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自分の仕事が「将来なくなる仕事」だったら


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記事:武内大輔(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
A Iに仕事を奪われる。
ビジネス雑誌やネット記事でよく見るタイトルだ。
将来なくなる仕事がリスト化され、なくなる理由も書いてある。
機械に置き換え可能な仕事はなくなる。
例えば、事務員、銀行員、警備員。
一方で機械に置き換え不可能な仕事はなくならない。
例えば、営業職、介護職、コンサルタント。
「ふーん」
と他人事のように思いながらページを見ていた。
ある箇所でページを送る指が止まった。
「交通機関の運転手」
自分の仕事が将来なくなる仕事に分類されていた。
理由を見る。
「ルートに沿った単純な運転であれば機械によって代用できる」
なんとなく理解はできる。
CMでは自動運転によるクルマが人を乗せて走っている。
ここ数十年でスマホが当たり前になり技術進化のスピードが速い。
もしかして、自分、ヤバい?
 
世間の動きも気になるが、他にも気になることがある。
最近、同期が辞めている。
入社8年目くらいから辞める同期が出始めた。
年齢にすると30歳前後。
転職するにはちょうどいい時期とも考えられる。
辞めた人を見て「あれが正解かもな」と別の同期が言った。
将来なくなる仕事、そこにしがみつくことは愚かで、間違いなんだろうか。
 
人がやるより機械がやった方が人件費が浮く。
人がやるより機械がやった方が間違いが少ない。
じゃあ人は何ができるんだろうか。
 
ある人に道を聞かれた。
「アオトに行きたいんですが」
夜の10時、上野駅。
聞いてきたのは高校生くらいの女の子だった。
遊んでいる感じはしない。むしろ大人しそう。
一瞬、アオトが何のことかわからなかった。
調べると京成線の青砥駅だと分かった。
それが分かれば簡単だ。
乗り換えアプリを使って入力する。
乗車駅が上野、降車駅が青砥。
入力したらすぐ出てきた。
自分のスマホの画面を見せる。
「これで行けますよー」
アオトの子、スマホを見る。
あまり納得した様子でなかった。
「上野から一駅で隣の日暮里で乗り換えですよ」
画面の内容を伝えて説明してみる。
「はい」
と小さめの返事。
「6番線に行けば大丈夫ですよ」
別のホームを指差して促した。
アオトの子は歩き出した。
良かった。分かったみたいだ。
 
あとからその件を考えてみた。
実際にアオトまでは行けたんだろうか。
高校生くらいに見えたし、遅い時間だしちょっと心配だなあ。
自分の振る舞いについても振り返る。
せめて最初のホームくらいは一緒に行ってあげた方が良かったかな。
あまり東京に詳しそうじゃなかったし。
自分がやったことは乗り換えアプリを使っただけである。
ここで、気づいた。
「あ、自分のやったことって機械みたいだ」
なんでアオトの子はスマホで調べず自分に聞いたんだ。
もしかして電池が切れていたのかもしれない。
だとしたら自分が「紙に書きますか」とか他の手段を言えたかもしれない。
調べたけどもやっぱり不安だったから自分に聞いたのかもしれない。
そしたら自分がやるべきことはスマホの画面を見せつけることではなかった。
アオトの子の不安を取り除くことが必要だった。
 
何でも検索できる便利な世の中になった。
でも「人に聞く」という行為はなくなっていない。
なぜか。
「人に聞いたら安心できるから」だと思う。
本屋で在庫があることは知っていても位置がわからなければ店員に尋ねる。
ランチで限定10食と書いてあれば、残っているか店員に尋ねる。
人に聞けば、不安が取り除かれて安心できるのだ。
どれだけ検索しても出てこない答えを人が持っている。
 
アオトの子はアオトへの道順を知りたかった。
しかしそれだけでなく「人に聞く」ことで安心したかったのだと思う。
自分は機械的な対応をしてしまった。
アオトの子は不安を取り除けなかった。
あの時、アプリを見せつけた自分は機械そのものだった。
アオトの子は道順を検索して欲しかったのではない。
自分がもう少しにこやかに、明るい声で、丁寧な所作でいたら。
アプリに頼りきりにならなければ。
アオトの子はきっと安心できたはずだ。
 
交通機関の運転手は将来なくなる仕事に分類されていた。
今のまま、同じように仕事をしていたらそうなるかもしれない。
アプリを見せつけた自分のように機械と同じになるだろう。
そうならないために、人にしかできない仕事はないだろうか。
例えば自動運転にしても「人間らしさ」を残すことができるのではないか。
自動運転はブレーキがキツすぎると聞いた。
それならば人に優しいブレーキを研究するとか、今の自分にしかできないことがあると思う。
 
自分の仕事は将来なくなる仕事かもしれない。
ただ、その「仕事」は100%機械にとって代わられるようなものなのか。
そんな簡単に「上書き保存」できるものではないはずだ。
その「仕事」を細かく分解していけばまだできることがある。
それはその仕事を専門にしている自分が気づくべきことだ。
人にしかできないことを「名前をつけて保存」できる可能性がきっとある。
 
ある上司に言われた。
「君らの世代は大変だと思うよ。俺らと違って環境の変化が激しすぎる。でも泣き言いっても何も変わらないんだよね。だったら必死に喰らいつくしかない」
喰らいつく、という言葉が印象に残った。
 
辞めた同期が正解で自分は不正解?
そうじゃなくて、辞めた同期は正解で辞めなかった自分も正解にしてやりたい。
「人の不安を取り除くこと、安心させること」がヒントだ。
将来なくなる仕事、と言われても出来る事を必死に探してやる。
まだ、諦めない。
喰らいついてやる。
 
《終わり》
 
 
 
 
***
 
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2020-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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