メディアグランプリ

大事なことは、進化論が教えてくれた


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田清美(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
「サラリーマン」「OL」という言葉は、近い将来、死語になると予想されているという。
これからの時代は、「独立」「起業」が生き方のキーワードとなるので、「サラリー=給料」をもらわない働き方が当たり前になってくるから。
また、昔は、働く女性のことを「オフィスレディー」と表現するのが定番だったが、今や必ずしもオフィスで働いているとは限らない。
これも時代に合っていない、と感じる人が多いのだそうだ。
 
サラリーマンはともかく、OLは確かにこの10年、少しずつ見かけなくなってきた言葉だ。
 
そんな死語候補? となっている言葉がタイトルの作品がある。
 
「OL進化論」という漫画雑誌「モーニング」に掲載されている4コマ漫画。
1989年から30年続く長期連載の作品だ。
 
シンプルな線で、可愛らしいタッチの作風、ほのぼののほほんとした雰囲気で、肩の力が抜けた、いい意味でゆるい作品である。
 
会社に関わる人の日常に起こるエピソードが、楽しく愛情を持って描かれている。
基本的に一話ずつ独立したお話で、固定の登場人物たちはいるのだが、一話限りの名もなきキャラクターが膨大にいる。
そのキャラクターたちの、こういうことあるある! や、こういう人いるいる!が作品に溢れているのだ。
 
時代背景や季節感が反映されているので、読み返すと、その時の雰囲気を思い出し、笑っちゃうほど懐かしいこともある。
ハイレグ、ソバージュ、就職売り手市場、買い手市場、流行りの食べ物、経費削減、晩婚化、少子高齢化……。
しかし、実際の時事ネタや事件はダイレクトに描かれておらず、少しぼやかしてある。
そのため、登場人物たちは活き活きと飛び回っているが、生々しさはない。
そのリアルとファンタジーの絶妙なバランスが、とても心地よいのだ。
 
作者の秋月りすさんは「ふつーの生活を送るふつーの人々の出てくるふつーの漫画です。原則として、よくありそうな話ばかりです」とおっしゃっている。
その、ふつーの人々の日常が、時に皮肉に、時に哀愁を誘い、愛情たっぷりに描かれている。必ず最後にくすっと笑わせてくれる。
その様子が、実在する人たちのようにとても身近に感じられるのだ。
 
私は、何度もこの本を読んで、そのたびに楽しみ、キャラクターたちに助けられてきた。
こんな飄々とした課長がいたら、会社も面白いのに。
1人暮らしのネタに激しく共感。そうそう、物産展で故郷を思い出しがち。
35歳で独身で、のシリーズは、同志! 心強かったり、年齢過ぎちゃったな……と苦笑いしたり。
 
会社でしんどい時、プライベートで落ち込んだ時、キャラクターたちに慰められてきた。
寄り添ってくれているが、リアルではないので、ある意味突き放されている。
共感はするよ、でも後は自分で考えな。
そんな頼もしい友人のようなのである。
 
そして色々なことを教えてもらった。
既婚OL、ワーキングママ、親の気持ちから、老眼、四十肩まで。
現在絶賛四十肩中なのだが、おかげで心構えが出来た部分もある。
 
大事なことは、OL進化論に教えてもらった。
私の愛読書ナンバーワンである。バイブルと言っても過言ではない。
 
2004年には第8回手塚治虫文化賞短編賞を受賞された。
そして、昨年30周年を迎えた記念として、5年越しに今年一挙4冊出るそうで、ファンとしては、小躍りするほど嬉しい。
 
7月に出た新刊で、秋月りすさんはこう言っている。
「ネットや携帯など、新しいモノが世の中に登場した時、作品の中にどう取り込んでゆこうか、いつも慎重に考えてきました」
OL進化論は、過去作品を読んで、懐かしいけれども古臭さを感じない。
作品と現実の、時代背景や出来事との距離感が絶妙だと感じていたのは、作者が慎重に判断していたから。
さすがだな、と思わず唸ってしまった。
だからこそ、作者曰く「気づけば老舗」となるまで続く、ご長寿漫画になったのだろう。
 
そして、次の言葉が衝撃だった。
「でも、今回のコロナ禍については、生活の根本が一気に変わってしまったので描かざるを得ませんでした。30年以上連載を続けてきて初めてのことです」
 
作品と現実の間に、絶妙な距離感を保っていた作品ですら、コロナ禍は取り入れざるを得なかった。
何故ならば、日本中が、いや世界中が、同じ禍に直面しているから。
現状コロナのない世界は存在していないから。
 
「ふつーの生活を送るふつーの人々の出てくるふつーの漫画」の人たちが、リアルではまだ非日常と感じていたコロナ禍を、これが今のふつーだよ、日常だよ、と真っすぐに突き付けてきた。
 
「描かざるを得ませんでした」の言葉で「withコロナ」がストンと腑に落ちたのだ。
私たちは受け入れた。さあ、あなたの覚悟はどう? と、笑顔で問われた気分だった。
覚悟は……まだ足りなかった。
私は、コロナの流行が落ち着けば、多少はコロナ前の日常が戻るだろうと考えていた。
コロナが落ち着くまで、ちょっと様子を見ようと甘く思っていた。
 
マスクを着けたキャラクターたちは、それは上手くないねと語る。
日常は流れていく。戻ったり様子を見ていたら、取り残されるよ、と。
ほのぼの可愛いイラストの奥には、鋭く冷静な洞察力が潜んでいた。
背筋がぴっと伸びた。そしてますます好きな作品になった。
やっぱり大切なことはOL進化論に教えてもらうのだ。
 
「OL」が死語と感じられる程、時代は進化してきた。
連載当初は考えられなかった発想だ。
まさに進化論。
時代の流れを、日常として自分事として手軽に楽しく感じられる「OL進化論」。本当に奥が深い、お勧めの作品だ。
 
フィクションだと侮るなかれ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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