メディアグランプリ

ココ・シャネルとマリリン・モンローに学ぶ未来の切り開き方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:井村ゆうこ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「香水をつけない女性に未来はない」
 
この言葉をご存じだろうか。フランスが生んだ、20世紀を代表するファッションデザイナーのひとり、ココ・シャネルが残した名言だ。
 
いい年の女としては恥ずかしいのだが、私は40年を超える人生で、一度も香水をつけたことがない。ただの一度も。理由はいくつかあるのだが、いちばんの大きな理由は「香水の強い香りより、シャンプーや石鹸のほのかな香りを漂わせていたい」というものだ。もう少し正確に言うと「香水なんかでごまかさない! ありのままの自分で勝負してやる!!」という、固い決意表明なのだ。
 
ところが、である。そんなガチガチのファイティングポーズをとる私に、強烈なパンチを放ってきた人物がいた。それが、ココ・シャネルであり、「香水をつけない女性に未来はない」という、冒頭の言葉だ。
この言葉を目にしたときの私は、大いに迷っていた。深く悩んでいた。
夫の異動に伴い、変化した生活スタイルが生む、消せない負担としわ寄せと苛立ち。
いよいよ待ったなしになってきた、住宅購入問題と娘の進学問題と親の介護問題。
ぼんやりとして、はっきりと決められない、自分の仕事の方向性。
 
シャネルのパンチは、そんな私の脳天を一撃した。
未来はない? 今まで一度も香水をつけたことがない私には、未来はないの? じゃあ、香水をつけたら、私にも未来はやってくるっていうこと……。
 
ココ・シャネル、本名ガブリエル・ボヌール・シャネルの人生は、まさに波乱万丈だ。
母親が病死したあと、孤児院や修道院に預けられ、そこで裁縫を教えられる。最初の夢は歌手になることであったが、オーディションにことごとく落選。夢破れた彼女は、当時交際していた男性の力を借りて、デザイナーの道へ。初めてのブティックは、1910年にパリのカンボン通りにオープンした、帽子専門店だった。そして、その11年後の1921年、かの有名な香水、「シャネルの5番」が誕生する。
 
時代を超えて、シャネルの主力商品のひとつとなり、ココ・シャネルの生涯を助けた、シャネルの5番。
この香水を語る上で、忘れてはならない女性が、もうひとりいる。それが、ハリウッドスターのマリリン・モンローだ。
 
「何を身につけて眠っているの?」と問われ、「シャネルの5番をつけて眠っているわ」と答えたエピソードは、マリリン・モンローの出演した映画より、有名かもしれない。
 
ノーマ・ジーンという本名を持つ、マリリン・モンローの人生もまた、波乱に満ちていた。
里子に出され、孤児院で暮らした幼少時代。働いていた航空機部品工場を訪れたカメラマンに見いだされ、モデルの道へ。モデルから女優への転身を夢みて、ハリウッドでもがく下積み時代。トップスターへと昇りつめるも、スキャンダルが絶えず、謎に包まれた死で幕を閉じた、36年の短い生涯。
 
ココ・シャネルとマリリン・モンロー。
同じ時代を生きた、このふたりのスターには、大きな共通点がある。
それは「自らの力で、未来を切り開いていった」という点だ。
 
ココ・シャネルがシャネルの5番を生み出し、マリリン・モンローがこの世に生を受けた1920年代は、ふたつの大戦に挟まれた激動の時代だ。また、戦いに兵士が駆り出されたことによって生じた、人手不足を補う形で、女性の社会進出が促された時代でもある。しかし、それはあくまでも必要とされる「労働力」としての働き方であり、女性が自分の希望した職業に就くということは、現代の何倍も、何十倍も難しかったに違いない。
そんな時代の要請に逆らって、自分の夢を実現させていった、ココ・シャネルとマリリン・モンロー。
なぜ彼女たちは、自らの力で、未来を切り開いていくことができたのだろうか。

ふたりの一生を並べてみると、そこには必ず男性の存在が。恋多き女であったふたりは、ときに男性の権力や財力に助けられ、ときに男性の愛や欲望を利用した。そうやってのし上がっていくことに、眉をひそめたひとも、当時は数多く存在したはずだ。

「あんなに香水をプンプンさせて、男を惑わせようとしている」
そう口にしたひとも、いたのではないだろうか。

しかし、ふたりの生きてきた道を眺めると、香水は男を虜にするための道具ではなく、彼女たちが自分自身にかけた、おまじないのように、私は感じる。

「私は、私のなりたい、私になる」

シャネルの5番を身につけながら、その立ちのぼる香りで不安や恐怖を消し去り、自分自身を強く信じ、未来を切り開いていったふたりの姿が、目に浮かびあがってくる。
ガブリエル・ボヌール・シャネルからココ・シャネルへ。ノーマ・ジーンからマリリン・モンローへ。

未来を切り開くために必要なのは、他人を思い通りに動かそうとする魔法ではなく、自分自身を強く信じるこころだ、ということを、ココ・シャネルとマリリン・モンローは教えてくれた。

「ねえ、そんなにいっぱい香水つけて、若い女の子の気でも引こうとしてるの?」

毎朝、出勤前に入念に香水をつけていく夫に、私は冗談交じり半分、疑いの目半分で、何度かそう聞いたことがある。まともに返事をしない夫に、勝手に腹を立てていたが、シャネルの5番の意味を知った今、自分の無理解を、私は夫に謝りたい。
スーツという戦闘服に身を包んだ夫は、最後に香水というおまじないをかけて、戦場に向かっているのだ。「俺は、俺のなりたい、俺になる」と。

もし今、自分の未来に不安や恐怖を感じているのなら、自分自身を強く信じてみてはどうだろうか。それは、簡単なことではないかもしれない。そんなときは、香水をつけながら、こう口にしてみよう。

「私は、私のなりたい、私になる」

今日の目的地は決まった。
自分を信じ、自らの未来を切り開くため、人生で初めての香水を買いにいこう。
まずはシャネルの5番の香りを……胸いっぱい吸い込んでみたい。
 
 
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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