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夜のレーザー光線に取り憑かれて


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:しお(ライティング・ゼミ7月開講通信限定コース)
 
 
ビル群の夜景からレーザーのように伸びる、青白い光の筋を見つけたのは8月末のこと。
 
深夜までアルバイトをした帰り道、南の空を見上げて歩くのがここ数日の日課になった。一度見つけてしまったら最後、あれを目で追わずにはいられない。引っ越してきて4年以上経つのに、なんで今まで気がつかなかったんだろう。
 
あれの名前もわからないが、検索してみた。
「札幌 レーザー」シミ治療のページしか出てこない。
「札幌 レーザー 光」やっとそれらしいページを見つけた。テレビ塔のイルミネーションか。でもこれ一昨年のやつだけど……
 
ちょっとだけ食べたら余計お腹が空くのと同じで、中途半端に調べ出したら知りたい欲がムクムクとわきあがってきた。何をしてもふと、あの光が脳裏に浮かぶようになった。アレに取り憑かれてしまった。
もう、見に行くしかない。
 
9月19日21時過ぎ、ついに決行。入念な観察により、アレは21時以降にならないと見えないことがわかっていた。北区の中でも北寄りにあるこのアパートから、札幌駅やテレビ塔がある中心部を、ひとまず目指すことにする。
 
北海道大学のメインストリートを南下し、札幌駅方面へ向かう。大学内ではわりとはっきり見えていた光も、市街地に入って、一気に見えづらくなった。薄い青白い光より、近くのライトや信号の方が目に飛び込んでくる。それに、思っていたよりずっと、ビル街の空は狭かった。
 
再び光を確認できたのは、大通りを通過した頃だった。テレビ塔はやっぱり違ったし、この辺りの高層ビルやテレビ局に目星をつけていたのだけれど、光は依然として南に見えた。
 
少し東に軌道修正しながら南下していくと、人の群れに突入していた。すすきのの繁華街だ。さすが眠らない街。上を向いていたら客引きのお兄ちゃんにぶつかるし、ネオンがまぶしいし、かなりの悪条件だ。
それでも、ニッカウヰスキーと一番搾りの看板の向こうに一瞬見えた光を見逃さなかった。
 
足早に歩いていると、いつの間にかすすきのを抜けて、人のいない道に出てきてしまった。道沿いに見える中島公園は、夜は結構不気味だ。
気のせいか、光が弱くなったように感じる。でも、しばらく立ち止まって目を凝らすと、確かに南で揺れているように見えるのだ。おちょくられているみたいだ。
 
暗い道を進む心細さとともに、光に近付くのが怖いような気持ちに駆られた。
探偵ものやクイズには、正体が明かされない人物が出てくる。全身黒で描かれるコナンの犯人や、顔がハテナになった「謎の人物」みたいな描写が幼い頃からなぜか怖かったのだけれど、今、それと全く同じ感覚を味わっている。わからないものには恐怖を覚えるらしい。
 
中島公園の南端、幌平橋の駅に着く頃、光を見失った。見ながら歩いてきたはずなのに、どこで間違えたのだろうか。
時刻は23時45分。地下鉄で帰るなら、ここが潮時。ちょっと考えようと石段に腰を下ろす。いくら南の空を探しても、見つからない。さすがに疲れたし、なんだか気持ち悪い。もしかして、自分にしか見えていなかったんじゃ……
 
あれ。
ふと振り返ると、光はちゃんとあった。今度は北側だ。知らない間に通り過ぎていたのか。
引き返す気力は残っていなかった。タイムリミットだ。キツネにつままれたような釈然としない気持ちで、終電に乗る。約3時間かけて歩いた道のりは、地下鉄で12分だった。
 
9月25日21時過ぎ。リベンジを図る。雨が降っているが、視界には影響ない。今度は幌平橋まで地下鉄で行き、北に向かって歩くことにした。中島公園沿いの道路はもう歩いたので、公園の中を通ることにする。
 
おお、ここが豊平館か。白塗りの壁が浮かび上がって、なかなか幻想的だ。
「わっ」
見とれていると、突然、目の前に白い光が現れた。あいつがワープしてきたのか!?
…… なんだ、懐中電灯か。
窓の向こう、館の真っ暗な部屋の中で、警備員さんが見回りをしていたのだった。
 
さて、今回も、すすきのまで来てしまった。見覚えのある景色に嫌な予感を覚えながら、慎重に北上していく。
南5条のビルに差し掛かったとき、その屋上から真横に光が伸びているように見えた。この辺りのビルに光源があるのは間違いなさそうだ。しかし、肝心の根元が見えない。
 
路地を行ったり来たりしているうちに、突如、アレは正体を現した。
Nグランデと書かれた、何の変哲もないビルの屋上から、3本のレーザー光線が発せられていた。規則的に強くなったり弱くなったりしながら、ぐるぐると動いている。光の先を見ると、淡く広がっている。前回はきっと、動き回るこの先端部分を追いかけて見失ったのだろう。
思ったよりずっと細いレーザーで、自宅から見えていたとはにわかに信じがたい。しかし、目の前の光の動きも、青白い色も、まぎれもなく、追いかけていたアレと同じだ。
感激のあまり、傘を投げ出して、濡れるのもかまわずその光景をムービーにおさめる。ああ、報われた。アレの呪いが解けた。
 
好奇心からNグランデビルに入ってみて、またもや驚いた。このラーメン屋さん、このケーキ屋さん……ここ、来たことある。
謎の光は、私の知っている場所から発せられていた。本当に、なんで今まで気づかなかったのか。
満足感と、今回もやっぱり少しキツネにつままれたような気持ちに包まれながら、お土産のケーキをぶら下げて終電に揺られた。
 
そして、帰ってから、ネットに答えが載っていたという、さらなる衝撃に見舞われることとなる。
「Nグランデ」で検索すると、あの光についての記事が出てきた。9月14日付のものだ。Twitterでも話題になっていたようだ。今年の8月末から、ビアガーデンの宣伝のために点灯していたという。4年間気付かなかったも何も、今までそんな光はなかったのだ。
私があと数日遅く検索し直していたら、あるいは「サーチライト」という言葉を知っていたら、わざわざ歩かなくても正体がわかったのに。
 
でも、まあ、いいか。
地下鉄でしか行ったことのない場所を歩いたことで、思わぬ副産物を得たから。
 
光を追ううちに気づけばすすきのの人混みに紛れ、気付けば中島公園沿いの閑静な住宅街を歩いていた。明るさや人の多さ、空気感が変わるのを肌で感じた。地下鉄駅周辺の断片的な景色が、1つの街の、地続きの景色としてつながったのだ。
そして、細いレーザー3本で、知ってる場所が、あんなに謎めいて見える。
 
今まで赤と青しか見えていなかったのに、真ん中にあった覆いが取れて、赤紫から青紫へのグラデーションがあったことを知った。しかも、色がウネウネ動いて表情を変えている。そんな、ささやかだが不思議な発見だ。
 
約3週間を費やした、大学最後の夏休みの自由研究は、果てしなく無駄で、有意義だった。
今後サーチライトを見るたびに、私はこの3週間を思い出すだろう。今後新しい街でレーザー光線を見つけても、やっぱり見に行くだろう。あの青白い光の魔力は、恐ろしい。
ひょっとすると、これから一生、取り憑かれたままかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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