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8年間お世話になった保育園で、お父さんが身につまされた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山本周(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「わたしがまだ小さい頃、両親は共働きで、保育園にいるわたしを迎えに来るのが遅くなることも多かったんです。他のお友達にはお迎えが来て、一人、二人と帰っていくのを見るのがとても寂しかった」
 
今年の3月、わたしの2人の子どものうち、妹のほうが、保育園を卒園した。
その時の担任だった先生が、最後の懇談会で話した内容だ。
 
京都の市営地下鉄で北の終点、国際会館駅までやって来ると、ぐっと周囲に緑が多くなる。そこからさらにバスで、北に行った終点近くに、その保育園はある。
長男も、同じ保育園を卒園しており、彼が入園した時から数えると、8年間、わたしたち夫婦はこの保育園を利用させてもらったことになる。
 
保育園では、年に3回、保護者とのクラス懇談会が、夜7時頃からあった。
夏の終わりの懇談会だと、プールで遊ぶ子どもたちを撮った映像を見せてくれたり、その夏の出来事や、子どもにどんな成長があったかなどを、担任の先生が披露してくれた。
 
そして3月の、最後の保育園の懇談会で、担任の先生は、自分が小さかった頃の話をする準備をしていた。
 
「お友達がいなくなり、わたしが暗くなった外を眺めていると、保育士さんが、お母さん、お仕事がんばってるんだね、でも、あと少しだよ、と何度も声をかけてくれました。その時、わたしも保育士になりたいなと思ったんです」
 
先生は、自然に囲まれたこの保育園が、自分の生まれ育った環境に似ていたのもあって、卒業後の就職先に決めたとのことだった。
彼女は、まだ20歳代前半の保育士さんだが、お母さんらの信頼も厚く、担任の継続希望も園に寄せられ、結局、娘の最後の2年間、クラスを受け持ってくれた。
 
彼女は物怖じせず、さっぱりした性格で、わたしも、娘の担任が、この先生でよかったと思った。仕事で、育児で奮闘するお母さんにとり、この先生には弱みを見せてもだいじょうぶと思わせてくれる度量があった。
 
働くお母さんにとって、保育園はなくてはならない存在だ。
厚生労働省は、2018年10月1日時点の全国の保育所などの待機児童数が、前年同時期より8千人余り減って、4年ぶりに減少に転じたと発表した。
それでも10月時点で、まだ5万人近くの待機児童がいる。
 
子育ての現状について調べたNPO法人子育てひろば全国連絡協議会の全国調査がある。「自分の育った市区町村以外で子育てをする母親」は、全国平均で全体の72.1%に達しているという。
連絡協議会では、これを「アウェイ育児」と名付け、さらなる調査をした結果、アウェイ育児は、そうでない育児に比べ、近所で子どもを預かってくれる人が、約半数程度しかいない。
 
わたしの妻は、結婚、出産を機に、他府県からわたしの住む京都に越してきた。
妻の話によると、引っ越してきた当初、初めての土地で親戚も友人もおらず、京都の町の雰囲気も、近所の人とのコミュニケーションの方法もわからない。小児科受診も、保育園入園情報も分からない。一つひとつ手探りの連続だったという。
 
育児の負担を夫婦で分担できればと思い、わたしは妻との情報共有のため、居心地はよくなかったけれど、母親ばかりの懇談会に努めて出席するようにした。朝夕の子どもの送り迎えなどもしていたが、やはり、まだまだ母親の姿の方が圧倒的に多い。
 
2012年、『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)がベストセラーになった、漫画家の田房永子さんは、その最新刊で、それまで男女平等だ、夢を持つんだ、働きたい気持ちに男女差はないよ、と教えられてきたのに、子どもが生まれたとたん、妻側が仕事をあきらめるのが当たり前という社会的な風潮に、あらためて愕然としたと書いている。
 
それでも仕事をあきらめず、ベビーシッターを手配し、一人で外に出る仕事のスケジュールを組む。そうやって「自分の仕事の時間」をつかみ取って出かけると、決まって相手から、「今、お子さんは誰が見てるんですか?」と問われるのだ。それは、男だったら絶対聞かれない質問であり、どうしようもない理不尽さを感じたという。
 
娘の保育園で、お母さん方が、頼りがいのある保育士さんに、自分の子の担任を続けてもらえないかと願うのは、心情的にとてもよく分かることなのだった。
 
懇談会の場で、子どもの家での様子や、不安に思うことなどを、お母さん方が順に話していく機会が持たれることがあった。思いあまって涙ぐむお母さんもいて、それぞれの苦労が、男のわたしに身につまされるのである。
 
娘が卒園した後に、先生は姓名が変わったと伝え聞いた。
でも、まだ同じ保育園で勤務されているそうだ。
彼女にお世話になった、妻も含む当時の母親らは、結婚お祝いのサプライズ映像をしたためるため、今度、集りを持つのだそうだ。
 
 
 
 
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2019-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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