メディアグランプリ

巨匠のお相手は大変だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
あまり映画を御覧にならない方でも、スタンリー・キューブリックという監督の名は御存知だろう。もし、キューブリック監督を知らなくとも、『2001年 宇宙の旅』という、名作SF映画の題名なら一度は御聞きになった事が有るだろう。
『2001年 宇宙の旅』は、キューブリック監督の代表作だ。
 
兎角、天才肌の人間との付き合いは難しい。天才の程度は有るにせよ、浮世離れした方が、確かに多い気がしてならない。また、天才と呼ばれる人に限ってプライドが高く、自らの提案や行動は、必ず相手の役に立つと信じ込んでいる節がある。その辺りが、付き合い辛い原因なのだけれど、問題なのは、天才当人から自分は付き合い辛い人間だという自覚が、微塵も感じられないことだ。
頭は誰より、良い筈なのに。
 
スタンリー・キューブリック監督は、その作品内容が難解ではないものの、常人には到底近寄ることが出来ない崇高さを感じる。その為、監督自身はとても頭が良いと周囲から思われているし、観客はそう信じ込んでいる。
「キューブリック監督は、IQ(知能指数)が200を超える」
と、まことしやかな噂が、一部のファンの間で流れ、既成事実とされていた。
 
21世紀を迎える前に、キューブリック監督は惜しまれつつ亡くなった。1999年のことだ。新聞に載った追悼文に、
「スタンリー・キューブリック監督程、21世紀を一緒に迎えたかった偉人は居ない。そう、それは“2001年”だからだ」
と、印象深いものがあった。
故人となった監督から、新作映画が生まれることはない。一部の、リマスター版を除いて。
 
しかし、2019年11月、スタンリー・キューブリック監督を取り上げたドキュメンタリー映画が、2作同時に公開された。ドキュメンタリー映画なので、死後も新作が登場したことに、何等の不思議はない。
その作品とは、『キューブリックに愛された男 ”S Is for Stanley”』と『キューブリックに魅せられた男 ”Filmworker”』だ。
 
『キューブリックに愛された男』は、偶然キューブリック監督を空港から乗せることになった、タクシー運転手のドキュメンタリーだ。彼自身は、あまり映画を観なかったので、キューブリック監督がどれだけの人物かを知らなかった。その、自然体の対応が、監督に気に入れられ専属運転手として契約する。当時、監督の周りには余程“よいしょ”が多い人間ばかりだった様で、監督も癖癖(へきへき)としていたそうだ。
これもよくある話だが、運転手だけの契約だったはずが、どんどんと指示が多くなる。有能で無くとも、相性のいい人間という者は居るもので、キューブリック監督にとってその運転手は、とても役立つスタッフとなって行った。遂には、監督のマネージャー的存在にまで登り詰める。
困ったのは、運転手の家族だ。昼夜を問わず、一年中呼び出されている内、家庭内がギクシャクする。当然のことだろう。思い余った運転手は、辞職を願い出て受理される。家庭に平和が戻った。
数年後、再会した監督と運転手は、思い出話に花が咲いたという。
こんな映画だ。
 
一方『キューブリックに魅せられた男』は、監督の作品に陶酔した役者が、契約寸前の舞台の仕事、それもかなりの大役を棒に振って、キューブリック監督の新作映画のオーディションを受けるところから始まる。
役者当人は、既に監督自身に魅入っているので、この作品がきっかけでまるで‘キューブリック組’の一人として、行動する様になる。一流監督の作品に出演する、一流の役者達と知り合ううちに、自分の役者としえの限界を知ることとなる。このまま、監督と離れてもよさそうなものだが、心を既に奪われていた彼は、撮影スタッフとしてチームに残ることを選択する。
脚本書き、撮影、照明、録音、編集と、殆どの作業をキューブリック監督直々に叩き込まれた彼は、映画技術者として腕を上げ、有能な映画人となっていく話だ。
 
両作品は、スタンリー・キューブリック監督の同時期を、別々の面から描き出している。そこで、受動的に監督に気に入られた男と、自ら積極的に監督に近付いた男の対比を、同時に観ることが出来て、私達、日本人観客は幸運だったと思う。
 
ロードショーは終わってしまったが、御興味が有る方は、ネットやレンタルで公開されると思うので、是非、御覧頂きたい。
 
当然のこととして、両作品を続けて観ることをお勧めする。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/event/103274
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事