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物語に触れたとき、二つの視点が現れる――『トトロの都市伝説』を聞いてあなたは何を思いますか?

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記事:過客(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
『となりのトトロの都市伝説』というのをご存じだろうか。
 
となりのトトロといえば、小さな姉妹のサツキとメイが、森の奥に住む不思議な生き物・トトロと出会い、冒険を繰り広げるお話である。
単純明快で、しかしわくわくするような冒険を繰り広げるストーリーといい、耳に残る陽気なテーマソングといい、「この映画を見た子供が楽しめるように」という工夫が凝らされた映画だ。
 
そんな楽しいトトロだが、都市伝説という形でこんな噂が囁かれている。
あのお話は実は死後の世界の話で、トトロは死神なのだ。
作中、妹のメイは、沼に落ちたと勘違いされて騒動になる。しかし、これは本当は勘違いなんかではなく、実はメイは溺れて死んでしまっているのだ。サツキは死神であるトトロに連れられて、メイを探しに死の世界に足を踏み入れる。最後、二人は再開を果たして、入院している母親にこっそり会いに行く。その時の二人はまさに幽霊らしく、影が描かれていないのだ――。
 
『トトロの都市伝説』は噂話としては有名で、トトロを作った制作会社・スタジオジブリにも、「トトロは死神なの?」という質問が来るほどらしい。なお、プロデューサーである鈴木敏夫が、自身のブログでそのエピソードに触れ、都市伝説についてははっきりと否定している。
 
さて、この都市伝説を聞いてどのような感想を抱くだろうか。おそらく、大きく二つのタイプに分かれるだろう。
 
一つは「トトロはそんな話じゃないし、そんな意図で作られた映画な訳がない」と白けてしまうタイプ。
もう一つは「確かにそうとも読み取れる、これは面白い!」と興味を惹かれるタイプだ。あなたはどちらのタイプだろうか。
 
実はこの二タイプの違いが現れるということこそ、人は全く異なる二つの視点で、物語に触れているということを示している。
そう、人が物語に触れたときに、異なる二つの「視点」を持っているのだ。
そしてそれは「都市伝説否定派」、「都市伝説肯定派」という言葉で片づけられるほど、単純なものではない。
 
では一体その二つの視点とは何か?
異なる二つの視点、それは「読解」という視点、そして「解釈」という視点だ。
人は物語を「読解」するときと、「解釈」するときで、全く違う反応を示すのである。
 
まず、「読解」とは何か。
読解は物語を「読み解く」ことだ。
その物語の主人公が、なぜそんなことをしたのか? どうしてそんな気持ちになったのか? そしてその結末は主人公と読者に何をもたらすのか?
物語に触れて、小説なら文章から、アニメやドラマなら登場人物の表情や台詞、そして演出から、それらを正確に理解することが「読解」だ。
国語のテストがまさにこの「読解」に相当する。そして、テストにされるぐらいなので、読解には「正誤」が存在するというのが大きな特徴だ。
例えば、「走れメロス」で、なぜメロスは走ったのか? という問いに「実はメロスはセリヌンティウスに恋焦がれていて、彼に不可能を可能にする様を見せたかったから」なんて答えたら間違いなく不正解だ。そんなことどこにも書いてないし、根拠に乏しい。
 
一方で、「解釈」とは何か。
岩波国語辞典第八版によると、解釈とは「文章や物事の意味を、受け手の側から理解すること」とある。
この「受け手の側から理解する」ということが、解釈の大きな特徴だ。すなわち、受け手が思うように理解するために、解釈には「正誤」がないのである。
物語を「解釈」するとき、どのような想像も許される。
例えば先ほどの「走れメロス」。メロスがセリヌンティウスに恋をしていたと解釈したら、思いの他筋が通る部分が出てくる。メロスが身の潔白さを王に示すために、唐突に友人のセリヌンティウスを危機にさらしたのはなぜか? 最後に自身が裸であることを指摘されて、メロスが赤面したのはなぜか? 秘めた恋心があったのなら、その疑問の答えについては、想像が膨らみそうだ。
解釈は言うならば物語を消費することだ。物語を味わい、楽しみ、遊ぶ行為だ。突飛な解釈をしたってかまわない。なぜならそこに正誤は存在しないからだ。
 
まとめると、次のようになる。
人は物語と出会ったとき、「読解」と「解釈」、二つの視点どちらかで物語に触れている。
読解には国語のテストのように正解・不正解がある。
一方で、解釈とは物語を消費することで、理解の仕方には自由がある。
 
ここで、冒頭の『トトロの都市伝説』に話を戻そう。
 
トトロの都市伝説は、読解という視点から見ると「誤り」だ。
トトロはそんな恐ろしい物語ではないし、逆にそんな恐ろしい物語にするのであれば、しかるべき演出や伏線がはっきりと示されているはずである。
 
しかし、解釈は「自由」だ。明るいトトロの物語の端々に、死のイメージをあえて感じ取ることは解釈としては面白いだろう。そして、その解釈が予想だにしないもので、しかし思わず納得してしまうような説得力があったからこそ、『トトロの都市伝説』は有名な噂話として、語り継がれることとなったのである。
 
読解と解釈は、残念ながら共存はできない。正誤に重点を置く読解と、どのように受け取っても自由な解釈は、到底交わるはずもない。
しかし片方の視点だけしか持たないのでは、物語をまさに半分だけしか理解できないし、楽しむこともできないだろう。
片方だけの視点だけだと、読解タイプは解釈タイプを「間違っている」と攻撃し争いになったり、解釈タイプが好き勝手に想像し消費して、作り手の意図を損ねてしまうという悲劇も生まれる。
 
トトロの都市伝説を知った人は、二つのタイプに分かれる。
トトロはそんな話じゃないし、そんな意図で作られた映画な訳がない、と白けてしまった「読解タイプ」の人。
あなたは、都市伝説を共有して楽しんでいる人達に「そんな読み方は間違いで、作品への冒涜だ」と断罪するだろうか?
もしそうすれば、それは人の楽しみに水を差す行為になりうるだろう。
 
そして、都市伝説を知り、確かにそうとも読み取れる、これは面白い! と興味を惹かれた「解釈タイプ」の人。
あなたは、その都市伝説を、トトロが大好きな友人に、「トトロは大衆向けの娯楽映画と見せかけたホラー作品だ」と得意げに披露するだろうか?
きっと、何の映画を見たの? と真顔で返され、恥ずかしい思いをしてしまうだろう。
 
そう、読解と解釈という二つの視点があることを知らないまま、一つの作品について語り合うと、このような衝突や、すれ違いが起こってしまうことだってあるのである。
 
物語に触れる際には、この二つの視点があることをきちんと認識し、意識することが大切だ。
加えて、物語に触れて自分の中に巻き起こった思いが、読解と解釈、どちらの視点によるものかをはっきりと自覚することは重要である。
 
それは難しいことであるのには違いない。一つの視点だけで物語を捉える方が、圧倒的に楽だ。
しかし、そこを堪えて、もう一つの視点からも物語に触れるようにすれば、物語の楽しみ方はぐっと広がり、より作品を理解できるようになるだろう。
そして自分一人では考えつかなかった、他人の読解・解釈への理解も進み、物語の更なる面白さを見出すことができるはずだ。
 
 
 
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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