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落書きが勝手に消える?絨毯のデトックス効果


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:椿(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「落書きがいつの間にか消えてる!?」
濃いB2鉛筆で子どもに落書きされたウール絨毯。
ああ、やられてしまった と思いながらも落とし方がわからず放置していたそうだ。
数カ月後、気づいたらその落書きが無い。
 
私たちはオリジナルのウール絨毯の開発、販売をしている。
自然素材にこだわり、ウールとコットンで織り上げ、職人さんの手仕事で仕上げる上質なウール絨毯だ。
絨毯の落書きが勝手に消えてしまう、とは不思議に思うかもしれないが、実はオカルト現象でもなんでもない。
オリジナルのウール絨毯で実際に起こったことだ。
 
いつの間にか消えてしまった原因は絨毯が「デトックス」をしているからだ。
デトックス? と「?」マークで頭がいっぱいになるかもしれない。
 
“デトックス(detox)は、生理学的・医学的に生物の体内に溜まった有害な毒物を排出させることである”
とウィキペディアが言っている。
落書きは毒物というわけではないけれど、絨毯から汚れが排出されたという点で「デトックス」という表現は案外合っているような気がする。
 
このウール絨毯の「デトックス」がなぜ起こるか、というと「遊び毛」という現象が大きく関わっている。
 
「遊び毛」とは、羊毛(ウール)製品には必ずある特性で、紡績糸の宿命であるウールの繊維のカスがたくさん出る現象である。
羊毛はその名の通り、羊の毛。羊の体に生えていたものだから、短い毛や長い毛がある。
長さも様々で、それを撚り合わせて糸にする。
その糸を使って製品をつくると、使っているうちに短い繊維が少しずつ抜けてきて、丈夫な長い繊維が残ることになる。
業界用語でちょっとカッコよく
「糸が洗練されてくる」
と言ったりする。
 
この「遊び毛」はウールのセーターやウール絨毯、カーペットなどに見られる現象。
製品にもよるけれど、使い始めはかなりの量が出てくるので、初めて羊毛製品を使う方はびっくりされることが多い。
羊毛に限らず、獣毛(アルパカとか、アンゴラとか、ヤクとか……)で作られた繊維製品は、獣毛の短い毛を撚り合わせて糸にするので、同じように短い繊維が抜ける「遊び毛」現象がある。
セーターの場合は、「遊び毛」よりも「毛玉」の方が気になるかもしれないが、アンゴラなどはとても遊び毛が多い。
以前アンゴラのふわふわの白いセーターを着ていたら、黒いコートの内側が白い毛だらけになって驚いたことがあった。
 
これが絨毯だともっとすごい。
 
リビングに敷くような大きなサイズだと、軽く掃除機をかけるだけでもあっという間に掃除機のタンクがいっぱいになる。
時々、心配になって相談されることがある。
 
すごい量の毛が抜けるんですが…… と前置きがあり
「絨毯無くならないですか?」と。
 
無くなりはしないので心配しないでください、と答える。
 
「絨毯減りますよね?」
 
目に見えるほど減りはしないので心配しないでください、と答える。
 
そうは言っても心配するのは当然だ。
本当にたくさんの毛が出てくるし、ある時期にぴたりと止まるものではないからだ。
日々、足で踏んだり、寝転んだり、歩いたり、座ったり、という暮らしの中の動作で、常に少しずつ出てくるもので、3か月で止まる、とか半年で止まる、とか決まりはない。
ただ、だいたい半年~1年程度お使いの方から、「そういえばいつの間にか気にならなくなっていました」と言われることが多い。
中には初めからあまり気にならないという方もいるが、やはり驚かれる方が多いのだ。
 
当然ながら、この「遊び毛」は不便だし、いつおさまるかと心配なものである。
こまめな掃除機掛けが必要だし、絨毯のまわりのフローリングに毛がふわふわと出てきたり、黒い服に毛が付くのを気にされる方も多い。
 
そんな風にほとんどの方が不便に感じる「遊び毛」には、とても重要な役割がある。
「汚れを排出する」効果だ。
短い繊維や絨毯表面のこすれた繊維がとれることによって、表面の汚れが一緒に排出される。
 
鉛筆の落書きが数カ月かけていつの間にか消えてしまったのは、日々とれる遊び毛が鉛筆のついていた繊維を排出してくれた可能性が高い。
決して不思議現象ではない。落書き自体も表面だけだったのが良かったのだろう。
鉛筆の落書きはお客様宅のお話だ。
 
自分でも、「汚れを排出する」遊び毛の効果を実感したことがある。
ウールはもともと汚れに強く、汚した場合もすぐにお手入れすると汚れ離れが良いのが特長だ。
でもイクラのおにぎりをぽっとり落とした時。
落ちなかった。
 
つぶれたイクラの粒から漏れたオレンジ色の汁は、そのままオレンジ色のシミになってしまった。水拭きをしても、洗剤を使って拭いても、落ちなかった。イクラは案外強い。
 
小さいシミだったので、すごく目立つわけではなかったが、こぼした直後は少し落ち込んだ。
そして、オレンジ色のシミが確かに、はっきりと、絨毯にあるのを目にするたびに、少し悲しくなった。
 
それから数か月……
 
シミのことはすっかり忘れていたが、ある時掃除をしながら、そういえばイクラのシミはどこだっけ? と探してみた。
 
あれ、無い。
 
よく目を凝らして探すと、なんとなく「これかもしれない」という薄いシミのようなものは見つかった。
でも拭いても落ちなかったあのシミとは明らかに様子が違う。
ぼんやりとしていて、周りに馴染んでいるのでほとんど目立たない。
きっとそれだと思う。あの時汚したところ。
 
やはりこれも「遊び毛」効果か! と驚いた。
 
遊び毛のおかげでなんでも汚れが勝手に落ちたり、薄くなったりするわけではない。汚れの種類にもよってもきっと効果は違うのだろう。
でも、きっと多くの人が思うより「遊び毛」は悪いやつじゃない。不便なだけじゃない。
 
汚れを排出してくれる「デトックス」の役割を持っているのだから。
 
 
 
 

***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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