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親バカのすすめ


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記事:永田浩子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「すごい……。これは親バカの集合だ」
私は心の中でつぶやいた。
 
娘が2歳になったばかりのころ。とある有名な子どもタレント養成所のオーディション会場。到着すると、そこには親子連れが百人以上はいたのではないだろうか。順番待ちに列をなしていた。
 
私は雑誌で広告を見て、娘のとっておきの笑顔の写真を送り、応募した。ちょっと試してみようという軽い気持ちで、書類審査に出し、合格の通知に、意気揚々と、実技審査を受けに来たのだ。
毎月、審査は行われている。それなのに、この多くの親子連れ。「ほんとに書類審査をしたのだろうか?」という疑う心と、「これは親バカの集まりに違いない」とまさに自分を見て思った。
 
娘は決して、誰が見てもテレビに出ているタレントのようにかわいいとは言えない。とても個性的な顔だと思う。目も一重。でも、愛嬌はとてもいい。人見知りもしない。やることは枠からはずれている。この性格的なところで、何か才能があるかもしれないという期待もあった。
軽い気持ちで応募したものの、『合格』の二文字は、親の判断も狂わせた。
実技審査も、もちろん『合格』の通知がきた。父親も気をよくし、数十万円もするタレント養成のコースに申し込んでしまった。
結果は、ほんの1、2回のレッスンに行ったきりだったと思う。今では「バカな良い体験をした」と笑える思い出だ。
 
実力や子どもの資質を無視して、こんな無駄遣いをしてしまうのは、なんともおバカさんだ。しかし、大なり小なり、すべての親は親バカではないか、と感じる。いや、親バカのチカラが、子どもを愛するチカラであり、子どもを育てるエネルギーになると思う。
 
娘は「枠からはずれている」と先ほど述べたが、私の子ども時代とはまったく違う性格だ。
私は親がとても厳しかったので、いつも『いい子』だった。大泣きでもしようものなら、布団で抑えられた。押し入れにも入れられた。その連続でしつけられた。だから、人前ではいつもきちんとし、しっかりとしていた。
しかし、娘ときたら、泣き方も尋常ではない。私が車を運転するため、チャイルドシートに乗せれば、乗っている間、1時間でも2時間でも泣き続けた。抱っこを手に入れるまで、あきらめずに泣いた。
ほしいものや気に入らないことがあれば、ショッピングセンターでも、路上でもどこでもかまわず、地べたに寝転んで、だだをこねて、大泣きをした。
自分が行きたい方向があれば、親が反対方向に進んで離れていっても、おかまいなしで突き進んだ。
とにかく抑えられて育った私には手に負えない、我が道を行く様子に、私は手を焼いた。生まれたばかりの赤ちゃんのときから、あまりに泣くし、手を焼きどおし。眠れないということもあり、イライラはつのる。私は、虐待をする人の気持ちがわかると思った。手をあげそうになる気持ちをぐっとこらえてあやした。
歳をある程度とってから産んだ子どもだったのと、夫が心理学の先生であったのもあり、受け入れる気持ちが少し育っていたことが幸いだった。母やまわりの人もよく手伝ってくれたので、“虐待”ということにならずにすんだ。
だからこそ、子育てに、誰かの助けは絶対に必要だと思う。
そして、『親バカのチカラ』だ。
 
娘は、小学校に入ってからも、問題ばかり起こしていた。先生からの呼び出しや、お叱りの電話は何度あったかしれない。あまりにひどかったので、区役所の相談や面接にも学校から行くように言われた。面談の末、娘のための特別な先生がついたぐらいの状態だった。
それでも、私は娘を信じた。「この子は才能があるから、みんなと一緒の枠の中におさまらないのだ」と、言い聞かせた。「枠におさめようとするから、問題が起こるのだ」と正当化しようともしていた。
 
どんなことがあっても、我が子を信じるしかない。
今、高校生になった娘はカナダにいる。
このコロナ禍の状況の中、どんなに心細い思いをしているだろうか。しかし、自分が信じた、やりたいと思った道にまっすぐ進んだ。
日本をたったのは、まだ、世界中が新型コロナというものがどういうものかもわかっていない1月末だった。2月ごろは、カナダの高校で東洋人である娘は、「菌だ」といわんばかりのいじめを受けていたそうだ。それにもめげずに、彼女は友だちを何人も作った。しかもたくさんのお客様の前で、ソロで歌うというチャンスも手にしたと手紙に書いてきた。
なんとたくましく育ったのだろうか。私にはできないことをやってのけている娘をとても尊敬し、頼もしく思う。
 
子どもがかわいくてたまらない時期はほんの一瞬で、あっという間に、いろんな苦労や悩みが出てくる。自分の子どもと言っても、まったく違う一人の人間。子育ては、ほんとにたいへんなお役目である。このお仕事をやりきるには、なんといっても『親バカのチカラ』が必要だ。「親バカだ」と、誰に言われようとも、子どもを愛する気持ちに正直なのが一番よい。どんなに器量がよくなくても、どんなに問題児でも、親にとってこれほどかわいい子はいないのだから。
 
そして、子どもを愛することはきっと、幼い頃の自分、インナーチャイルドを愛することにつながっていると思う。私も親に抑えつけられてしっかりとした自分になる前は、大泣きして、“だだっ子”の娘と同じ自分がいたに違いない。この“だだっ子”の幼い自分を、娘を愛するように愛して抱きしめよう。
『親バカ』のチカラで。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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