メディアグランプリ

不惑のバレリーナ6年生は今日もピルエットが回れない


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:河内愛子(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ」(ダルビッシュ有/プロ野球選手・MLBシカゴカブス所属)
 
私は趣味でクラシックバレエを習っている。
と言っても小さい頃から習っているわけではない。35歳で始めて、つい最近6年目に入ったばかりのスロースターターだ。
 
私がバレエを始めたのは、そもそも体幹トレーニングが目的だった。
社会人になってからというもの、毎年の健康診断で体重は常に前年をクリア。気が付いたら13年間で約15%もの成長を成し遂げていた。ああ、これが売上の話ならどんなにいいか。
「さすがにこれはあらゆる意味でまずい……よし、ここは正攻法で有酸素運動だ!」と、朝近くの公園を走ることを思い立ったのだった。
 
実行に移すにあたりネットであれやこれやと情報を集めたところ、「長距離走は足ではなく体幹で走るもの。長距離を走るためには体幹を鍛えることが不可欠」という記事が目に入った。体幹を鍛えることで走るうえで効率の良いフォームを長時間維持することができ、パフォーマンスの向上だけでなく怪我の予防にもなるというのだ。
でもなぁ。ジムで重いもの持ち上げたり、家で腹筋したりとかするの? 絶対続かないよなぁ……もっと楽しんでやれそうなのないかなぁ。
そんな時に出会ったのがクーポンサイトに掲載されていたバレエのレッスンの格安回数券だった。曰く「バレエの基本は体幹」とのこと。まあ効果がなければ素直に家で腹筋でもしよう。騙されたと思ってその回数券を購入することにした。
 
始めた頃は座って横に開脚しても90度が関の山、骨盤は後傾する「パンダ座り」しかできなかった。
しかしレッスンを重ねていくうちにだんだんとバレエ自体が楽しくなり、今やY字バランスができるまでになった。なお長距離走は1年もしないうちに頭からどこかへ行った。
3年目にはバレエを始めた頃からの憧れだったトゥシューズの着用許可を先生からいただき、現在も週2~3回のペースでレッスンに通っている。
 
ある時、なぜバレエを習い続けているのか考えたことがあった。
 
はっきり言って私がレッスンを受けている姿は、それはそれは実にかっちょ悪い。
片足で立てばすぐにぐらぐらする。膝は曲がる。回転すると目が回る。軸はぶれる。脚を上げても「え、そんなもん?」くらいの高さしか上がらない。
おそらくあと10年怪我なく続けてようやく「踊り」っぽく見えるようになるんじゃないかな……いや、その前に加齢で筋力が落ちるか。
とにかくはたから見て「これじゃない」感半端ないと思う。
 
それでもバレエのレッスンを受けていて、一体何が楽しいんだろう。
きれいなものへの憧れ。運動不足解消。プロのバレリーナの先生の美しいお手本を間近で見られる。何かを継続している自分がちょっと誇らしい。「趣味はバレエです」と言っている私、女性らしくて凛々しくて素敵かも。
確かにどれもそうなのだが、本当の根っこではない気がする。
 
バレエの大きな特徴は、一つ一つのポーズに絶対的な正解が存在することだと思う。そしてそれは決して「完成」することはない。
 
吉田都様のような月に住む天上人から私ごとき底辺を這うど素人まで、レベル感は違えどバレエをやる人々はほぼ同じようなことを考えながらレッスンをしている。
もっとアンデオール(股関節から脚を外旋させること)したい。下腹部を引き上げたい。肩甲骨を下げたい。鎖骨を左右に開きたい。手足を長く伸ばして使いたい……。
そうした「もっと、もっと」の終わることのない繰り返しは、さながら「次の一桁」を永遠に求め続ける円周率の計算のようだ。
 
完成はしない。
でもスモールゴールはある。
そしてそのスモールゴールが訪れる瞬間がとても嬉しい。
 
じゃあ逆に、私はどんな時悲しいんだろう。
ああそうだ。努力なんかしてもどうにもならないってことを受け入れなくてはならないと理解した時だ。
人間関係とか。仕事とか。努力は嘘つかないなんて嘘ばっかじゃん! と思う時がとても悲しい。
 
あくまで私が取り組んでいるレベルにおいては、という条件付きだが、バレエは努力が実になる。ぐらつく時は必ずどこかに原因がある。
背筋と腹筋は使えているかな。背骨はまっすぐ伸びているかな。両肩と骨盤が描く線はきちんと長方形になっているかな……。そうやって頭の中でチェックリストを1つ1つ潰しながら体の使い方を直していくと、爪先立ちでもしっかりと立つことができる。間違っていたら立てないから身体から即時フィードバックがくる。
 
努力は嘘をつかないって誰か言って。
正しい努力を積み重ねればちゃんとうまくいくんだよって約束して。
でないと私、努力の力を信じることができなくなってしまう。
そんな「努力信仰」を叶えてくれているのが、私にとってのバレエなのだ。
 
そして今日も私は足1番からプリエを踏む。
いつか、理想のピルエットが回れる日がくることを信じて。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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