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メディアグランプリ

独り言はスマートドラッグだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小川 周平(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「先生、ある男子が自習室でちょっとうるさいので、注意してくれませんか」
 
ある年の10月。高校3年生で大学受験を控えた女子生徒が、困った顔で講師室に来て僕に助けを求めてきた。
おやおや、みんなが頑張って勉強する自習室でうるさいのは困りますねぇ。どれどれ……。
 
僕の視界に入ってきたのは、田中くん。「あぁ、田中くんか」と僕はすぐに納得。
彼は非常に真面目で授業態度もよく、課題の提出率も良い。なんなら、その予備校でトップレベルの成績を収める優秀な生徒だ。
 
ただ一つ、困ったクセがある。独り言が多いのだ。いやむしろ、自習しているときはほぼ独り言を言っている。時には数学の図形問題を考えているときには、両の手が丸や四角、放物線を描く動きをして、見ていると時折、正直うっとうしい。その女子生徒が助けを求める気持ちもよくわかる。
 
「田中くん。めっちゃ一所懸命勉強してるね。いい感じだ。でも、もう少し声のトーンを落とそうか」
「あ、すいません、ついクセで……。気を付けます」
 
こういう素直さも、彼のステキなところだ。
 
さて、「独り言が多い人は頭がいい」という傾向があることはご存知だろうか。
独り言を言う人を街中で見かけると、そりゃ近づきたくない気持ちは痛いほどよくわかる。僕もあまり近づきたくない。ところが、勉強をしているときに独り言を言うと、驚くほど学習効率が上がるのだ。
 
誰もが学生時代、成績が上位の友達を見るたびに
「なんであいつはあんなに賢いんだ。そんなにガリ勉でもないのに……」
と思ったことがある人は少なくないはずだ。そして「賢くなる薬」があれば飲みたいと思ったこともあるだろう。
アメリカやイギリスで一時「スマートドラッグ」なるものが流行したことがある。飲むと一時的に集中力が上がり記憶力の向上が期待できるが、中には違法なものや副作用があるものもある。医者の処方箋が必要なものある。もちろん、こんなドラッグに頼って勉強するのはあまりお勧めできない。けれでも、合法で安全で効果の高いスマートドラッグがあるとしたら?
 
実は、それが「独り言学習法」だ。
 
「独り言? そんなことで成績が上がったら苦労しないよ」
「そもそも独り言なんて、やってる奴ヤバいじゃん」
 
そんなことを思う人もいるかもしれない。しかし、ちゃんと科学的根拠があるのだ。
 
まず、独り言を言うということは、物理的に考えている内容や覚えるべき語句・文章を口に出すということ、つまり音読をするということだ。音読は、記憶に良い。音読をすることで脳の記憶の容量が20〜30%高まった、という研究結果もある。
そりゃそうだ。見ると同時に自分の口からアウトプットし、その自分の声をまた自分の耳で聞くのだから、単なる黙読よりも効果が高いのは明らかだ。口や耳を動かす、つまり体を使った学習というわけだから、脳がアクティブになって定着率が高まるのもうなずける。
 
さらに、リアルタイムで考えていることを独り言で言うことで、その瞬間の頭の中が整理されていくのだ。
 
「この問題が求めているのは、この三角形の面積か。三角形の面積は底辺×高さ÷2だから、底辺と高さがわかればイケるな。あれ、底辺になりそうな辺の長さは書いてあるけど、高さがわからんな。そうか、高さを求める方向性でいけば解けそうだな。この高さを求めるためにはどの定理が使えるかな……」
 
という具合だ。問題文をしっかり読んで内容を理解する手助けもしてくれるし、自分自身に問いかけるようにすれば、自分は何をわかっていて何がわからないのか、客観的に整理することができる。そうすれば、今から自分は何をすべきなのかが明確にわかってくるから不思議だ。
 
この「自分への問いかけ」は様々なところで有効だ。例えば何気なくテレビでニュースを見たときに
「軽減税率って、なんだっけ? 何に適用されて何に適用されないんだっけ?」
と自分に問いかけることで、自分は軽減税率について曖昧にしかわかっていない、という事実がわかる。そうすると、そこから軽減税率のことを調べ始めて「なるほど!」と納得し、成長の過程を通ることになる。
 
調べているときも、もちろん独り言。
「軽減税率って、食品を持ち帰るときには8%だけど、その食品の中でも酒類は10%なのか。おっと、みりんは酒類に入るから10%なのか。でもノンアルコールビールは酒じゃないから8%か。なんてややこしいんだ」
とか言いながら調べていると、なんだか不満を誰かに聞いてもらっているような気持ちになるからスッキリする。しかも、自分の口から言葉に出しているから、いざという時、他人に説明もできる。
 
この「独り言勉強法」にハマると、けっこう楽しいのだ。まるで実況中継しているリポーターの気持ちになったり、役者やテレビの中の人物になりきった気持ちになったりできる。音読のために特別に準備するべきものは何もない。いつもどおりの勉強で、口に出すだけだ。とても簡単。
そして何より、賢くなるのだ。
 
楽しくてラクで賢くなる。違法なことは何一つない。これぞまさしく、「合法スマートドラッグ」だ。
 
ただし、独り言は人前でやるとヘンなやつ扱いされるし周りに迷惑になるので、要注意。
用法用量を守って、正しくお使いください。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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