メディアグランプリ

塔の下の魔女に子育てを問う


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記事:すぎうら けいこ(ライティング・ゼミ夏期集中コース)
 
 
「ラプンツェェェェェル~~髪の毛おろ~してぇぇぇぇ~」
 
悪役の魔女ゴーテルが塔の下から叫ぶ。
 
「塔の上のラプンツェル」は少し前にテレビでも放映されて話題になっていたディズニーのアニメ映画だ。
王様の娘として生まれたラプンツェルは若返りの力がある髪を持っていた。その力を欲しがった魔女ゴーテルは赤子のラプンツェルを誘拐し、自分の子どもとして塔の上に閉じ込め、育てていた。そして18歳になる今日まで塔の上で一人暮らしている。そんな風に物語は始まる。
 
ラプンツェルは何でもこなす。
掃除、洗濯はもちろん本を読み、絵を描いてギター、編み物、料理まで。
パズルとダーツ、ヨガやいたずら(友達のカメレオン、パスカルとかくれんぼをするのだ)焼き物からキャンドル作りまで精力的に動き続ける。
 
そして極めつけが
「ラプンツェェェェェル~~髪の毛おろ~してぇぇぇぇ~」
 
母と信じるゴーテルに叫ばれると、長い長い金色の髪の毛を塔の下まで下ろし、髪につかまるゴーテルを塔の上まで引っ張りあげ、ゴーテルに美しい金の髪を巻きつけて、歌いながら癒すのだ。ゴーテルの皺がよっていた肌はしっとりと輝き、黒い巻き毛は張りとツヤを取り戻し、はちきれんばかりの若さを取り戻す。
 
2011年公開のこの映画はディズニープリンセス界ではまだまだ新入りながら、プリンセスが集合する場面では常に中心を陣取っている、いまだ人気の衰えないプリンセスの一人だ。
 
私の娘も同じく、誕生日直前にテレビで見たラプンツェルにどハマりして、バースディプレゼントはラプンツェルグッズで部屋がピンクに染まった。
そんなわけで、録画した映画を繰り返し、繰り返し、一緒にまたは、家事をしながら横目で、延々と見させ続けさせられた。
 
そこでふと気づいた。
 
ゴーテル子育てうまい……
 
塔の上に閉じ込めらていたラプンツェルはあるきっかけで盗賊のユージーンと一緒に旅に出る。その先々で出会う人を癒し、魅了してゆくのだ。優しく時には勇敢に、長くてきれいな髪を振り乱し、少しすき間の空いた前歯をみせながら(たぶん塔の中で矯正はできなかったのだろう)笑顔で勇気と知恵を使い、困難を乗り越えてゆく。
このラプンツェルを育てたのは紛れもなくゴーテルなのだ。
 
誰が見守るかで人は変わる。
生まれ持った性質というものはあるが、それを伸ばすもつぶすも親次第だ。
それなのにここまで良い子に育っているのは……
やはりゴーテルの子育て法には隠された秘策があるのかもしれない。
 
こんどはゴーテルの動きに注目して映画をみなおした。(勝手に映画はリピートされているので、ちょうど良い所をみればいい)
 
ゴーテルは待つ。
塔から逃げ出したラプンツェルを見つけた時も、すぐに声はかけずに待つのだ。
チャンスがくるまでベストなタイミングを見計らって待つ。
子育ての本でもよく出てくる。
「待つ」
これがなかなか難しい。
しかし待ちながら、本人が気づいてもどってくるように仕掛けるゴーテルの手腕はみごとだった。
 
ゴーテルは一人じゃ動かない。
敵の敵を見つけて仲間に引き入れ、上手に利用した。
これも良く言われることだ。
人間は1人で子育てできません。1人で子育てしていると寂しくなるのは当然。
周りの人に頼りなさい、と。
 
全てゴーテルは自分のためにやった事だったが、結果ラプンツェルの成長を促すことになった。
 
ゴーテルは船長だ。
毎日海の様子を見ながら行く先を決め、問題があれば早めに摘み取って、手下を引き連れ世の中から、ラプンツェルという宝を隠し、それを磨きつづけた。
 
そうしてラプンテェルは隠された秘宝となった。
 
秘宝ラプンツェルは
母ゴーテルに言われたことを鵜呑みにせず、
自分で考え、
行動し、
そして自分のためではなく
人のために動く事で、
周りが協力し、
自由を手に入れた。
 
結局これはゴーテルの教育の賜物なのだろうか?
ラプンツェルのもともとの素質が良かったから?
 
これが子どもを育てる事の難しさなのだと思う。
正解は無い。
マニュアルも無い。
どちらが正しかったのか検証はできない。
なぜなら全ての人間は全て違うからだ。
ラプンツェルが良い子だったからうちも娘を塔に閉じ込めよう!
という訳にはいかないのだ。
家庭の事情もある。(家には塔がない)
金銭的なものもある。(家には塔を建てるお金もない)
全ての事柄が複雑に絡み合って、
様々な環境で、色々な人々に囲まれて子育てをしてゆく。
 
だから育てる者が逸脱した考えをもっていても、
素晴らしい子どもが育つ事もあるし、
逆に大学教授の子どもが犯罪者になってしまう事もある。
 
そうして子育てとは……? と、
途方もない海原で一人取り残されてしまうのだ。
 
誰にでも使える魔法のような解決策は見つからない。
人はそれぞれ違うから。
それでも私は子どもを育てる。
育てていると思ってつけあがっていると教えられたりする。
やりすぎたな。
今日は何もできなかった。
と反省しながら。
やれることを毎日すこしづつ。
自分で見つけてゆくしかないのだ。
 
迷ったらゴーテルのように少し待ちながら。
色んな人に頼りながら。
 
今日も壊れたコンパスを振り回し、大海原への旅を楽しもうと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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