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メディアグランプリ

早く、速く ~災害の避難に大事なこと~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:したみあきこ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
台風がやってきた。
防災無線が深夜に鳴ったり、落ち着かない日となった。
 
そんな台風の夜、雨音や風の音を聞いていると昔のことが急に思い出された。
三十数年前に起こった水害のことである。
死者300人近くにのぼった、大水害だった。
 
その水害の事を考えていると、ある友人のことを思い出した。
学年は違ったように覚えているが、同じ地区だったため時々一緒に遊んだ子だった。
思い出すと同時に、涙が止まらなくなった。
水害があったその日から今まで、思い出すことはあっても泣くことは一度もなかったのにである。
 
その友人は、その水害で土砂崩れにより亡くなってしまった。
 
水害があったのは、私が小学校4年生の時だった。
私が住んでいた家も半壊となり、道路が川のようになっている中、大人に背負われて避難した。
家が壊れかける瞬間、ものすごい音と揺れが襲った。
雨が降り出してから避難するまで鮮明に覚えているが、怖いと思った記憶はあまりない。が、避難した先でタオルで体を拭いている時に、足が小刻みに震えていた。
寒くないのにおかしいな、と思ったのを覚えている。
 
一夜明けて、大変な被害だったことが少しずつ判明した。
私が住んでいる地区でも、大きな土砂崩れがあったり、道路が分断されたりたくさんの影響があった。
 
そして、その土砂崩れで友人が亡くなったことを知った。
その事が判明した時、母が絶句して、それから目を赤くしていた。
私は、
 
――こないだ遊んだよ。
 
と、話した。それ以外の感情は特になかった。
ただ、なんで私はお母さんみたいに悲しくなれないんだろう、とは考えた。
その後も学校で話があったり、毎日土砂崩れの後を見ながら生活していても、『水害があって、ここで土砂崩れがあった』という事実以外、あまり深く考えることはなかった。
 
今、私の生活環境も変わり、かつて住んでいた家も離れ、実家も引っ越し、その土砂崩れの跡を通ることが無くなった。
だから、思い出せるのかもしれない。
この感情を持って毎日そこを通るのはとても嫌だ。
三十数年たって、ようやく悼むことが出来ているのかもしれない。
 
数日前まで遊んでいた友人。
その子は、一度避難しかけて、ランドセルを取りに戻ったという。
そして、土砂崩れに巻き込まれた。
 
ランドセルを取りに戻らなかったら、もしかしたら無事だったかも知れない。
 
――なんで、ランドセルを取りに戻ったの? 逃げてくれればよかったのに。
 
昔、感情を特に伴わずにそう考えていた。
今、ようやく感情が追いついた。
 
とても穏やかで優しい雰囲気の子で、私の家から見える景色を一緒にみて過ごした。
『ランドセルがないと、避難したところから学校へ行けない』と考えたのだろうか。
ランドセルなんか、いらなかったのに。
 
けれど、災害というのは本当に一瞬で大事なものを奪っていく。
 
私の家が半壊になったのも、本当に一瞬の出来事だった。
停電の中、大きな音と揺れが襲ったその一瞬で、家が半分崩れいていた。
ほんの数十分前まで、普通に歩けていた道が川のようになって足を掬われそうになって歩けないほどになった。
 
避難をしたくても、そうなっては出来なくなる。
そして土砂崩れも、きっと一瞬だっただろうと思う。
 
近年、自然災害が増え、避難に対する意識もだいぶ変わっているように思う。
テレビなどの情報も、早めの避難を強く呼びかけている。
本当に、避難は早めにしておかないと、一瞬で避難したくても出来ない状態になるのだ。
 
近年の豪雨による災害の映像で、急に増水して道路が川のようになる様子があった。
まだこのくらいでは……と思っていると、避難が困難になってしまう。
 
けれど、実際に経験しないとあまり切実に感じ取れないのも理解できる。
理解はできるが、その地域に避難勧告が出たら避難を開始して欲しいと思う。
ちょっと大げさになってもいいではないか。
何も無ければ、「ああ、何も無かったね」と笑いなら帰宅すればいいと思う。
 
――ああ、あの時避難しておけば……。
 
という後悔より、何千倍、何億倍もいい。
何かあったら『とりあえず避難』という行動が一般化すればいいのにと願う。
 
この台風の夜に、あの水害の事を思い出したのにはきっと意味があるのだろうと思う。
まだ深く考えたくないこともある。思い出したくないこともある
けれど、自然災害が年々増えてきているように感じる今だからこそ、強く伝えたいと思う。
 
自然災害は、いつどのようにやってくるかわからない。
抗うことも難しい。
すべての災害に備えて家屋の防御をすることは金銭的にも難しいだろうと思う。
ハザードマップを見て危なくない地域に引っ越すというのも、現実的ではない。
けれど、避難は誰にでもできる手段だ。
 
取り越し苦労でもいいから、いち早く非難して欲しい。
自分のためにも、親しい人のためにも、安全な場所にいち早くいて欲しい。
自然災害の多くは、『あと何秒か早かったら……』ということが良くあることを、ぜひ覚えていて欲しい。
 
私はあの日の出来事と、友人のことを絶対に忘れない。
そして、どこに住んでも災害と避難を意識し続けようと思う。
 
早く、速く。
 
避難の情報が出たら、すべての人に実行してほしいと願う。
 
 
 
 
***
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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