メディアグランプリ

脱・金太郎写真


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記事:ふかまさ  ライティング・ゼミ平日コース
 
「こんなんあったんや!」
 
行き慣れた通勤路や公園の遊歩道がキラキラと光って見える。
あなたはそんな経験をしたことがありますか?
 
仕事をするために職場に行く。
本を借りるために図書館に向かう。
 
移動なんてものは「無駄」な時間、手段でしかないと思っていた。
なので数年前から自転車通勤に変えて移動している。
理由は単純で、電車移動と比べて半分の時間で済むからだ。
 
冬の寒い日も夏の暑い日も、移動のためだけにペダルを踏み込む。
そんな時間がキラキラ光り始めたのだ。
 
普段より少し早く仕事が終わり、いつも通り自転車で帰っていると
青空と雲と紅葉が混ざり合って、なんとも言えない風景になっていた。
 
誰かに伝えたくなり、ポケットからスマホを取り出して
ああかな、こうかな、と角度を変えて写真を撮ってみた。
 
なかなか思い通りには行かないので何枚か撮ってみると、
なんとなく雰囲気のある写真が撮れた。
 
「遊んでないで早く帰ってこい」なんて返事がこないか、
ちょっとドキドキしながら妻に送信すると
 
「いいねぇ」
と返信がきた。
 
すると不思議なもので、今までだと見向きもしなかった
街路樹や建物が気になり始める。
 
少しでもキラキラした部分が見えると、自転車を路肩に止めて
ああでもない、こうでもないと悩みながら写真を撮るようになった。
 
せっかく会社を定時に出たのに、
いつもと変わらない時間になるのはここだけの秘密だ。
 
休日になると子どもたちの絵本を借りに図書館に行くことがある。
近道になるので公園の遊歩道を歩きながら写真を撮っていると
隣から「これはどう?」と妻のスマホがすっと出てきた。
 
全く同じものが写っているのに何かが違う。
なんというか、とても自分好みの写真だった。
 
「こんな見え方があるのか!」
と思う内心、
しょーもない見栄を張って
「ええやん?」
と返してみる。
 
こっそりと同じ角度から撮影してみるが
同じような写真にはならない。
 
少しでも上手くなりたい気持ちが勝ち、
「どうやって撮ったん?」
と素直に聞いてみるとちょっと嬉しそうに教えてくれた。
 
どうやらコツがあるらしく、
以前ツイッターで話題になっていた三分割法というのを使ったらしい。
 
モニターに映る画像を漢字の”囲”のように
縦に2本、横に2本の線を引き、
その線が交わったところに撮りたいものを合わせると
いい感じに撮れるそうだ。
 
試してみたところ、なるほど確かにちょっと上手くなった気がする。
しょーもない見栄を捨ててほんとうによかった。
 
そんなやり取りを見ていた5歳の息子が
「ぼくもやりたい!」と言うのでスマホを預けて見た。
これまた面白い写真を撮ってくる。
 
宝くじみたいなもので8~9割ぐらいは
ボケボケだったり、何かわからない線だらけの写真だが
そのうち何枚かは自分だと撮ろうとすらしない、大当たりの写真が写っている。
 
もともと目線が低い事もあって、見上げた大きな木が更に大きく見えたり、
小さくしゃがみこまないと見えない、隙間からの写真があった。
 
「どうやって撮ったん?」
なんて聞くと身振り手振りを使って一生懸命に説明してくれた。
キラキラとしたその目には、
きっと私には見えなくなった世界が見えているんだろうなぁと思うと
とても羨ましくなった。
 
普段、自分が見ている目線はがっちがちに凝り固まっている。
まるで映画館で見る映画のように、一方向からしか見えていない。
同じ映画なら、座席を変えたところで見え方にきっと大差は無いだろう。
 
ところが演劇が好きな友人に言わせると、
正面の席が一番いい席ではない。
一番横の席や二階の席からだと、
同じ演劇でもぜんぜん違う物語のように見えるそうだ。
 
そんなことがあるのか、と思いながらふんふんと話を聞いていた。
今まで同じお芝居をいろんな席で見たとはないが、
想像するだけでもなんとなく理解出来た気がする。
 
はっと思ってこれまでに撮った写真を見返してみた。
どこを切ってもなんだか同じ写真ばかり。まるで金太郎飴だ。
好みがあるのかもしれないけど、どれも似通っている。
 
居ても立っても居られず、
どうやったら写真が上手くなるのか、と
写真が好きな友人に質問してみた。
 
一番早いのは人の写真をたくさん見て真似ることだよ、と教えてくれた。
まずはたくさんの写真が投稿されているインスタグラムで
自分が好きだと思った写真を集める。
そしてなぜこの構図にしたのか、をその人の気持ちになって考えるといいのだそうだ。
 
自分で目線を変えるのは本当に難しい。一人だと気づくことすらできなかったなと思う。
それなら人の目で見たものを教えてもらったほうが圧倒的に早いことを教えてもらえた。
 
「無駄」を決めるのも、結局は見方次第だと思いながら通勤路を走る。
妻ならどう見るか。友人ならどう見るか。
そんな事を考え始めると今日もキラキラ光るものが増えていく。
 
 
 
 
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2019-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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