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障がいのある人限定で雇い続ける理由

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:洲脇大輔(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「今日もよろしくお願いします!」
緊張しつつもやる気のある声が毎朝響きます。
 
これはうちで働くスタッフの声。
日替わりで月水はあんちゃん(50歳男性)、火金はあきな君(40歳男性)に来てもらっています。
うちで働くスタッフはあだ名で呼ぶようにしています。
最初の面接の時にだいたい決まります。
あんちゃんは他でもあんちゃんと呼ばれているという事で、あんちゃんと呼んで欲しいと言われ、「あんちゃん」に決定。
あきな君は苗字が中森で、しかも、中森明菜が好きだから「あきな」と呼んで欲しいと言われました。
はい、最初の仕事体験の時にです。
さすがに僕も最初の切れのあるジャブに一瞬たじろぎましたが、悟られまいと「うん、分かった、あきな君ね」と平静を装い切りました。
しかし、完全に当たっていましたね。
 
うちで働くスタッフは「障がい者に限る」と決めています。
遡れば9年前からずっとです。
かれこれ5人のスタッフと関わってきました。
最初に障がい者のスタッフを雇った理由は2番目の息子が生まれたことがきっかけです。
その子は生まれたときから耳が無く、お尻の穴も無く、とても不思議な赤ちゃんでした。
この子が大きくなったら手話を使うことになるかな? 聾の方に来てもらったら自然と手話が覚えることが出来るかな? 耳が聴こえなくて成長するにつれて困りごととかあったら相談できるかな? と下心満タンで、聾の方にスタッフとして来ていただいたのが始まりです。
その方は当時57歳のおばさんでした。その方はお仕事もよく出来て、元気で、息子の事もとても気に掛けてくれました。そして、その方のお母さん(80歳超)がとても喜んで下さいました。「娘が最近楽しそうで、本当にありがたく思っている」と仰るのです。
もういい年齢の親子でもずっと心配があり、幸せを願っているんだと知りました。
本人だけではなく、ご家族や知り合いも喜んでくれるのです。
しかも、誕生日やクリスマス、お正月、子どもの日等には何かと御祝やお料理の差し入れを下さるのです。
ただバイトに雇うだけですよ。この本人以外が喜んでくださるということに、あきな君のジャブと同じくらいの衝撃を受けました。
それ以来、雇うのは障がい者の人限定にしようと思ったのでした。
その後はうつ病の方、聾の方、統合失調症の方と続きます。
 
障がいのある人を雇うということは陶芸と同じです。
陶芸家が一輪挿しを作ろうと思っても、土は湯のみになりたがっている場合があります。
そんな時に無理して作ろうとしたら、グシャっと潰れたり、いびつな形になってしまい、気に入る作品には仕上がりません。
でも、その土の性質を見極め、このような形になりたがっている、この形なら耐えられる、美しくなる、と土に寄り添い、ろくろを回していけば、あらまぁ不思議。なかなか良い感じに仕上がっているではありませんか。
障がいのある人も同じで作業にも得手・不得手があり、こちらから掛ける言葉にも響く・響かないがあります。
しかし、それらがばっちりハマった時、感動するような仕上がりとなるのです。
 
あきな君は最初来た時にはシールを貼るのも同じ場所に貼れず、簡単な機械の使い方も覚えることが出来ず、ミスも多発していました。何カ月たってもあまり上達は見られず、僕は少なからずショックを受けていました。いや、あきな君も同じ気持ちだったと思います。
でも、諦めずに言葉をより上向きの言葉に変え、任せる仕事の幅も増やし、ひたすら信じて寄り添い待っていました。すると、ある時期を過ぎると驚くほど作業が上達し、仕事も早くなりました。
僕はあきな君の事を信じていたはずなのに、こんなにも自信をもってテキパキ動くあきな君になったとは信じられません。
素晴らしい出来栄えです。
でも、まだ完成ではありません。
彼はきっともっと輝くと信じています。
 
釉薬をかけて器を焼くと、思いもよらない色合いで出来上がる瞬間がきっとあるでしょう。
彼らはそんな可能性を秘めています。
一緒に仕事をしていると楽しくもあり、心配でもあり、成長に喜ぶこともあり、ちょっとうっとうしい時もあり、日々の仕事にちょっとした刺激を与えてくれます。
50歳になるあんちゃん。彼は確認グセがすごいのです。例えば200gという重さを量る時にラベルを2回、3回、4回と見て確認するのです。そして、たまにジーっとラベルを見ているのです。手を洗うと4分掛かります。僕らから見たらちょっと異常ですが彼にとっては必要な行動と思われます。
なかなか改善されないので、もう諦めていました。ですが、ついこの前、かなり克服して作業が早く出来るようになったのです。これにも感動しました。
 
彼を変化させたのはあきな君のようでした。いつもは1人ずつ来てもらっているのですが、ある1日だけ2人に仕事をしてもらいました。その時のあきな君の仕事ぶりを見てあんちゃんは自分で改善したのです。
まさに一皮むけて、キレイに発色した器になったのです。
 
そして、僕の陶芸家としての嬉しくも寂しい瞬間は作品が売れる瞬間。
(本当は陶芸家じゃなくて、ただのコーヒー豆焙煎屋です)
彼らが旅立つ瞬間です。
他の職場で働けるようになってここを巣立ってくれるのは本当に嬉しいことです。
でも、ここでずっと働いてほしいという想いもあるので、巣立ってしまうと少し寂しいです。
ですが、彼らのように働きたくても、なかなかアルバイトでも雇ってくれるところはありません。ですので、ここを踏み台として利用してもらって、次のステージに行って欲しいのです。
 
次に待っている土が控えているのですから。
もし、あなたも誰かを雇える立場だったりしたら、1つの選択肢として障がいのある方を雇ってください。
素晴らしい世界が待っているはずです。
 
≪終わり≫
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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