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メディアグランプリ

目を閉じた先にある、「夢の国」の感動


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大西 栄樹(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ん? これはニンジンかな?」
 
次の食材を探すためにお皿の上の食材をフォークで探す。
何かに触れた。そのものにそっとフォークを刺してみるが、ミスった。うまく刺さらず、「カンッ!」という音が響く。自分の座るでーブルの周りからも同じように「カンッ!」とお皿にフォークが刺さる音が響きわたる。
どうやら、みんな同じ状況のようだ。
 
「頑張って手の感覚を研ぎ澄まして食べてくださいね。どうしてもダメだったら直接手で触れてみてください」
 
これは、ディズニーがやっている、目隠しをしながらコース料理を食べるというディナーイベントである。食べるだけでなく、アラジンやライオンキングなどストーリーに合わせた音楽の演出まである。いわば、「視覚」以外の感覚で楽しむイベントである。
私は、ディズニーは好きだが、そこまで熱狂的なファンでもない。なので、ディズニーをそこまで楽しみに行ったわけでもないし、目隠しして食べることも正直意味がわからないと思って参加していた。
 
「次は本日のスープになります。スプーンを置いていますので探してお召し上がりください」
 
スタッフの案内に促されるままに、手に集中してフォークを探し、食べ進めてみる。よく味わって何を食べたか想像する。器の中には何も感触がない。ただ、食べきったかどうかのかどうかわからない。たぶん終わったはず。これは、コンソメスープだな。野菜がいくつか入っていたかな。色々と想像をめぐらせる。
 
このイベントを少し説明すると、一つのテーブルに4名が座る。その4名は必ず初対面のメンバーとして配置される。たとえ友達同士で来ていてもだ。
会場に入るときから目隠しをして、スタッフに誘導されて入るので、年齢や見た目など全くわからない。
着席時の簡単な自己紹介のときの声の様子から、女性なのか、年齢はいくつくらいなのかを想像する。
人の想像力とは恐ろしいもので、声だけなのに何となく顔や体型などを想像できるのだ。私は4名のうち1名の声を聞くやいなや、完全に私の好みにぴったりな理想の女性を作り上げてしまった。
 
「たぶん、これは牛肉のステーキで、付け合せにマッシュルームありましたよね?」
「うん、あったね! ソースは赤ワインがベースかな?」
 
食べながら、食事の情報を共有し合う。
テレビで目隠しをして食べて食材を当てる番組があるが、そのときの芸能人の気持ちが少しわかった気がした。感想を言い合っていると、いつしか同じテーブルの4人の関係が、何を食べたかを明らかにするという目標を一緒に目指す「仲間」にような感覚になった。
 
最後のデザートを食べ終えた。
「これにてお食事は終わりとなります。目隠ししたままスタッフが誘導して会場から退出いただきます」
 
最後まで目隠しのままなのか。
 
「どうもありがとうございました。楽しかったですね!」
 
同じ冒険をした仲間に挨拶する。
会場から出てホールに移り、目隠しを取った。そこには他のテーブルの人も含めて50名以上がいた。友達同士と再会し、感想を言い合っている。
 
そこには、食べたコース料理が展示してあった。食べたものの確認も興味はあったが、それ以上に私の興味は自分の理想の人が誰だったのか。そんなことに気をとられていた。
 
同じ声を探してみた。でもわからない……
 
不思議なものだ。あれだけ耳に焼き付けていたはずの声なのにわからない。今は、おそらく視覚が邪魔をして聴覚の感覚が鈍っているのだろう。私はそう思った。
 
人は無意識に感覚のバランスを変えているという。例えば、テレビを見るのに集中していると、誰かに呼びかけられても気づかないなどだ。特に、視覚からの情報は情報量が多い。だから脳は視覚からの処理に多くの力を使う。その結果、聴覚や触覚など他の感覚が鈍ると言われている。
なので、視覚情報を遮断することで、他の感覚が鋭くなるのだ。目隠しディナーを通して、何か普段は感じない「研ぎ澄まされた感じ」を経験した。味を敏感に感じる味覚や、自分の好みの女性を推測する聴覚、食材を探したり、こぼさないように飲み物を飲む時の触覚。そのすべての感覚が楽しかった。
 
「やっぱりディズニーだな……」
 
最後にはまんまと感動させられてしまった。しかも、初恋のような気持ちまで感じさせてくれた。
 
「インスタ映え」が流行りの言葉となり、見た目が大事と言われるが、その逆に、視覚を閉ざしてみることで感動を味わうことができるのだ。そういえば、子供のころにキャンプに行って、ランプ一つの暗い中、ご飯を食べるといつもより美味しく感じことがあった。まさしくあれも視覚からの情報が少なくなり、他の感覚が研ぎ澄まされたのだ。いつも頼っている視覚という感覚を少し鈍くすることが感動体験のヒントかもしれない。
 
そっと目を閉じてみよう。いつもと違う感覚を感じてみよう。その先に感動が待っているかもしれない。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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