メディアグランプリ

言葉は循環する。


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記事:すがまゆうこ(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
言葉は良薬にも毒薬にもなりうる。
対面のコミュニケーションなら、相手の表情や、声の音程、声色、その場の雰囲気から読み取ったりと、いろんな感覚がフル稼働する。思い違いや勘違いならその場で話し合えるし、嬉しいことはその場で、笑顔でお礼も言える。文字だけのコミュニケーションは、同じようにはいかない。なかなか難しい。
 
先日、PTA関連で役員の方に、ある確認をしてほしい旨の一本のメール送った。特段、失礼な書き方はしていないと思う。今までのお付き合いもあり、初見の相手ではない。いつも通りのメールのはずだった。
しかしながら、いつもはすぐ返信があるはずなのに、メールの返信がない。
あれ? 私の書き方がいけなかったか?
ほかの人にも確認してもらったが、特に失礼はないと思う、という見方だった。
 
個人的に連絡をしたところ、どうやら怒っているみたいだ。こちらとしては、そんなに怒られるようなことをしたつもりはないが、つもりはつもりだ。
 
相手の方は、自分の思う正しさを振りかざし、怒りともとれる思いの丈を綴った返答をくれた。
見えない私に、一方的に吠えることで、当の本人はすっきりしたかもしれない。
私は、といえば何が相手の琴線に触れたのかも分からず、表情も読み取れなければ、どれくらい怒っているのかも見えない。
迷惑をかけようと、怒られようと、困らせようとしているわけではなく、色々考えて行動したことだったが、相手には伝わらなかったようだ。伝え方が良くなかったのかもしれない。いろんな感情がぐるぐるし、モヤモヤだけが私の心に残った。
相手の方の、何気なく発した言葉が、文字が、一生懸命取り組んだ、私の心を削る刃になってしまっていた。
 
最近、ツイッターによる誹謗中傷・ネガティブで悪質な発言により人の心を蝕む事例をよく耳にする。ツイッターは匿名性が高いこともあり、それを利用して攻撃的になり、平気で人を傷つける人もいるのだが、でも、私はツイッターに助けてもらっていた。
 
あれは10年前の事だった。初めての子育て、知らない土地、相談する相手もいない。私は孤独な子育ての真っただ中にいた。夕方のお散歩は、遠くを見ながら、涙が出てくる。そんな中、助けてくれたのがツイッターだった。
 
子供と同じ月例のハッシュタグをたどる。私と似たような境遇の人がいる。
何度か、文字を交わすことで、同じ「初めての子育て」を戦っている、戦友のようになってきた。私たちの毎日のつぶやきは、日本のどこかの、顔も、本当の名前も知らない、でも同じ時間を過ごしている、心強いママ友たちが、そこにいることを証明していた。
 
子供が保育園に行き始めてすぐの時だった。
熱がでて風邪を引いたようだ。小児科にかかり、薬も処方してもらったが、ぐったりしたままだ。
「どうしよう、子供の熱が下がらない」
「違う病院にいってみたらどう?」
すぐにアドバイスをくれたのは、ツイッターのママ友だ。
別の小児科にかかると、大きな病院を紹介してくれた。肺炎になりかけていた。
夜中、病院の大部屋で泣き叫ぶうちの娘。不安で申し訳なくて仕方ない。やっと、娘が寝た、緊張の糸が切れたのか、スッと涙が静かにこぼれてしまった。
すぐに、ツイッターでその心の内を吐露する。すぐさま、ママ友が優しい声をかけてくれる。夜中の遅い時間なのに。この時ほど、ツイッターの存在に助けられたことはなかった。
 
先のPTAの方とのメールのやりとりと、ツイッターのママ友とのやりとり。
同じ、文字で伝える言葉だが、大きな違いがある。
 
相手を想う気持ちだ。
 
自分の気持ちに正直に生き、投げかける言葉や文字が刃になっても自分気持ちをぶつけるのか。
相手のことを想い考えながら、言葉を考え文字に綴るのか。
結局のところ、正解はないのだと思う。
 
価値観は価値観で、人それぞれ。
自分の価値観で測るから苦しくなるのだ。
 
相手の価値観は、相手の価値観、そういう考えもあるね。と認めるだけ。
何十年も生きているのに、そんなシンプルなことがなかなかできないのだ。
だから、苦しくモヤモヤとするのかもしれない。
 
言葉は循環する。と私は思っている。
私が心に傷を負うような、マイナスな言葉を受けているという事は、私も何気なく発している言葉で誰かを傷つけているのかもしれない。ということだ。
 
それは、友人なのか、親なのか、子供なのか、わからないけれども、きっと特に深い意味はなく、ポッと浮かんで何気なく発した、私の価値観で言い放った言葉や文字。
 
受け取った相手は、その言葉が大きく振りかぶった刃のようになり、刺されて血を流しているのかもしれない。
そして、巡り巡って、私も同じように刺されたのかもしれないな。と思っている。
 
私は、あの10年前、ツイッターでもらった、数々の温かい文字のシャワーを受けたからこそ、不安な中でも楽しく子育てができたのだ。私も私なりに、ではあるが、見えない相手のことを想ってメッセージを何度も送った。文字の交流は、今でも続いている。
 
私は、相手が笑顔になるような言葉がけをしていきたい。
特に、メールやラインでの文字のコミュニケーションの時にはなおさら。
言葉は循環するのだから。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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