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人生の問い――その人らしく生きることを支えるとは?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:美美NIIRO(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「わたしは何のために生きているの?」
 
ひと仕事終えて心の中にスキマがあいた時、こんな問いが浮かんできます。人生の問いは、重たくてシンプル。重たく答えようとすれば悩み深くなり、シンプルに答えようとすれば「ま、いっか!」で済んでしまうのかもしれません。
 
わたしは51歳6か月のもとナース。「ま、いっか!」と流せなかったばっかりに、人を支えるケアの研究を続けてきました。
 
生きる意味や目的を問うとき、その裏側に隠れた心は、大概「自分の価値」を探しているのです。
とくに、忙しく活動していても経験が積み重ならず「空虚な時間を過ごしているな」と感じた時は、人生の問いが湧きあがってきやすいものです。
 
そんなとき、他人の高評価は嬉しいものですが、そう都合よく評価が得られるとは限りません。そこで、他人の評価が得られなくても、自己評価が充分ならOKと割り切ろうとしますが、それも完全にはできません。何故でしょう?
 
人間は、自分を捉えるときに、自分以外の誰かを必要とするからなのです。そのため、自己評価をする自己の中には、既に、かつての自分を照りかえしてくれた他者が影のように含まれているのです。
自分を決定づける経験の中に、他者が取り込まれているなんて、ちょっと不思議です。
 
この、他者との関係性にまつわる不思議は、しばしば、ケアのなかで混乱を招きます。
ナースが一生懸命「患者さんのために」と思ってしていることが、いつのまにか「自分のため」にすり替わっていた……という「すり替え現象」がその一つ。他者に支援をする経験をお持ちなら、あなたにも思い当たるフシがあるかもしれません。
 
かくいうわたしも、恥ずかしながら経験があるのですが、それが人生を変えてしまいました。何故なら、すり替え現象を「人生の問い」でやってしまったからです。
 
ナースになって間もない頃、わたしは仕事でつまずき、「生きることをケアする立場なのに……」と罪を感じつつ「なんのために生きているの?」と自分を責めました。これはナースによくある現象です。このときのわたしは自分が救われたかった。けれど、幼い使命感が邪魔をして「助けて」と言えませんでした。
 
その後、閉じ込めてしまった救われたい気持ちは、いつのまにか「人を支えられる人になりたい」という強い動機に変質しました。同時に、助けてほしいという自分のニーズを、助けてほしい他人を助けられる自分になりたいというニーズにすり替えてしまったのです。
 
その結果、「わたしは何のために生きているの?」という人生の問いは、「その人らしく生きることを支えるためには何をしたらいいの?」という問いに姿を変えました。
 
この新たな問いの答えを探究するため、後に、わたしは研究者となりました。が、研究を大切にするあまり、それを阻むものをそぎ落とそうとし、結果、定職を離れ、専門を変えました。気づけば、在野で独りになっていました。
 
今から1年半ほど前、ちょうど50歳になった頃、求め続けてきた答えの輪郭がぼんやりと見えはじめました。そして、同じ頃、まるでアラームに目覚めさせられたように、自らの人生を振り返りはじめたのです。それはごく自然に、探究の軌跡と重なっていきました。
 
フィールドワークの結果と理論知の間を行きつ戻りつしながら少しずつ解明が進み、その後を追うようにして、人生の振り返りも深まりました。二つの軌跡は、まるでケアをするわたし自身とケアの対象である他者のように伴走し続けました。
 
こうして経過した約一年の後、わたしはとうとう答えを手にしました。
 
「何もしなくていい」……それが答えでした。
 
もしも本当に相手を支える覚悟があるならば、その人の傍らで、ありのままに生きる時間を持ち、同時に、ありのままに生きる相手をみとめること……それだけで充分なのです。
 
その人らしく生きることは、その人自身が「わたしは何のために生きているの?」と自らに問いかけ、自ら答えていく過程です。
つまり「生きる道を探しながら生きる軌跡」がその人らしさなのです。
 
そして、その人が生きる意味は、生きる道を探しながら生きていく過程から自然に醸し出される……だからこそ、傍らに立ち会う人は、何かをしてあげるのではなく、そのようなありのままのその人を、「その人だな」とそのまま受け取るだけでいい……。
 
さらに、自らがありのまま生きていることに自然な肯定感を持つには、ともに同じ時間を生きる他者もありのままで生きていることが大切です。何故なら、それは、自分が本当に許されていることを実感できる無条件の証拠になるからです。そんな関係性が実現する場は、互いに自分らしく生きられる本当の居場所の一つになっていきます。
 
これが答えのほぼすべてです。
誰でもわかっていること……ふりだしに戻されたようでした。
 
わたしは言葉を失いました。
「わたしは……何のために生きてきたの?」
懸命に生きてきた自らに裏切られたようで、人生をやめたいと思いました。
 
その後、思いがけず二つのギフトを受け取り、「何もしなくていい」という答えの意味を実感することになりました。
 
ギフトの一つ目は、様々な立場や角度から見える素顔のわたしを、周りの人がそのまま受け取ってくれたこと。二つ目は、生きる苦悩から救われたいと思う自らを支え続けるわたし自身との出会いでした。
 
成長した自らに気づかせてくれたのは、周りの人たちの存在でした。元気のないわたしをそのまま受け取ってくれる人たちが、生きる糧を与えてくれると同時に、自らの生きる力に気づかせてくれたのです。ごく自然に関わる他者として適度な距離で存在しつづけることが生きることを支える……二つのギフトは支えられる実感を運んできてくれました。
 
探究生活の発端になったニーズのすり替え(=助けてほしい気持ちを、他者を助けられる自分になりたい気持ちにすり替えた)は、時を経て、人生をやめたくなった自分を支え続けられる強さをくれました。
ありのまま研究に生きてきたわたしの価値がこの強さだとしたら、今度こそ、それを糧に他者を支えたいものです。「わたしは何のために生きているの?」と悩んでいた人が、「ま、いっか!」と笑顔で日常に戻って行く姿が、今後のわたしを支えてくれることでしょう。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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