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‘ありのままのわたし’になるために


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Nobu Fujioka(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
「あなたの詩が選ばれましたよ」
「え!」
 
小学3年生の時だった。
わたしの詩が選ばれた。
地域の学校が数校集まって何かをする。
連合という催しのひとつ。
連合文集というものに載ることになったのだ。
 
嬉しかった。
運動ダメ。
勉強ダメ。
と、クラスでまったく目立たなかったわたし。
親からは
「ほんとうはできる子なのに……」
といつも言われていた。
だから、選ばれたときいた時。
とても嬉しかった。
家に帰って、さっそく報告だ。
「ママ、わたしの詩が選ばれたよ!」
「よかったね!!!」
 
詩を書いたのはほぼはじめて。
運動がだめなわたしの気持ち。
徒競走でいつもビリになる。
その気持ちを書いたものだった。
 
‘かけっこのとき’
かけっこのとき
わたしはひとりだった
 
こんな感じで始まる詩だ。
うーん。
あんなに自信作だったのに。
その先をおもいだせない。
けれど、
すぐに書きあげられたこと。
歌詞のようにリズムよく書けたこと。
そのことについてはよく覚えている。
気分よく書き上げられた詩。
だから、
選ばれたときいて誇らしかった。
次から次へと
詩を書きはじめた。
 
その後の授業で
原稿用紙が返却されてきた。
わたしの原稿用紙に、
赤字の書き込みがあった。
詩の一部分が書きかえてある。
 
ああ、
こういう風に書くといいってことかな。
でも、詩は直すもんじゃないし。
なのになんで?
なんで、直してあるんだろう?
わたしの気持ちを書いたのに、
どうして直さきゃいけないの?
 
楽しみにしていた文集がとどいた。
ドキドキしながらめくる。
あった!
 
???
 
そこに載っていたのは
‘わたし’ の詩ではなかった。
赤字で直された後の
‘わたしもどき’ の詩。
驚いた。
わたし ‘ひとり’
で書いたものではない作品。
それが ‘わたし’
として載っていることに。
それが わたしの作品。
そう認められていることに。
 
‘わたし’ ではなく
‘わたしもどき’ の詩。
それが載っている文集をみても、
もうなんの喜びもわかなかった。
作品を認めてもらえたわけじゃなかった。
たまたま書けただけの詩だ。
だけど、とても悲しかった。
 
それからは詩を書かなくなった。
書くことに喜びを感じなくなった。
そのあとにもまだ試練はつづく。
中学受験のための国語。
そこでも、
容赦なく文章を直された。
 
文章には正解がある。
そう思いはじめた。
書きたいように書いてはだめなのだ。
 
もう、あの詩を書いたときの気持ち。
自分が原稿用紙に入り込んだような。
気持ちが歌うようにでてくるような。
そんな、あふれでる文章は思いつかなくなっていた。
 
わたし書くことは苦手なんです。
 
一時期は、あの出来事をなかったことにした。
ありのままの自分ではいけない。
と言われた気がしたから。
 
しかし、いまでは親になったわたし。
先生の気持ちがわかる経験をした。
こどもの勉強をみているとき。
わたしは先生と同じことをした。
娘の作文を添削していた。
こうすればいいよね?
そうやって娘の意見をきくふり。
は、もちろんなし。
そんなこころ配りはなにもなく。
ただ、
‘こうしなさい’と、直してしまった。
だけど、悪意はないのだ。
ただ、よりよくしてあげたい。
その気持ちだけ。
 
あ、もしかしたら。
きっと先生もこんな気持ちだったの?
 
運動も勉強もダメ。
目立たない子。
 
そんな子が自分の気持ちを表現した。
珍しく素直な気持ちを。
文集に選ばれたら、どうだろう。
きっと、自信になるに違いない。
 
そう、思って選んでくれたのだろう。
ここをもう少しだけ直したら、
もっとよくなる。
読む人には出来のいいものを見てもらおう。
そうしたら、もっと誉められる。
彼女のためだ。
 
いまは自由に文章を書ける。
自由に書いていいはず。
なのに、見張られている気がする。
気持ちをこめる気がしないのだ。
どうせ、わたしの文章は直されるのだ。
最初からそのつもりで書けばいい。
簡潔に、
すっきりと、
気持ちはざっくりと……。
 
しかし、人は欲張りなものだ。
あきらめていたはずなのに。
感動した本や、気持ちがこもったブログ。
そういうものに触れるたびに、
 
‘わたしも書きたい’
そんな、心の声が大きくなってきた。
 
ただブログを書くだけでは、
何もかわった気がしない。
ブログを書きかけても文章に満足できない。
初めては、放置する。
その繰り返し。
ついに耐えきれず申し込む。
書くための教室に。
だれかに教わるのはいやだった。
が、誰かに読んでほしくなってきたのだ。
教室に入った。
けれど、思うように書くことができない。
思うとおりに書かなくなってから、
本はたくさん読んできた。
いろいろな作風が自分の中にある。
混乱して書けない自分。
くじけそうになる。
 
でも、そのたびに天使がささやく。
「昔、文集に選ばれたよね」
「だから大丈夫!」
 
先生、ありがとうございました。
あの出来事。
いまでは
すごく助けになっています。
あのことがあったから、
いまこんなに一生懸命。
文章を書くことができています。
 
天使のささやきに励まされ、
わたしは今日もせっせと書いている。
‘ありのままのわたし’
を読んでもらうために。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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