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コンプレックスは、実は最大の味方

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コンプレックスは、実は最大の味方
記事:大沼芙実子(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「あぁ、ふみちゃんはひとりっ子だからね。お母さんとお父さんに大事にされてるからねー」
 
この言葉が、すべての始まりだった。
その日から、「ひとりっ子」はわたしの最大のコンプレックスで、最大のライバルになった。
 
この言葉は小学生の頃、習い事の先生が言った言葉だ。
習い事が終わり、同じクラスのみんな、親がお迎えに来たときだったと思う。
親同士が他愛もない日頃の情報交換をする中で、わたしに関するなにかのエピソードが話題に上がったのだろう。
ちょうどクラスが終わり、出てきた先生もその会話に加わり、出た言葉が「ひとりっ子だからね」というこの言葉だった。
 
当時のことはよく覚えていないけれど、
どんな文脈で放たれた言葉だったのかわからないけれど、
この言葉は当時のわたしをぐさっと、深く刺した。
わたしは「ひとりっ子」で、「普通」ではなくて、親に甘やかされている情けない子供だと、周りの友人との間に太い線を引かれた気がした。
 
あれ、わたしみんなとは違うんだ。だからみんなに近づかなきゃいけないんだな。
 
漠然と、だけど強くそう思ったのを覚えている。
 
そこから、わたしの中で「いかにひとりっ子だとバレないように生活するか」ということが至上命題となった。
 
「ひとりっ子はわがままだ」と言われないように、よっぽど気心の知れた人の前以外では、なるべく自己主張はしないようにした。
友達の家で、数種類あるケーキを選んで良いと言われたら、必ず「一番最後に残ったものが欲しい」、というようにした。
 
「ひとりっ子だから、全部親にやってもらっていて何もできない子」と思われないように、いつも人並みの行動を気にかけた。
学校で何か集団行動をするときには必ず周りを見回して、わたしが取っている行動がひとり逸脱していないか確認した。できないことがあったときには、バレないようにこっそり隠れて、家に帰ってふさぎこんだ。
 
常に周りを気にしていた。
家には親しかおらず、同世代のお手本がいなかった。
正しいのか。浮いていないのか。
「ひとりっ子だから」と言われない自分であれているのか。常に気にしていた。
 
あいにく地元にはあまりひとりっ子がいなかった。
だから珍しいものだと、自分でも思い込んでいたのかも知れない。
 

 
高校に進むと、ひとりっ子も割とたくさんいた。
そして意外なことに、そこにはわたしの怯えていた「ひとりっ子」の概念を覆す人たちがたくさんいた。
 
明るくて友達とすぐ馴染み、人気者のひとりっ子。
 
センスが良くて独特で、浮いているのではなく、周りからは一目置かれているひとりっ子。
 
気配りが抜群で、縁の下の力持ちとして真似できない力強さを発揮するひとりっ子。
 
これまでわたしの思っていた「ひとりっ子」のマイナスイメージを颯爽とかっさらい、それよりもひとりっ子ゆえに築いてきた独特の持ち味があるように感じられた。
 
あれ、そうなんだ。
別に悪いことでもなんでもなくて、ありのままひとりっ子である自分を認めても良いのかも…?
 
大学生以降、大人になってからは、ひとりっ子であることを気にすることは少なくなった。
それでも兄弟を聞かれて、「いないんだよね〜」と答えたとき、「ひとりっ子なんだ! え〜、意外だね!」と言われると嬉しかった。
ほらみろ、これまでのわたしの努力の賜物だぜ。そう、得意げな気持ちになった。
 

 
30歳も近くなった最近、知り合った友人に向けて改めて自己紹介をする機会があった。
内容は自由、自分のことを好き勝手に喋って良い、という縛りだった。
さて、何を話そう。わたしを表すものってなんだろう。
 
そう思ったときにすぐ浮かんだのが、なぜか「ひとりっ子」ということだった。
 
わたしの自己紹介スライドの最初は、「ひとりっ子が嫌でした」というところから始めた。
 
そうやって作っていくと、するする言葉が出てきた。
ひとりっ子が嫌だったこと。
だから周りをひたすら気にしていたこと。
他人の生活に対して憧れを抱いていたこと。
 
そこで気がついた。
わたしが自己紹介で唯一自分の好きなところとして伝えたかった、「好奇心旺盛」という性格は、このコンプレックスから来たのではないか、と。
 
大人になってからは特に、いろいろなものに対する興味が湧いてきて、気になったらすぐに首を突っ込んでやってみる、ということを信条にしていた。
 
他人の話を聞くのも好きで、なんでその仕事にしたのか、だとか、どういう生き方をしていきたいと思っているのか、といったことを聞くのがとことん楽しかった。
だから人にインタビューをして記事にできるようになりたいと思い、何回かインタビューもやってみたりした。
 
そういえば、携帯のメモ帳をを開くと、初めてあって話した人のストーリーがいくつもメモされている。
その人はどんな人で、どんなルーツで生きてきて、どんなターニングポイントがあって、今の生き方を選んでいるのか。今後、どんなふうに生きていきたいのか。
そういう話を聞くのが好きだった。
 
これはまさに、ひとりっ子である自分が嫌で嫌で、自分ではない人みんな、に憧れて、敬意を持って周りを観察していたことに由来しているのではないか。
 
そう気付いたとき、図らずもひとりっ子というわたしの最大の敵は、しっかりとわたしの中に取り込まれていて、大好きなわたしの長所を作ってくれた養分となっていたのだと知った。
 
大嫌いだった、最大のライバルだったわたしのコンプレックス。
気がついたらそれは、最大の味方になっていたみたいだ。
コンプレックスがあったから見えてきたこと、自分が成長できたことーーきっと、誰にでもあるのではないだろうか。
 
これからも、このコンプレックスで、かつ最大の味方と、一緒に歩いていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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