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話し下手でも、人に愛される秘訣。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:香月祐美(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
「普段大人しい娘が、塾は楽しいって言ってました」
 
「先生は何でも分かりやすく教えてくれる、スーパー先生だって言ってましたよ」
 
私が働いている塾に通う子の保護者の方からいただいた言葉です。
昼間は学校で勉強し、更に塾でも勉強している子たちです。
 
「え、そんなこと言ってくれてたんですね」
正直、毎日たくさん勉強して大変だなぁと思っていたので、思わず出た言葉は、嬉しいよりも先に驚きでした。
 
「子どもたちに愛されてるねぇ。居心地がいいんじゃない?」
知り合いにそう言われました。
 
「居心地……どうなんだろう」
のんびりしていられるほど課題は少なくありません。
 
「今日こんなにいっぱい課題ある……」
と言いながら、90分の学習時間中、休憩も入れずに問題を解き続けている子も見かけます。もちろん、疲れてしまう人もいるので、休憩を入れるかどうかは本人に確認しながらですが。
だから、「楽しい」イコール「楽」ではないのだと思います。
 
とはいえ、子どもが「塾が楽しい」と思いながら通えると、親も安心だと思います。
普通は、名の通った塾に通うことが保護者の安心材料の一つになるのですが、私の所はそうではありません。
私が働いている塾は、全国展開はしていますが、東京には数えるほどしかないからです。
塾生が友達との会話で「どこの塾行ってる?」と聞かれた時に、ここの名前を言っても、たいてい「それどこなの?」と返されるそうです。
 
塾生たちが前向きに塾に来てくれているんだなぁと、分かることが一つあります。
それは、辞めるタイミングです。
塾を辞めるタイミングといえば、受験が終わり学校を卒業する時です。
塾を辞める、というより塾も卒業するという言葉がしっくりします。
 
私の塾では、それ以外のタイミングで塾を辞める人は、年に一人いるかいないかです。
保護者の満足度だけでなく、子どもたちにも好かれていないとそうはなりません。
 
塾に来る子の気持ちが、「塾に行かなきゃいけない」ではなく「塾? 普通かな」でもなく。
勉強は面倒くさい、と言い始める年頃の子たちが「塾が楽しい」と言いながらやって来るためには、コツがあります。
 
ユーモアのある話で盛り上げることができるわけでもない、むしろ人見知りだと思って生きてきた私にできた、人に好かれる魅力的な場所を作るコツです。
 
私は普段、塾生に勉強を教えるというより、たくさん「お願い」をします。
いつまでも教えてくれる人がいないと何もできない人、ではなく自分の力で問題を解決できるような人に育ってほしくて、「お願い」をするのです。
 
勉強に関してだけではありません。
身の回りの小さなことから何でも「お願い」します。
 
例えば、帰る前に片付けをするとき。
「課題を入れるファイル、片付けて元の場所に戻せる?」
「使った物は、元に戻すことはできる?」
と、「お願い」します。
 
片付けなんて、やって当たり前だと思われるでしょう。
でも、自分にとっての当たり前は、相手にとっての当たり前ではないと考えています。
私と子ども達は、二十歳以上、年が離れているので尚更です。
 
当たり前じゃないと思っているので、片付けてくれたら「ありがとね!」と声をかけます。
何度か繰り返しているうちに、自然とやってくれるようになります。
 
片付けなんて当たり前でしょ!
と思ってしまうと、その当たり前のことができていなかったら、「どうしてできてないの!?」とイライラしてしまうんです。
できていたとしても、「ありがとう」と感謝する気持ちは生まれません。
 
実際、中学生が言っていました。
「親が、最近ウザいんだよね。皿洗いの手伝いくらい、中学生ならやって当たり前って感じで言ってくる。皿洗いはいいんだけどさ、そう言われるとやりたくなくなる。普通に手伝ってって言われた方がまだいい」
 
相手も人間なので、「やって当たり前なんだから、やりなさいよ!」という気持ちが伝わってくると、いい気がしないものです。
 
勉強面でも、できて当たり前だと思っていないので「お願い」をします。
「国語のこの問題について、文章のどこに書いてあるか探せる?」
 
探してとお願いすると、塾生にとって自分ごとになります。
私が探して教えようとすると、塾生は先生に教えてもらえると安心し、自分はやる必要が無い、と他人ごとになってしまうのです。
 
「ここに書いてある」
と塾生が探せたら、
「お、ちゃんと見つけられたね。すごいじゃない」
と言いながら一緒に考えていきます。
 
そうやって接しているうちに、「国語の問題で分からない所がある」と質問を受けたときのことです。
「私が最初に、何て言うか分かる?」
と聞くと
「うん、問題の内容が、文章のどこに書いてあるか、でしょ? ここに書かれてあって、私はこう思うんだけど……」
と自分で考えながら学ぼうとしていました。
 
「お願い」することで、子どもたちが自分でやれることが増えるのです。
 
塾生たちに聞いてみました。
「どうして塾好きなの?」
すると、
「自分でできるようになるのが楽しい」
と口々に返ってきました。
 
自分でできるようになりたい!
できなかったことができるようになって嬉しい!
これが学びなのだと思います。
 
自分の思う当たり前を相手に求めないことが、塾生と接する全ての根底にあります。
当たり前だと思っていないから、「お願い」するし、お願いしたことができたらすごいなと思うし、感謝もします。
それが、子どもたちに「塾が楽しい」と思ってもらい、愛されるための小さな秘訣です。
 
 
 
 
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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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