さで弾くのだが、モダンピアノの場合は、より大きな音を出せるよう、身体を使って弾くようになったという。
 
さて、音色の違いを実感して頂けただろうか?
演奏家によると『ピリオドピアノには、まるで3人のシンガーがいるみたい』なのだそうだ。
高音域はソプラノのようなカラフルな音、中音域は歌うようなテノール、低音域は鋭い音になっている。モダンピアノのように、旋律とハーモニーを弾き別ける必要がないという。
 
そうしてショパンは、この〝3人のシンガーがいる〟ピリオドピアノで演奏されることを想定して、作曲したのだ。
だから是非、ピリオドピアノの世界を、体感してみてほしい。ショパンが描こうとした世界に、より近付けるはずである。
 
 
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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