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人生にエラーはない。楽しみながらトライ&トライだ、と思った瞬間。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:白銀肇(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
「自分のことと思ってその気になれば、なんでもできるものだ」
まさにこれを地でいっている人と知り合い、そしてこれを体験した。
この連休中での出来事だ。
 
「私の知り合いで、自分で山を切り開いてそこで生活している人がいるんだけど、その暮らしぶりを体験してみない?」
連休の数日前、友人からそんな誘いがあった。
その友人は、希望退職で会社を一旦辞め、次のステージを思案している私の事情を知っている。
だから誘ってくれた。
もちろん、そのお誘いに乗ったのは言うまでもない。
 
その友人は、連休前にそこへ行くという。
前半に用事があった私は連休の後半に一泊二日で合流することにした。
 
その友人の知り合いが……、というと長くなるので以後は「彼」と表現しよう。
 
彼が暮らしているのは、三重県伊賀市というところ。
この地名を聞いてひょっとして、と思う方もいるであろう。
そう伊賀忍者発祥の地だ。
 
訪れたその日、最寄りの駅まで友人と彼が車で迎えにきてくれた。
山を切り開いて……というから、彼に対して筋骨隆々なイメージでいた。
しかし、彼はほっそりとしてて、にこやかに挨拶してくれたその姿はイメージとは程遠かった。
聞けば、年も同年代で生年月日は10日ほどしか違わない。
一緒に来ていた友人も生まれは同年だから、オーバーフィフティが3人だ。
 
車の中でそんな話を咲かせていたら、少し小高い丘に建つ彼の家が見えてきた。
少し離れてみたその家は、ちょっと小ぶりで山小屋といったイメージだった。
そんな家も彼が一人で建てたという。
実際に家に近づくと驚嘆に変わった。
これを一人でやったものとは到底思えないつくりだったからだ。
しかも、彼は大工でもなんでもないというからその驚きはなおさらだ。
 
その家は、外壁も内装も2×4という工法できっちり頑丈に作られていた。
外装もきっちりと塗装されて、見た目には住宅街の新築とまったく見劣りしない。
 
間取りは10畳ほどの1Kだが、天井が高く部屋の1/3ほどのロフトがはりめぐらされている。
そして台所はシステムキッチン。
お風呂場はまだ工事中だったが、一人用のユニットバスが組み込まれていた。
家の裏側になる北側には小高い丘が切り立っているが、西側は丸太の支柱でしっかりくんだ広い資材置き場が併設されている。
玄関がある南側と東側には広いウッドデッキがはりめぐらされている。
間近でみると、遠くでみたような小ささはまったく感じない。
ここまでの家をよくぞひとりで仕上げたものだ。
もう驚嘆でしかない。
 
土地は父親の土地の一部を譲り受けたというが、それも最初は山林だったいう。
その山林を自ら伐採し、整地し、そして家を建てたというからさらにまた驚きだ。
周りを見る限り、そんな山林だったなんて印象はとても感じられないぐらい見晴らしもよく、住む場所としての環境は充分に整えられていた。
 
お茶をいただきながらそんな話を聞いたあと、彼の普段の作業を手伝った。
 
家の北側の少し小高い丘に、伐採した丸太が数本置いてあった。
直径25〜30センチ、長さ3〜4mほどの大きさだ。
その丸太の木の皮をめくり資材置き場に運ぶ、これが最初のミッションだ。
 
木の皮は、手持ちの電動カンナみたいな機械でめくる。
初めて触るその機械の扱い方や注意点の説明を受け、5kg以上はあろうかと思われるその機械を持ち作業に取り掛かる。
 
日々、簡単ながらも筋トレやランニングをしている。
体力はそれなりにあるだろうと思い勇んで作業に取りかかったものの、1本をようやく終えたあたりで左手に力が入らなくなってきてしまった。
その機械操作は意外と繊細で、思いのほか体力を使っていた。
 
そんな出鼻をくじかれたような思いをしつつ、ようやく一本完成。
次の作業はこれを運び出す。
ここで、はたと気づく。
 
足元の丸太は相当に重い。
一人の人間がひょいとかついで……などというシロモノではない。
専用の運搬具で運ぶか、複数の人間で運ぶことしか思いつかない。
 
いまは私という人間が手伝いに来ているから人手はある。
でも、いつもは彼ひとり……?
あれ? そんなときどうやってこれを運ぶのだ??
どう考えても無理だろう。
 
そんなことを訊ねると、彼は答えてくれた。
 
「思いのほかひとりで何でもできるもんだよ」
笑いながら彼はさらに話しをつづける。
 
「どうやったらこれができるだろう? と考えたら、あれしてみようか、これしてみてはどうだろう、と意外にあれこれと知恵も浮かんでくる。ひとりだから結局は自分で何とかせなあかんしね。」
 
そうだとしても足元に転がっている丸太はあまりに重たすぎるだろう? と思いつつこの時は彼と二人で丸太を運び出していった。
 
そして、彼の言ったことを実感することが次の日に起こった
 
この日も、別の場所ではあったが、昨日と同じように転がっている数本の丸太の皮をめくることだった。
しかし、作業しているうちにこの丸太の虫食いがひどいことがわかり、建築用の資材にはせずに40センチほどの長さに切って薪にすることとなった。
 
木の皮を削るところと切断するところは、作業場所が別だった。
それは、丸太の移動が必要であることを意味する。
 
このとき彼は別の作業があった。
丸太の移動は、私がひとりでやらなくてはならないこととなった。
しかも、ただ動かすだけではなく、動かす先には障害物もありこれらを乗り越えさせなくてはならないというおまけつき。
 
「なんだかんだと言って、自分がその気になればなんでもできるものだよ」
昨日の彼のことばが頭に響いてくる。
 
さぁ、どうする、どうやって運ぶ??
悲しいことに昨日の作業で筋肉痛や腰痛もちょっとでているぞ。
ともかく時間はある。
焦らずにじっくり考えよう。
 
そう自分に言い聞かせる。
 
丸太のどこが持ちやすいか、どこをどのようにして持ったら身体に負担がないか、実際にあちこちを持って試してみる。
運ぶ動線をイメージする。
そうこうしているうち、障害物のところは丸太をテコのようにして持ち上げてみてはどうか、など色々な考えが浮かんでくる。
 
自分の中でようやく運び方が決まり行動に移す。
ちょっとずつ動かす。
イメージと違ったらそこで考え直し、違う方法で動かす。
やがてこの試行錯誤ですら楽しくなってくる。
 
そうこうして、ようやく思い通りの場所へ丸太を移す。
まさか初めての作業で自分がここまでできると思ってもみなかった。
でもできた。
この達成感はもちろん言うまでもない。
 
彼の言ったことばが再びよみがえる。
まさにその通りだった。
 
何かに行き詰まる。
でもそれは行き詰まりではない。
実はそれはまだ道の途中だ。
そんなときはゆっくりと落ち着いてできることを考える。
そして自分のペースでやってみる。
やってみて、ちょっと違っていたら、またその場で考え直して違うやり方を試すだけ。
それで自分の思い描いた結果になったのなら、それが自分にとっての正解だ。
 
「トライ&エラー」ということばがある。
でも思い描いたところまでトライするなら、結果として「エラー」はというものはない。
エラーは道の途中で出くわしたちょっとした出来事にしか過ぎないのだ。
だから、思うことをどんどんやっていこう。
まさにトライ&トライだ。
 
彼のことばとこの体験は、試行錯誤を繰り返している私の心と体に見事にアンカリングしてくれた。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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