中年のおじさんたちへ「まだまだ師匠でいてください」
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:大西 栄樹(ライティング・ゼミ平日コース)
「あと10年もしたら、俺も含めてここにいる半分以上の人が会社にいなくなるな」
そうつぶやいたのは、約5年ぶりに会った大先輩。
彼の表情からは寂しさのようなものが溢れていた。
11月に業界展示会が東京で開催され、全国の営業担当者がお客様対応のために集まっていた。総勢300名ほど。その平均年齢はパッと見た感じ50歳くらいだろうか。
これほどに中年のおじさんが集まっている状況を見るのは、新橋の夜くらいか、ここくらいだろう。
私の勤める会社はメーカーであり、いわゆる日本企業の典型的なバブル世代が社員の大半を占め、逆ピラミッド型の年齢分布で、20~30代が少数という状況だ。
先輩に言われたあと、この300名のうち150名くらいがいなくなると思うと少しぞっとした。日本が抱えている問題をリアルに感じた瞬間だった。
集まった50代の社員同士の話に耳を澄ますと、60歳までの定年をどう過ごすかが話の中心になっていた。30代前半の私には、新入社員で入った時にお世話になった方ばかりだ。
「まだ30代やろ? もう俺らは終わりやから、あとは若いもん頼むな!」
そう言って大先輩のOさんはお客様の元へ向かっていった。
50代といえば、早期退職を促されたり、第一線からは退いて退職に向けて考え始めるのだろう。なんとなくもう希望とかを持つ年代ではないのかもしれない。
私にその実感はないが、想像は十分できる。
Oさんは、私が入社した際に「営業のいろは」を色々と教えてくれた。電話の仕方から、提案書の書き方、接待の作法、さらには、カラオケでの盛り上げ技まで。
そんなOさんは、会社ではそれほど出世はしなかった。チャンスもあったが、当時の上司とうまく噛み合わなかった。ただ、お客様からの信頼は厚く、営業としての成績は良かった。後輩の指導にも力を入れてよく飲みに連れて行ってくれた。前向きで、よく話を聞いてくれたし、意見も取り入れてくれた。一緒に働いたのは2,3年だが、Oさんを私は尊敬していた。
50代ビジネスパーソンのことを、みなさんはどう思っているだろうか?
いつも過去の経験から自慢話をする。なにかにつけて否定的。話を最後まで聞かない。
こんなイメージがあるだろうか。
私自身も正直そう思うことはよくある。
40代の時にはよく話をきいてくれて前向きだったOさんも今は50代前半。久々に会ったOさんの発する言葉は少しネガティブで、どこか当事者意識が薄れているように感じた。
自慢話ばかりするというようなことではないが、40代の頃の勢いのようなものはなくなっていた。
「やはり年齢で変わってしまうのか……」
私は、仕方ないと思うと同時に、残念な気持ちも感じた。
50代はやっぱりこうなってしまうものなのかと。
展示会で再会した後日、Oさんに仕事を相談する機会があった。
その相談は、Oさんのお客様の守秘内容に関わるもので、難しい交渉が必要な内容だった。
私がOさんに相談するやいなや、
「わかった。お客様には俺から話しておく。なぜやるのか目的だけしっかり教えてくれ」
そう言って、お客様と交渉を進めてくれた。
その結果、1週間もしないうちに、お客様の了解をとりつけてくれた。
やっぱり、長年の関係構築の力はすごい。そしてスピードも早い。
その時、Oさんを一般的な50代のイメージに当てはめようとしていた自分を恥じた。
「Oさんにしかご相談できない内容で助けてほしくて……」
そう相談した時のOさんは、私が新入社員でOさんが40代だった頃のように勢いを取り戻していた。
「そうか、ネガティブになっていたわけではないのか」
当事者意識が低いと思ったのは、Oさんがうまく自分の立ち位置をコントロールして出過ぎないようにしていたことを勘違いしたのだった。若手がやりやすいように少し自分を引いてくれていたのだと気づいた。そして、いざとなったら力を全力で発揮してくれる。
まるで、スター・ウォーズのマスターのように弟子のピンチで助けてくれるのだ。
この出来事から私はふと思った。
一般的に50代が活かされないとか言うが、ある意味、20代~30代のせいかもしれない。
もっと私たちが歩み寄って、先輩の力を頼りにすれば良いのだ。相談すれば良いのだ。
50代の人は、どこかで自分たちが色々言うと若手が嫌がるからと遠慮しているのだと思う。
もちろん、そうでない人もいるだろうが、もともと人のことを尊重してくれたりする素地のある人は遠慮していることがあるのだと。
一方で、50代の先輩たち。
あまり遠慮ばかりせずに若手に積極的に関わってきてほしいと思う。若者は心のどこかで頼れる師匠(マスター)を見つけたいと思っている。
ただ、自分たちの意見や経験を押し付けるようにならないようにだけ気をつけてほしい。
押し付けではなく、そのノウハウ、スキル、人脈など経験で培ったものをうまく伝授してほしい。
何もせずに辞めていくのはもったいない。
まだまだ、私たち若手は、おじさんたちを必要としている。
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