メディアグランプリ

「これ以上ほっといたら知らんで」と、子宮に言われました。


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記事:坂田文(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「えーっと、検査結果ですけどね、今のところ“異常ではない”範囲におさまってますよー。安心してくださいねー。」
と、丸顔のそのベテラン医師は、にこやかに私に告げた。
 
それは、私が初めて受けた子宮頸がん検診の結果だ。
 
がんは見つからず、子宮内膜症に関する数値が「異常」に近いながらも「異常ではない」ということだった。
年々、生理痛がひどくなってきているのは事実で、それは子宮内膜症の症状の一つでもある。
安心してと言われても、いつ「異常」にころぶかもわからず、まったく安心できなかった。
 
当時、私は勤務していたレストランで店長になったばかりで、それなりにストレスのかかる生活を送っていた。
最初は「生理が始まったな」と思っていたのだが、2週間を過ぎても出血が止まらなかった。
そんな状態は初めてで、慌てて婦人科に駆け込むことになった。
結果、血が止まらないのは「無排卵月経症」という不妊の原因にもなるものだとわかり、念のためにと、子宮頸がんの検診を勧められたのだ。
 
私は、もともと生理不順である。
というより、私の子宮は車のエアバッグのようで、私に大きなストレスがかかると、それを一手に引き受け、他へ不調がでないようにしてくれる。
その度に生理周期が乱れるのだ。
 
中学の時は、学校でも家庭でもうまくいかず、その3年間はきれいに生理が来なかった。
働き始めてからは、レストランの営業時間が変わり、生活リズムが変わると数ヶ月は生理が来なくなるのが普通だった。
生理が来ないことで初めて、自分にストレスがかかっていることに気づくのだ。
 
そして、働き始めてからの生理痛はひどくなる一方で、生理が始まる時などは、起き上がることはおろか、目を開けるのもつらいことが度々あった。
 
けれど、そこまで痛みがひどいのは年に数回で、その度になんとなくやり過ごしていた。
仕事終わりにはお酒をたくさん飲むし、普段のごはんといえばコンビニに頼りきりだった。
お世辞にも健康的とは言えない生活なので、もちろん子宮へもそれなりに負担をかけていたのは言うまでもない。
 
そんなある日、私は尊敬するソムリエの方のセミナーに行くことにした。
しかしその日は、目覚めた時から「生理がきそうだな」といういやな予感があった。
けれどもこの機会を逃したら、もうその方のセミナーには二度と行けないかもしれない。そう思い、出席することにした。
 
ワインをテイスティングしながら、セミナーが進んでいく。
中盤を過ぎたあたりから、お腹が痛み出した。
それでも、セミナーを最後まで聞きたい一心で、冷や汗をかきながらも意地になって席に座っていた。
 
終わった瞬間、講師の方に駆け寄りたい気持ちを抑え、私はトイレに向かった。
急ぎたかったが、よろよろとしか前に進めない。
 
生理が始まっていた。
ズキズキとした腹部の痛みとともに、ワインを口にしたせいか、吐き気もする。
 
何人もの人がトイレに入って、出て行った。
私は個室にこもり、大きく肩で息をしながら腹痛と吐き気がおさまるようにと願った。
 
しばらくトイレにこもった後、今なら家に帰れると意を決してトイレを出た。
電車に乗れば5分ほどで、家の最寄り駅まで行ける。
私は電車に乗ることにした。
 
けれど、今回の生理痛はそんなに甘くはなかった。
最寄り駅で降りた後も、まっすぐ歩くのがやっとで、また30分ほどトイレにこもるはめになった。
その頃には腹部の痛みは増し、吐き気はおさまらず、どうにか息ができるくらいだった。
 
それでも、家に帰らなければと気を持ち直し、ふらふらと手をあげてタクシーを拾った。
冷や汗びっしょり、息も絶え絶え、どうにか家までたどり着き、ベッドにすべりこんだ。
 
その頃には、腹部の痛みはピークに達していた。
太い丸太を突き刺され、前後にギコギコと動かされているような痛みだった。
そんな痛みは経験したことがなかった。
もういっそのこと気絶したい……、そう思いながら「痛いー!!!」と叫んだりして、最後には疲れ果てて寝てしまった。
 
目覚めた身体には、まだ腹部の痛みとだるさがあった。
「もう、限界か」そう思った。
 
「これ以上ほっといたら、もう知らんで!」
という、この痛い痛い子宮からの忠告を、私は聞き入れることにした。
 
それからは、生活習慣や食べ物など、なるべく健康的であるようにしている。
ずっと気になっていた布ナプキンも使い始めた。
使い捨てのナプキンに含まれる成分が身体を冷やすというのは前々から聞いていたし、布ナプキンなら生理中に限らず、冷え防止のために不快感なく着けられる。
 
子宮の問題に限らずそうだろうが、何か一つを変えたから問題がなくなる、という単純なことではない。
けれども、問題に向き合うことで、より良い状態を求めて自分の意識が変わっていくことが大切なのだ。
 
いまだに生理痛はあるけれど、それでも以前に比べるとずいぶん軽くなった。
検診の数値も、いまだ「異常ではない」の域にとどまってくれている。
 
生理痛がなくなるとは思っていない。
それでも、子宮や生理とのもっと良い付き合い方があるのではないかと、いまだ模索している。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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