メディアグランプリ

小説の海で、リトリート


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記事:toko(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
ぐったりしてしまって、ベッドから起き上がれない。
やることが無くなると、気が緩むと、すぐに悪い想像が頭の中を占拠してしまう……。
 
嫌なこと・辛いことがあったとき、私はいつもこんな状態に陥ってしまう。
一人暮らしなので誰かに吐き出してしまうこともできず、なんとか一人で頭の中を切り替えたいと、じたばたあがくのだ。
 
そんな長く苦しい「あがきタイム」を人生で何度も経験してきた結果、最近になってひとつ良い方法を思いついた。
それは、本を読むことだ。
辛いことがあったとき、嫌な考えに頭を占拠されてしまったとき、私は本を開く。
 
どんな本でも良いわけではない。
人によって合う合わないがあるだろうが、私の場合は小説だと効果抜群だ。
小説では、ページを開き文章を追っていくと、どんどん物語が展開していく。文字が目から脳に到達すると、書かれた内容は私の持ちうる最大限のイメージ力で、頭の中で映像化される。登場人物が目にするもの、食べるもの、感じる空気、感情などを、自分の経験値が増えれば増えるほどよりリアルに想像できるようになる(もちろんテーマにもよるが)。
私の頭の中でどんどん三次元化されていくストーリーの続きが気になり、次々とページをめくり、没頭していくのだ。
そうしている間、私の悩みが介入できる隙間は無い。
私は安全で平和な、楽しい時間を過ごすことができる。
 
逆に、私は実用書との相性は悪いようだった。
これは弱っているときだけに限らず、元気なときもそうなのだが、自分に語り掛けられているような調子で書かれた文章は、一対一で滔々と解説されているような気持ちになり、逃げ場というか、余白を感じづらい。
小説がよその世界で起きていることであるのに対し、自己啓発は自分に対して書かれているように感じるため、どう受け止めてどう行動していくべきか、自分なりの答えを出さないといけないような、窮屈な気持ちになるのだ。
また、実用書で書かれているビジネスのコツや自己啓発といった内容は、脳内で映像化することもむずかしく、字面を何度もなぞらないと意味を飲み込めないことも多々ある。
テンポよく読めず、一対一の圧迫感を感じ、完読できずに挫折した本が何冊もある。
没頭できるほどの集中力が続かないのだった。
 
それではストーリー性に富んだドラマや映画でも良いかと問われると、そういうわけでもない。
そもそも読書は、能動的に情報を取りに行く活動だ。
テレビや動画であれば、自分のペースに関係なく勝手に次から次へと情報を流してくれる。受動的に情報を受け止める形だ。
そのため、面白くて集中して見ることもあれば、なんとなく目に画面は映っているものの、頭では他のことを考えていて内容に追いついていけないこともある。
読書にはそのような「流す」情報の受け取り方が無い。
必ず、自分で集中して字面を追い、書いてある文字を頭で理解する必要がある。
目もページをめくる手もかかりきりになるため、「ながら読み」になりづらい。
つまり隙がない集中となるため、自分の抱える悩みが介入するチャンスが無くなるのだ。
 
こうやって読書に没頭することで、傷ついた心を優しく癒すことができる。
単純に時間が経過して、出来事を受け止める余裕が生まれるというメリットもあるが、読書から自分の悩みを解決するためのヒントをもらうという場合も多い。
自分と全く同じケース、というものはもちろん存在しないが、失恋してしまったとき、仕事でミスしたとき、友人と喧嘩したとき、人と比べて辛くなってしまったとき……。小説の中では、登場人物がいつも何かそれぞれに抱える悩みと相対している。
本という、自分とは関係なく決してこちらを傷つけることのない世界の中で、彼らが悩み、格闘している様子から、読んでいるこちらまでもが勇気づけられ、ヒントをもらうこともできるのだ。
明確な答えが出るわけではないけれど、視野を少しだけ広げてくれる、自分が抱える問題へのヒントが得られる。そして少しずつ自分の現状にも、明るい気持ちで向き合えるようになっていく。
それが小説というリトリート。
 
嫌なこと・辛いことがあったとき。
きちんとその感情に向き合うことも必要だろうけど、なかなかすぐにできることではない。心が弱っているときは、一度自分をしっかりケアし、体制を整えてから起きた出来事やそれを受けて感じたことに向き合っても遅くはないはずだ。
自暴自棄になって暴飲暴食したり、買い物に行って散財するなど気分転換の方法は人それぞれだけれど、静かに一人で安全に気持ちを切り替える一つの方法として、読書もぜひ選択肢に持っておいてはいかがだろうか。
なんとなく手に取った一冊から、思いもよらないヒントを得られるかもしれない。
 
 
 
 
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2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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