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いつまでも変わらないもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鵜木 重幸(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「カッ、カッ、カッ、カッ……」
会社の廊下を歩いていると、背後から女性の小走り音が近づいてきた。
 
「バシッ!」
次の瞬間、私は左肩を勢いよく叩かれた。
 
「鵜木くん! いつも元気やなぁ~」
50歳超えのおっさんに「くん」付けである。
 
「ぼちぼちやってますよ、そっちこそ、いつもパワフルじゃないっすか?」
 
「またA子さんか、しゃあないなぁ~」
と心の中でボヤきつつ、顔からは笑みがこぼれていた。
おかげで、ついちょっと前まで考えてた、くだらん事はどっかへ行ってしまった。
 
「ほな、急いでるんで……」
小柄で元気の塊のようなその女性、A子さんは颯爽と私を追い越し、去って行った。
 
A子さんは、隣の部署の女性社員だ。
私が入社した時には既におり、当時から私の事を「くん」付けで呼んでいる。
実際に歳上なのか、単に入社年が早いだけなのかは定かではない。
確認したい気持ちはあるが、勇気は無い。
 
A子さんは、どんなに年数が経とうとも、私への呼び方「くん」付けは変わらない。
どうやら、彼女と私の時間差は、いつになっても変わることはなく、私は永遠に「くん」付けの対象らしい。
 
そんなA子さんは貴重な存在だ。
大多数の先輩女性社員は、新入社員の時は、「くん」付けでも、時と共に、「さん」付けに変わり、更には、「○○長」と役職名付けに変わる。
その変化と共に、何となく疎遠になって行く様な……
そんな寂しい気がしているのは、私だけだろうか……
 
その点、A子さんは、いつも気さくに声を掛けてくれ、おまけに、いつもでも「くん」付けだ。
歳と共に、「くん」から「さん」へと呼び方が変わる人が多い中で、「くん」と呼ばれると何故か新鮮に響く時がある。
そんな時は、エンジニアを志して入社した頃の原点へと繋がるタイミングだ。
当時の事を思い出し、今の自分の生き方は、あの頃の志からズレてないのか、内省のキッカケになったりもする。
 
A子さんの声掛けには、もう一つ変わらないものがある。
それは、掛ける言葉だ。
 
ずっと前から、そして今現在も、満面の笑みで、掛ける言葉は、
「いつも元気やなぁ〜」
なのだ。
 
ほぼ、こちら側の空気は読んでいない、と思われる。
むしろ、元気のない時にこそ、それを見透かして、「元気やなぁ~」パワーを炸裂している様にも見える。
 
こんなオバさん(失礼?!)が、身近にいてくれて本当に有難い。
この何気ない声掛け、
「いつも元気やなぁ〜」
に何度元気をもらい、何度救われたことか……
 
実際は落ち込んでいる時であっても、笑顔で元気良く、「元気やなぁ~」と言われれば、
現状とのギャップが大きければ大きいほど、反論するどころか、
「そうか、オレは元気なのか……」
と思えてくるから不思議なものである。
それくらい、「元気やなぁ~」のパワーは凄まじい。
 
いつも皆に元気を与え続けているA子さん、
とはいえ、人間だもの、人生長いこと生きていれば、いつも笑顔のA子さんでも、つらい時、泣きたい時、笑顔なんかになれない時がきっとあったに違いない。
仮にそんな時でも、A子さんは、いつも通りの元気さで、満面の笑みで声掛けをしてくれている。
その原動力は何であろうか?
 
元々、ネアカの性格で、いつでも何処でもハイテンションなのだろうか?
 
実は繊細な面もあるA子さん、その一面を知っている私は、必ずしもネアカの為せる技とは思わない。
もしかして、A子さんは、相手を元気づけているようで、実は、自分自身を元気づけているのでは?
そんな仮説を立ててみた。
 
自分の内面がどんな状態であれ、表情と発する声を明るくすれば、その行動につられ、内なる感情も明るく変わる効果があるのでは?
明るい行動を取り続けていると、実際はどうであれ、脳が騙され、機嫌良く気分上々になるのでは?
そんな想像をし、A子さんの行動を振り返ってみた。
あながち外れてないのかもしれない。
 
「くん」付けで私を呼ぶのは、時間を若い時に止めておいて、その時の元気を思い起こす効果があるのでは……
 
「いつも元気やなぁ〜」という言葉は、その言葉を発しているA子さんが、自分自身に語りかけている言葉なのでは……
これをA子さんは、無意識のうちに実践しているような気がしてきた。
 
「情けは人の為ならず」
これを実践しているのがA子さんなのかもしれない……
 
気がつけば、A子さんの姿は見えなくなっていた。
早足で私を追い越し去って行ったA子さん、もしかして、悲しみ真っ只中で、目に涙を浮かべてたりして……
 
今度そんな機会があったら、追いついて顔を覗いてやろうかな?
 
いやいや、そこはシークレットにした方が良さそうだ。
一番元気をもらっているのは、この私なのだから……
 
 
 
 
***
 
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2019-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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