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用もないのに真夜中にコンビニに行く


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ちゃんなな(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「……これがわたしなりの、毎日を楽しく過ごす秘訣です」
雑誌や新聞で著名人のインタビュー記事を読んでいるとよく目にするフレーズだ。
 
大人はみんな忙しい。
しかも仕事や家事、子育てで忙しい日々は何十年と続く。
なんとか生き抜くためにはその人なりの楽しみを持つことが大切だ、という共通認識があるから、「毎日を楽しく過ごす秘訣は?」とインタビュワーも質問するのだろう。
 
インタビューされるような有名人になる予定はないのに、なぜかよくある質問の答えを準備してしまう。
代表的な答えは、朝早く起きて行く散歩。お風呂上がりの入念なスキンケア。休日の昔からの仲間とのスポーツ……などなど。
あなたならなんと答えますか?
私の答えはもう決まっている。
「用もないのに真夜中にコンビニに行くことです」これだ。
 
真夜中24時。家の近くのセブンイレブンはこうこうと輝いているけれど、お客はもちろんほとんどいない。
自動ドアから飛び込んで、入り口すぐの雑誌ラックをチラリと見てからスイーツ、惣菜・おつまみ、パン、アイスクリーム、お酒とソフトドリンク、カップ麺、グミ……と徘徊し、それぞれの棚をじっと凝視する。
言った通り、別に買いたいものがあるわけではない。
こんな夜中に追加で食べたら明日の自分が後悔することはよく理解している。だから何も買わない。買っても朝に食べる。
ああ、店員さんには迷惑だろうな。
でもそんな不要不急のコンビニが、好きで好きでたまらないのだ。
近い世代の地方都市出身者には、もしかしたら共感してくれる人がいらっしゃるかもしれない。
コンビニは物心ついた頃からいつも生活のそばにあり、私の「自由」度のパラメーターとして機能してきたのだ。
 
私のコンビニとの出会いは小学5年生。
少し離れた塾までバスで通うようになって、はじめてその存在を知った。
コンパクトな店内にところ狭しと並ぶお菓子、飲み物、文房具。
近所の駄菓子屋とは異なる「大人向け」の品揃え。
もちろんスーパーやドラッグストアの方がもっと広くて商品が充実しているけれど、それらは「親と一緒に行くところ」だった。家族の食事のためにカゴいっぱいの買い物をする大人しか見たことがない。
一方コンビニを観察してみると、客は一つ二つの商品を手でつかんで持っていってポンポン買っていく。
限られた小遣いしか持たない小学生がなんとか立ち入りを許された夢の国、それがコンビニだった。
100円以下で買える、紙パックのフルーツジュース。ブルボンプチシリーズのラングドシャクッキー。
親に内緒で買うそれらは初めて手にした「自由」の象徴だった。
「いつかコンビニで、なんでも買えるようになりたい」そう思った。
中学に上がると、コンビニでの買い物は「合法化」された。
部活後、塾にそのまま行く場合、帰宅時間は21時を過ぎる。小遣いとは別に「塾の授業の前に何か食べなさい」と1回300円〜500円ほどのコンビニ予算がついた。
もう何を買っても「買い食い」と怒られることはないが、買っていたのはおにぎりか惣菜パン。それ以外のものはコストパフォーマンスが微妙だったり、塾の教室で食べるには臭いが強すぎたりして選択肢に入らない。
カップ麺などのインスタント食品は「身体に良くないから食べるな」と大人に言われれば言われるほど魅力的に映った。
小遣いでももちろん買える。だが買っても食べる場所がない。
棚を物欲しげに見つめつつ、自分はまだ「自由」ではないことを思い出しておにぎりだけ買う日々だった。
高校2年のとき、コンビニで忘れられない買い物をした。
チロルチョコ(黒蜜入りきなこもち)を30個、箱買いしたのだ。
中学の頃から変わらずコンビニではおにぎりと惣菜パンの日々が続いていたが、小遣いには少し余裕がでてきていた。
大好きだけど幼い頃は1つ2つしか買えなかったチロルチョコ。
これを箱買いできる自分はそれだけ成長したのだ、と私は小さな達成感を得ていた。
大学に入学しお酒が飲めるようになると、いよいよもう無敵だ。
おにぎり・パン・お菓子に限らず、すべての棚が自分のテリトリーになった。
アルバイトで稼いだお金で、サークルの部室でなんでも食べられる。
他のものを食べるお金も十分にも関わらず、一時期カップラーメンばかり食べていた時期がある。
「私はもう自由だ! 身体に悪いものも、臭いがきついものもなんでも自分の意思で食べてやる!」
 
それから社会人になって、使えるお金はもっと増えた。
大学生の頃は躊躇して買えなかったハーゲンダッツも、以前ほどは高級には感じない。
急いでいる時は商品の値段をろくに見ないことさえある。
でも別に、私は贅沢がしたいわけじゃない。
もっと美味しいものや珍しいものを買うなら高級スーパーにでも行けばいいけれど、私は相変わらずコンビニを愛している。
 
「コンビニで好きな時に好きなものを買える」
そんな子どもの頃の些細な夢は、今や完全に叶えられた。
新作のちょっといいプリンを買ってもいいし、明日飲むレモンチューハイを買ってもいい。
コンビニの冷凍のピラフって結構美味しいよね。
スモークタンなら、今の時間食べても罪はないかも。
パンやおにぎりやお菓子だけじゃない。あの日買えなかったカップ麺も含めて、すべての棚は私のために開かれている。
雨の日も風の日も、終電帰りの日も大事なプレゼンが終わった日も、いつもコンビニは私に無限の選択肢を提示してくれているのだ。
 
ああ、なんて豊かなのだろう。
仕事は毎日大変だけど、大人になってよかったな。
 
真夜中の誰もいない最寄りのコンビニで、一人感慨にふけるのだ。
ずっと日本にいるとつい見失いがちな、当たり前の生活の豊かさに気づかせてくれる。
「明日からもがんばろう。大人の私には、コンビニがついていてくれる」
 
だから自信を持って言う。
「用もないのに真夜中にコンビニに行くこと」
これが私なりの毎日を楽しく過ごす秘訣です。おためしあれ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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