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合理的な彼女が、


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田実省二郎(ライティングゼミ日曜コース)
 
 
僕の妻は合理的だと思う。本人から「わたしって合理的なの」と口にするのは聞いたことはない。しかし、僕が感じる妻は合理主義者だ。
 
妻は、高校を卒業してから30歳過ぎまでアメリカに住んでいた。アメリカ人のことをよく “合理的だ”というが、妻の合理主義はアメリカ暮らしの影響も多分にあるのだろうと思う。
 
妻の合理主義は、生活スタイルの節々から見つけることができる。料理の下ごしらえは、洗いものが最小限になるように進めていく。だから肉を着るのは後回しになる。なるほどそうか。しかし僕の場合はというと工程通りに下ごしらえを進める。ちなみに、この順序の呼吸が合わず、新婚して間もなく喧嘩した。
 
冷蔵庫のてっぺんにはサランラップを被せる。理由を聞くと、掃除が大変だからだと。被せたサランラップを取り外して取り替えれば、掃除完了。僕は見た目をこだわりたい方だから、冷蔵庫にサランラップが被っているその光景が受け入れがたく、選ばない方法だ。でも妻からしたら、至極シンプル。だって、大掃除しなくて済むから……。
 
そのくせ、歯ブラシのときの歯磨き粉はあふれんばかりの量を使う。ぼくが歯磨き粉の効果は量に比例しないから少しでいいのだよ、とアドバイスしても、磨いた心地がしないからこれでいいの、と言う。なんだよ、これはまったく合理的じゃない。
 
妻は外資系企業に勤めている。やはり外資系が肌に合うらしい。外資系のオフィスってどんなの?と聞くと、目線の高さ以上のパーテーションで囲われている、という。ぼくなんかはそれに違和感を感じる。目で感じたい、というか顔を突き合わせて結束を高めるという意識がある。違和感というより正直反対だ。しかし、妻からしたら与えられたタスクをきちんとこなしているし、何がいけないの?といった風だ。それに、おかし食べてもばれないよ、だと……。
 
妻と僕とは、反対とまでは言わないけど、タイプの違う人生を歩んできている。高校までぼくはもっぱらスポーツに打ち込んだ。妻はクラシックバレエに吹奏楽だ。
 
僕は両親のおかげで、小さい頃からオーストラリア・アメリカなど海外に触れる機会がままあった。だから“海の向こう側”みたいな憧れは解消していて、社会に出る頃にはむしろ日本のことをもっと知ろうと思っていた。反対に妻は高校生のときからアメリカへの興味が強かった。世代が同じふたりなのに、高校生の頃に流行したJ-POPの話をしても、まったく盛り上がらない。そりゃそうだ、妻は日本よりアメリカの方を向いて生きていたのだから。
 
ぼくは大学を卒業してから、いわゆる体育会系バリバリの会社に入社した。体育会系のタテ社会気質を今でも好むわけではないけど、別にそれが悪だとも思わない。妻は、高校を卒業した後、ニューヨークに行った。そして数年後に結婚をし、子を出産し育て、今は高校生になる。
 
妻は30歳を過ぎた頃に日本に帰ってきて、娘を育てるため必死にシングルマザーとして働いた。帰国後今までの間に、妻は何度か日系企業に勤めたことがあり、やはり肌に合わないと思ったことが多かったらしい。全員同じ出社時間、そして朝礼、上司へのワントーン上げた挨拶など。ぼくの社会人生活といえば、始業前の掃除に始まり、社訓の読み上げ、帰れるタイミングは先輩からの飲みの誘い、というバリバリ封建的な環境で育った。
 
妻は出産後、宝ものであると同時に現実的な子育てという両極端の狭間で、必死に働き娘を育ててきたのだろう。僕は40歳前まで自分のことだけを考えて、ひたすら自由に生きてきた。
 
妻と僕の共通点ってあるのだろうか?
 
僕はコンプレックスといえるくらいの欠点がある。それはすごく忘れっぽいことだ。人から聞いた話を覚えることができない。3歩歩くと忘れる犬同然。笑えないくらいに、本当に忘れっぽい。
 
あらゆる場面でこれは致命的だ。特に女性は、パートナーが“気にかけてくれていること”に愛情を感じるものだと思う。しかしそんなコツを知っていても、ほとんど覚えていられないのだから意味がない。
 
「え、覚えてないの? この話し、前にしたじゃん!」って機嫌を損ねられるのは僕だって本望ではない。だけど、覚えられないのだからこれが理由で別れの原因になることは絶対に避けたい。
 
妻と結婚するより前の、お付き合い開始の告白の時、
「申し訳ないのだけど、とても自分は忘れっぽいところがある。直したいのだけど直らない。だから、今後も『え? 覚えてないの?』って思うときがあると思う。そこだけは理解してほしい」と伝えた。ロマンチックな瞬間に興ざめな念押しの一言を。
 
今、妻なのだから、告白は成功して、そして夫婦となることができた。そしてとても仲がよい。互いに違うってことを受け入れることができているからだと思う。
 
カッコつけなくてよかったなって思う。告白した時あの一言が言えてなかったら、それを知らない妻はその後どんどんと不満が溜まっていっただろう。
 
僕らの共通点は前向きなことだ。ひたすら前だけ向いて生きている。だからうまく行っているのだと思う。
 
告白の僕の興ざめする念押しに彼女は、「いいよ大丈夫、そしたら同じ話で何回も楽しめるね」って受け入れてくれた。何度も話さないといけない、そんな非合理な選択を受け入れてくれたのだ。
 
ありがとう。合理的っていじってごめんなさい。
 
 
 
 
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2019-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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