メディアグランプリ

弥勒菩薩と乙女主婦の新たな人生の始まり


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:上野優子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「2020! 嵐活動休止だって! 今テレビのニュースで!」
これは今年の1月27日、日曜日の夕方5時9分、いつも一緒に嵐を追っかけているママ友達のグループラインに向けての、私のリアルな書き込みだ。
いい歳をしてアイドルに熱をあげている私をいつもは冷やかに見ている主人が、さすがにこのニュースはと思ったのだろう、ソファーでうたた寝をしていた私を起こして伝えてきたのだ。「嵐、活動休止だってよ」
この日から、来年12月の活動休止までのカウントダウンが始まることとなった。
 
嵐ファンの友達からは続々と動揺しているLINEが届く。「これからどうすればいいん?何を頼りに?」みんな主婦だが嵐への想いは乙女だ。そして私が嵐ファンだと知っている友達からは、面白半分に生存確認のLINEがくる。これには辟易した。こっちだってまだ心の整理がついていないのに、冗談まじりに茶化してくる友達に、ホントに縁を切ってやろうかという思いが一瞬よぎったのは嘘ではない。
 
しかし実は私は、動揺はしていなかったのだ。むしろ活動休止を聞いた瞬間、どこか内心ホッとした部分があった。そしてファンである嵐のリーダー大野智、おーちゃんに思いを馳せていた。
 
嵐ファンの乙女たちを、失意の底へと沈めた突然の休止発表から、遡ることおよそひと月前、去年の12月23日に私と友達は、2日後に迫った嵐の東京ドームでのライブの相談をLINEでしていた。
「何時に待ち合わせする?少しでも嵐から見つけてもらえる服の色は・・・・・・」そんなやりとり中に、嵐が20年目のアニバーサリーイヤーとして、来年2019年の12月まで追加でドームコンサートを開催、全50公演、237万5000人を動員すると発表があったのだ。
 
237万5000人?なんでそんなにたくさん?嫌な感じがした。「そんなにライブやって、嵐、来年いっぱいで活動休止でもするとか?個人の仕事だけにしてさ。そうなると、おーちゃん自分の番組を持ってないから、テレビから姿を消すとか!?」という内容の文章をその友達に送った。友達は勿論、そんなことあるわけないやんと一蹴したが、嵐が2年もの猶予を持たせてくれたから、休止のタイミングは一年後ろにズレたものの、悲しいかな休止後の活動としては、私の予想通りとなった。
 
しかしながらコンサートの動員数が多いというだけで活動休止を予感したのでは無い。稀有なアイドル、大野智をずっと見ていて感じていたものが積み重なり、湧き上がってきた思いだった。
 
8年前に突然訪れた、私の“人生初ジャニーズ堕ち”。そこからおーちゃんを応援しているが、ここ数年、自分がやりたくてアイドルをしているのでは無く、ファンの為、メンバーの為に嵐でいるように見えて仕方なかった。いったんその目線になると、バラエティー番組でもどこかしんどそうに見える彼を、純粋に自分の癒しや楽しみにすることが出来なくて、いつも何かモヤモヤしたものが胸の下に横たわっている感じだった。そして天真爛漫な相葉ちゃんを無邪気に愛でる、これまた天真爛漫な相葉ファンを羨ましく思ったりもした。だからこそ、活動休止を知った時の“内心ホッ”だったのだ。おーちゃんを休ませてあげられる……と。そして蓋を開けてみると、やっぱり活動休止を切り出したのは彼だった。
 
活動休止ということは、ファンになって以来ずっと続いてきた毎年の定番スケジュール、秋にアルバムリリース、ツアー発表、ホテル予約、飛行機予約、エントリー、運命の当落発表、11月から1月までコンサートツアー、6月にはイベント、夏には音楽番組に多数出演、そしてまた秋が来て……という一年の流れが終わるのだ。
 
乙女たちが、「これからどうすれば?」という気持ちになるのは大いにわかる。だってここ何年も、そうやって毎年決まったスケジュールで嵐と共に動いてきたのだから。日々のパートだって、東京ドームや福岡ドームに遠征するための費用だと思ってみんな頑張っていたのだから。
大げさに思えるだろうが、嵐に恋する乙女たちは、2020年以降の自分の生き方について不安を覚えている。それだけ生活の多くを嵐が占めているからだ。
 
そして私の欲目ではなく、特におーちゃんに関しては、ただ顔が好き、というのではなく、多くの人が彼の内面の魅力を語り、尊敬を口にしている気がする。テレビでの印象のままに、ぼーっとしている人だと思うだろうが、私の中では慈悲深い弥勒菩薩、心の中に穏やかな水面を湛えているような人だ。20年一緒にいるメンバーのニノでさえ、怒った所を見たことが無いというのだから。
 
前に、なぜ私は彼がいいんだろう?と考えたことがあった。答えは、優しいわりに何が起こっても動揺せず、必ず正しい道を示す人だという圧倒的信頼感があるから。人間性、精神性を尊敬しているのだ。加えてあのダンスと歌声。一般の人には知られていないが、嵐の中では彼がダンスも歌も一番上手い。
「嵐を一度たたんで、それぞれの道を歩んでもいいのではないか」と切り出した彼は嘘がつけない人で、まだ活動休止する前から軽々しく、「復帰しますよ」なんて絶対に言わない。
 
きっと来年の大晦日まで全力で駆け抜けて、翌日の元旦に一人、自由を噛みしめながら、人生の第二章をゆっくりスタートさせるんだろう。復帰もあるかもしれないが、私はあまり期待せずに待ちたいと思っている。そしていつか、嵐とは違う世界をたくさん見て彼が戻ってきた時に、恥ずかしくない自分でいたいと思っている。
 
実は今回のライティング講座を受講したのもそうだ。子供もだんだん手が離れていく年頃だし、嵐もテレビからいなくなる。それを、“置いて行かれる”と感じた私は“自分が自分の名前で輝ける何か”を2020年の末までに探すと決めたのだ。
 
いい歳をしてアイドルに熱を上げるのも、悪いことばかりじゃない。いや、むしろいいことの方が多いんじゃないのか。だって人は夢中になれるものを、意図しては作れないのだ。今回のように喪失感で辛いこともあるが、大半は人生に彩りを与えてくれる。どうしたって好きでやめられないようなものは、見つけたもん勝ちだと私は思っている。
 
おーちゃん、あなたは知らないだろうけど、いつか5人が帰って来た時に、恥ずかしくない自分で嵐を迎えたいと、ケナゲに誓いを立てている乙女主婦たちが、全国にはたくさんいるんだよ。ホントに罪深い5人の男たちだ。
 
ここまで読んだ人は、「何だ、なんだかんだ、前向きな誓いも立ててポジティブで結構じゃないか」と思っているかもしれないが、本当はそんなに簡単に割り切れるものじゃない。その証拠に私はこうしてキーボードを叩きながら、今もやっぱり涙が止まらないんだから。
 
 
 
 
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2019-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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