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大切なことほど「言いかえる」


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記事:ちゃちゃき(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「欲しい本があってね、ちょっとお出かけしたいなぁ」
 
娘は読書好きである。新型コロナによる休校明けの中学校で、図書室に毎日のように通いつめ、ついには図書委員になった。そんな娘は、たまに冒頭のようなことを言う。私と娘が住む小さな町には、こじんまりした書店はあるものの、本の品揃えは限られている。したがって、何か欲しい本がある、または、欲しい本を探したいとなると、大きな街に出かけるしかない。
 
なんとも微笑ましいストーリーに読めるが、これは実は「表」のストーリーでしかない。
 
娘は、実はサイゼリヤのピザが食べたいのだ。小さな町にはファミレスはなく、隣の街に出かけるしかない。ただ、まだ中学生の娘を、一人で遠出させるわけにもいかない。なので、娘はサイゼリヤのピザが食べたいという「裏」のストーリーを言いかえ、「欲しい本を買いたい」という表のストーリーを考えて話しているのだ。
 
なんともかわいい振る舞いである。しかし、実際、私が仕事で携わるインタビューなどでも、こんなことが頻繁に起こる。つまり、「大切なことほど言いかえる」ということだ。
 
大切なことを伝えたい。それはどんな人でも思うことだが、言葉でのやりとりになると、何故か冗長になっていたりする。それは何も、大切なことを覆い隠そうとしているのではない。むしろ、大切なことを強調しようとしているのだ。
 
それは、夏目漱石が”I love you.”の訳として「月が綺麗ですね」を挙げたという逸話にも通じる。単に「愛している」では伝わらない想い、あなたが私にとって大切なのだということを伝えるために、わざと「月が綺麗ですね」という回りくどい言い方を選び、使っているのだ。
 
この言いかえの多くは、比喩表現と言われている。例えば「ライオンは王だ。」といったメタファー(隠喩)で、これは類似したもので表現するやり方だ。また、メトニミー(換喩)やシネクドキ(提喩)といった比喩表現がある。それぞれ、「白バイに追いかけられる」といった警察官を道具で表現したり、「花見に行く」といった桜を花というもので言いかえたりする、表現方法だ。
比喩表現の細かな区別をわかる必要はないが、このように多種多用な言いかえの技法があること自体、言いかえることの重要性を暗に示しているのではないか、ということを考えている。
 
このように「言いかえ」のやり方が多岐に渡り、それが単なるレトリックではなく、自然に溶け込んでいることは、何を示しているのだろうか。それは、「大切なことはストレートに言いにくい」ということではないだろうか。
 
例えば、話し手として、恋愛上のパートナーや仲間に「あなたのことを大切に思っています」と伝える時、同じような、直接的な言葉で伝えるだろうか。二回目、三回目、それ以降で、やはり言いかえをしていくだろう。
大切なことだから、繰り返し伝える。でも、受け手の身に立ってみると、毎回、同じ言葉を繰り返されたら、それはそれで冗談っぽく聞こえてしまわないだろうか。そうすると、本当に大切に思っているのか、疑わしくなってきてしまう。
 
前述したインタビューの仕事の例で考えると、やはり大事なことを言いかえる人は多い。インタビューでお互い信頼関係ができていない時に、社会で批判されやすいことを大切に思っていて、それを言いたいとする。例えば、twitterで裏アカウントを持っているのだ、などといったことだ。そうすると多くの人は、この人は信用に足るのか、ジャブを打ったりすることがある。
例えば、同人誌に描くことが好きだ、といった趣味があった時、それを最初からストレートに表現してくれる人は少ない。「ちょっとした本を書いていて」などと言いかえて表現する。それを受け手として受け止めていくことで、信頼関係ができる。信頼関係ができると、徐々にストレートに表現してくれたりする。
 
「欲しい本があってね、ちょっとお出かけしたいなぁ」
 
冒頭の例に戻ると、実際、表のストーリー自体である、欲しい本があることも事実だ。なので、言いかえのない言葉もまた、大切である。だから、大切なことは別に一つではない。サイゼリヤに行きたい以外にも、もしかしたら娘が、父である私と思春期を過ぎたら気軽に出かけられることが、それほどに多くないことをなんとなく悟って、そういったことを言っているのかもしれない。
 
せっかくのお出かけの機会を逃さずに、娘との時間を大切にしたい。それが私の「大切なこと」だ。
 
 
 
 
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2020-09-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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