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どうして勉強しなきゃいけないの?


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記事:サキ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「どうして勉強しなきゃいけないの?」
15歳の頃、母へ向けた反抗期の私のセリフである。
 
公立中学校に通っていた私は、中学3年生で高校受験を控えていた。
ところが、当時私は、その後生涯を通じた趣味となる“少年マンガ”に出会ってしまい、少年マンガってこんなに面白かったのか! 勉強なんかしてる場合じゃない! と、所構わず隙あらば少年マンガをむさぼり読む、マンガオタクと化していた。
多少絵心のあった私は、読むだけでは飽き足らず、少年マンガのお気に入りのページを模写しまくり、新キャラクターを勝手に想像したりした。
勉強するためにノートを用紙しても、少年マンガイラストや自作のマンガで埋めてしまう始末。
 
普段は子供の自由意思を尊重してくれる母も、私のマンガオタクっぷり、いや、勉強しなさ加減を見かねて、いよいよ怒りの雷を落とした。当たり前である。
そこで私が放ったのが、冒頭の、勉強することへの問いと見せかけた屁理屈。
他人から見ればかわいい程度かもしれないが、きまじめな長女の私にとっては、大いなる反抗だった。
 
母の答えは「将来、生活するお金を稼ぐため」だった。
そりゃそうだろうけど、何分反抗期なもので、不服だった。
しかし、のちの就職活動にて、母の回答は現実的な正解だったと悟る。
採用試験の、学歴による事実上の足切りを知るのである。
私は、一時は反抗したものの、周りに流されるがままに高校受験、大学受験を経験し、なんとか大学まで進学した。
私の就職活動は、ちょうど東日本大震災の翌年で、就職氷河期だった。
社会が不安定な時ほど大手企業に人気が集まるが、大手企業ほど所属大学によって選考試験をスキップできる仕組みを行っていた。
(入社してからも、出身大学による学歴派閥は多少あった。)
 
反抗期から7年後、22歳になった私は、より本質的な答えにたどり着いた。
どうにかこうにか就職活動を終え、大学卒業のため残りの単位を取得するために、何となく受けた哲学入門という講義で、教授が言った言葉である。
 
「哲学者プラトンの時代、哲学とは今でいう学問に当たる言葉であった。
元々、人間の世界の根本を明らかにしようとすることの全てを哲学と呼んだ。
そこから、世界をどんな切り口で考えるかによって、自然科学、社会科学、人文科学といった独立した学問として扱うようになった。
例えば、物理は数学で明らかにできることを発見し、これを自然科学で扱うと定めたのは哲学者である。」
 
哲学によれば、私が義務教育でさんざんやらされた国語、算数、理科、社会は、世界の根本を明らかにするための方法論だったのだ。
どうして勉強しないといけないのか?
その答えは、世の中の“問題”に対する“答え”を導く、色々な方法を身に着けるためだった。
目から鱗が落ちた。それならば学ぶ意味はある。
納得のあまり、教室でひとり絶句したのを覚えている。
 
それから更に7年後、29歳の社会人になった今、久しぶりに大切にとっておいた哲学入門のプリントを見返した。
すると、なんと7年前とは別のところで、目から鱗が落ちた。
 
「まだ考え方の方法論が確立していない問いについては、哲学が請け負っている。
最近、各大学に新しい名前の学部が続々と出来ている。
福祉学部、心理学部、スポーツ学、観光学部といったこれらは、従来の自然科学、社会科学、人文科学の枠組みでは解決できない問いに対し、哲学から独立して新たな方法論を確立しようとする学問といえる。
答えを出すことが目的ではなく、答えのないことを追い求めることこそ、哲学=学問である」
 
現代社会は、いじめや貧困、クローンやAI、ネットリテラシーなど、様々な“問題”に直面している。
今、義務教育を修めた私たち大人に求められているのは、いわゆる国語、算数、理科、社会の枠組みでは解決できない“問題”に対し、新たな方法論を確立することである。
 
しかし、大人であるはずの私たちは、問題を誰かがトップダウンで解決してくれることを望み、答えを自分の頭で考えなくなっていないか。
うまくいかなければ他人や組織のせいにして批判するだけで、思考停止せず解決策を自分で考える人はどれだけいるだろうか。
せっかく10代をかけて、先人が築いた“答え”を導く方法論を学んだのだ。
先人に倣って、現代の新たな“問題”に“答え”を出す努力を続けたいと思う。
 
ところで、この文章で、私は15歳の時からの問いに、14年間答えを考え続けたことになる。
“答え”の無い“問題”を考え続けることこそが学問というなら、この私なりの学問を続けていこうと思う。
36歳になった私が、この問いにどんな新たな答えを出すか、今から楽しみである。
 
 
 
 
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2019-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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