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メディアグランプリ

ポケモン的営業マンのすすめ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:サキ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「私、営業マンってポケモンの主人公だと思うんだよね」
 
ランチ中、唐突に職場の先輩がボソッと言った。ポケモンって、ポケットモンスター(略してポケモン)と呼ばれる架空の生き物を捕まえ、対戦しながら旅をする、あのゲームのこと? 各地で最も強いジムリーダーと、互いのポケモンを戦わせ、勝てば勝利の証としてもらえるジムバッジを集めて回る、あのゲーム?? 最終的に、世界で一番強いトレーナー=ポケモンマスターを目指すあのゲームと、営業マンにどんな関係が? 言葉の真意を聞く前に、先輩はランチを食べ終え、お会計に消えてしまった。
 
俺は、とあるメーカーにこの春就職した新入社員。営業部に所属している。野心や夢もなく何となく就職活動をして、一番最初に内定が出た企業に就職した。だって、早く就活を終わらせて、バイト仲間と遊びたかったから。実家に近いという、立地条件に惹かれただけで面接を受けた。仕事内容にはみじんも興味がなかったのに、我ながらよく採用されたものだ。
 
とはいえ入社したての頃は、新しい環境で新しい事に取り組む物珍しさもあり、それなりに楽しんでいた。新人研修は、同期のみんなと一緒で大学の延長みたいなノリだった。新入社員がそれぞれの部署に配属された後も、先輩が使う資料をコピーしてホチキス止めしたり、会議室を段取りしたり、先輩のプレゼンを見学したり、お使い程度で楽だった。初めて自分の名刺をもらった時なんかは、嬉しくって親に渡した。
 
最初の敵は電話だった。
まず相手が早口だと全然聞き取れない。社内の人からかかってくる内線電話は、社員名簿と照らし合わせれば何とかなった。問題は外線電話だ。電話に出る時は「お電話ありがとうございます。新入社員の○○です」と言って出ることが許されているので、魔法の呪文のように唱えてバリアーを張る。この呪文を言うと、たいていの人はゆっくり話してくれるが、構わず早口でまくし立ててくる人もたくさんいる。早口な人は、聞きとれなかった部分を聞き返すと、イライラして更に威圧的になってくる。余計に焦ってしどろもどろになる悪循環。
次に、電話の質問内容に即答できない。そんな時は、魔法の呪文その2「折り返しご連絡いたします」を唱える。この呪文は、相手の名前と折り返しの電話番号を聞きくまでがセット。でも、焦っていると大体聞き忘れてゲームオーバーになる。
こんな感じで、焦りからくるミスをたくさんした。五月のゴールデンウィーク明けは、電話が嫌すぎて出勤が憂鬱だった。
それでもなんとか慣れてくると、「お世話になります~」と電話に出たりして、俺、なんかサラリーマンコントみたい、ってまだ面白がれた。
 
そして、社会人になって六ヶ月目の九月。先輩営業マンとの同行を経て、ついに営業マンとして独り立ちすることになってしまった。手応えは、まあ、散々だ。できないことが多すぎる自分が情けなくて逃げ出したい。明日、仕事行きたくないな。寝る前は毎日こう思ってしまう。学生の頃は、割と学生生活を楽しんだタイプだったから、早く学校に行きたくてワクワクしていた。でも今は、登校拒否ならぬ出勤拒否になりそうだ。まじめで負けず嫌いな性格が幸いし、なんとか休まず毎日通勤している。
 
俺がこんな気持ちを抱えていたことを、先輩は見透かしていたのだろうか。先輩の言った「営業はポケモン」という言葉の意味を考えながら午後を迎えた。気は進まないけど、仕事に取り掛からなければ。
 
まずは第一目標である、こちらから電話を掛けて、客先にアポイントを取り付けることを目指す。新規の営業先は、取れないことのほう多くてへこむ。毎週、今週何件訪問したかを上司に報告しないといけないから、アポイントが取れないと困るのだ。サラリーマンコントのつもりで、役者スイッチを入れて電話を掛ける。ラッキー! アポイントを取り付けることができた。
あれ? ひょっとして、これをポケモンに例えると、ジムへの扉が開けたのかも……?
 
次の日、アポイント先へ製品プレゼンに伺う。採用決定権のある担当者まで繋いでもらううのが、第二目標である。電話と同じく、緊張するとうまく説明できなくなってしまうため、プレゼンはかなり練習したが、発揮できるだろうか。最終目標はもちろん自社製品採用してもらうことだが、まだ成果は出せていない。担当者までたどり着くのがそもそも難しいし、担当者が複数人いる場合も多々ある。採用へ向けて賛同者を増やすために、関係者それぞれへプレゼンしなければならない。初受注までの道のりを思うと心が折れそうだ……。
いや、待てよ。これもポケモンに例えて考えると、各担当者へプレゼンし、賛同という名のジムバッジを集めて回っていると言えなくもない。
つまり俺は、受注というポケモンマスターを目指してジムバッジを集める、マサラタウンのサトシだったのだ。
 
ポケモンは、幼い頃に夢中で取り組んだゲームだ。試行錯誤しながらクリアした。ジムバッジがかかった大事な対戦の前には、仲間のポケモンを増やしたり、サブキャラと対戦して経験値を上げたり、きずぐすりなどの回復アイテムを蓄えたり、地道に準備をしておいた。そして、対戦直前に必ずセーブをした。もし負けても、何度でも挑戦するためだ。
 
営業という仕事がポケモンだというならば、俺は、このゲームをクリアする方法を知っている。プレゼンの前には、先輩や同僚を仲間にして、資料作成のアドバイスをもらい、準備を万端にしよう。場数を踏んで、プレゼンの経験値を上げよう。そして、一度ダメだった営業先にも、何度でも挑戦しよう。
 
きっといつか受注できる。元気を出して、地道に頑張ろう。
ポケモンマスターを目指した、あの頃のように。
 
 
 
 
***
 
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2019-10-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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